「もはや戦後ではなく、戦前である」 ~憲法9条の会・関西「集団的自衛権と秘密保護法」高作正博氏 2013.12.7

記事公開日:2013.12.7取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

特集 秘密保護法|特集 憲法改正

 「安倍政権は、3年後の総選挙までに、集団的自衛権の解釈改憲まで終わらせておきたい、という腹づもりだろう」──。

 2013年12月7日、大阪府摂津市の摂津市立コミュニティプラザで、憲法9条の会・関西の講演会「集団的自衛権と秘密保護法」が行われた。講師の関西大学教授・高作正博氏が、集団的自衛権と秘密保護法の内容、数々の問題点などを解説し、「もはや戦後ではなく、戦前である、と考えるべきだ」と危機感を表明した。

 高作氏は「今後、市民運動の監視、思想の統制が進んでいくだろう」と警告し、「憲法を守っていく活動は、非常に難しくなる。だが、萎縮することは、政府の望み通り。明るく振るまうことが大切だ」とアドバイスした。

 冒頭、主催者代表で、大阪経済法科大学教授の澤野義一氏は、永世中立国のコスタリカやオーストリアの憲法を例に挙げ、「国連で認めている集団的自衛権の行使は、憲法違反。日本は、永世中立国の再確認が必要だ」と訴えた。

■全編動画
・1/3

・2/3

・3/3

平和国家から軍事国家に

 高作正博氏の講演に移り、安倍内閣の改憲への流れ、集団的自衛権の間違い、特定秘密保護法の問題点、私たちはどう行動していくべきか、などと講演の要旨を挙げて、各論に入った。

 まず、安倍政権が狙う改憲については、「96条改憲から解釈改憲の方向になって、断ち切れの感があるが、今は『下からの改憲』と呼び、法律で外堀を固めて、最後に改憲でまとめる、という考えだ」と述べた。

 さらに「その証左に、特定秘密保護法と、日本版NSC設置法の成立。防衛計画の大綱改定では、武器輸出三原則全廃の可能性がある。来年は、集団的自衛権の法的整合性の承認。そして、2014年末までに、日米防衛協力(ガイドライン)の改定と、着々と軍事国家へ突き進んでいる」と指摘した。

 「2番目は、個人より、経済優先の国家に変えつつあること」とし、生活保護費切り下げなど、憲法を変えないまま、人権をはぎ取りつつある現状を明らかにし、「思想良心、表現の自由、プライバシーなどの侵害も始まっている。特に、安倍政権は、教育改革を押し進めている。また、市民活動などへの公権力の監視もある。教育・思想統制が目的だ」と主張した。

戦争加害国になる。私たちは、それでもいいのか?

 高作氏は、個別的自衛権と集団的自衛権の違いを挙げ、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)と、内閣法制局長官に小松一郎氏を据えた人事の意味を探り、「来年になって、解釈改憲の閣議決定をするのではないか」と懸念した。

 「尖閣を守るために改憲は必要、という声も聞くが、改憲はいらない。個別的自衛権で対応できる。また、『国際法上、日本は集団的自衛権は持っているが、憲法上、行使できない』と言われるが、憲法は禁止しているゆえ、『権利は持っていない』のだ」と話す高作氏は、「それでも、集団的自衛権の推進派からは、『国防のためには必要だ。アメリカが最後の最後、守ってくれなかったら困るから』という意見も聞く」と述べた。

 続けて高作氏は、「集団的自衛権は、国際的な緊張感を高めるが、それでもいいのか。米軍に巻き込まれ、(日本が)加害国にもなる。私たちはそれでいいのか。今まで、ロシア、アメリカが、侵略の口実として、集団的自衛権を行使してきた現実を知っておくべきだ。しかし、安倍政権は、なんとかして、集団的自衛権を認めさせたいのだ」と語った。

人権は「公共の福祉」を振りかざせば侵害できる

 特定秘密保護法案に、話題は移った。高作氏は「個人の利益より、国家の利益を優先させた法案。自民党改憲草案で、主語を(国民から)国家に変えているのに似ている。人権を犯す場合、公共の福祉を振りかざせば、侵害できる。改憲案は、まさに公の秩序で、人権侵害を合法化する」と指摘した。

 高作氏は「特定秘密保護法の必要性を、森まさこ担当大臣にいくら訊いても、満足な答えが出ないまま、可決してしまった。なぜなら、現行の法律で対応できるから、(必要性を)説明できない」と述べ、強行採決に至った理由を、「アメリカから、日本の秘密保持の脆弱性を指摘されたからではないか」と推測した。

 さらに、「2007年、日米で締結されたGSOMIA(ジーソミア/軍事情報包括保護協定)では、法制化は言及されていなかった。しかし、今は、個人情報提出で民間企業も巻き込むので、法律にしようとしたのではないか。この法律の内容は、ジーソミアで謳っていたことと一致する」と補足した。

逮捕する裁量を、捜査機関に与えてしまった

 そして、秘密取り扱いの範囲について、「特定範囲が広すぎる懸念がある」と指摘した。「何に触れてはいけないのか、まったくわからず、秘密が拡張していく」。また、特定秘密の適正性、チェック機関の有無、裁判での問題点などを、西山事件(沖縄返還密約スクープ)を例に挙げて解説した。

 最後に、「秘密保護法が施行されても、逮捕者が続出することはない。ただ、いつ、どこで、特定秘密に触るかが、まったくわからないことが、一番怖い。つまり、逮捕する裁量を、捜査機関に与えてしまったことが、最大の問題だ。市民生活が不安定になってしまう」と警鐘を鳴らした。

萎縮することは、政府の望み通り

 高作氏は「もはや、戦後ではなく、戦前である」と看破し、今後、日本が参戦する事態をシミュレーションした。そして、「市民運動の監視、思想の統制が進んでいくだろう」と警告し、「憲法を守っていく活動は、非常に難しくなる。逮捕されるかも、と萎縮することは、政府の望み通り。重要なのは、萎縮せず、暗くならないこと。明るく振る舞う運動が、これからは大切だ」と締めくくった。

 質疑応答では、外国への情報提出の可能性や、安倍首相と祖父・岸信介氏との性格や思想的共通点などについて語った。また、「3年後の総選挙までに、集団的自衛権の解釈改憲までは終わらせておきたい、という腹づもりだろう。おそらく、日中間で、尖閣を舞台にした軍事紛糾を起こし、米国を引き込むところまでは予想できる」と話した。

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です