ウクライナのタチアナ女史が語る 「低線量汚染地域・健康被害の真実」 2013.11.20

記事公開日:2013.11.20取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・山之内/奥松)

 「3人の娘のうち、あとになって生まれた子ほど、放射能によると思われる健康障害が強く現れた」──。

 2013年11月20日、福島県郡山市の福島県教組郡山支部会館で、講演会「日本の放射能被害を防ごう タチアナ・アンドロシェンコ女史が語る『低線量汚染地域・健康被害の真実』誰も知らない27年後のチェルノブイリ」が行われた。空間線量の低い地域でも多くの住民に健康被害があることが報告される一方、食品に留意することで、健康状態が改善された事例も示された。

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ウクライナ調査での注目事実。低線量地域でも健康障害

 タチアナ・アンドロシェンコ氏の講演に先立ち、食品と暮らしの安全基金代表の小若順一氏が、同団体が2012年よりウクライナでおこなってきた空間線量調査と健康調査について説明した。

 小若氏の説明によると、2012年に調査したウクライナのピシャニツァ村学校とモジャリ村学校地域の空間線量は、0.09マイクロシーベルト/時と、0.12マイクロシーベルト/時であり、タチアナ氏が住むコヴァリン村の空間線量は、0.03〜0.10マイクロシーベルト/時であった。

 この地域の学校の1学年の子どもたちに、小若氏が健康についての聞き取り調査を2012年9月におこなった結果では、ピシャニツァ村の45人中、足の痛い子が62%、頭が痛い子は47%、のどが痛い子は36%、痛みがない子が36%であった。モジャリ村学校の32人では、足が痛い子が72%、頭痛が81%、のどの痛みが59%、痛みなしが16%だった。

 小若氏は「成長痛は、この年代で最大15%なので、62%の足の痛みは完全に異常」と語る。また、調査地域内で、もっとも低い空間線量だった、非汚染地域のノヴィ・マルチノヴィチ村で、15歳〜17歳の子と父母らの計25人に健康状態を聞いたところ、足の痛い者は少なかったが、頭痛や鼻血のでる子と親が多数おり、問題のない者はひとりもいない結果になったという。

一日に食べる食物が1.1ベクレル平均の場所でも、健康被害

 調査地域で、どんな食品を食べているかの調査によると、モジャリ村学校地域では、ベリー類とキノコさえ食べなければ、2から5ベクレル/キログラム(以下Bq/Kg)の食事が一般的だった。コヴァリン村では、大学が、キノコと川魚以外の品目37品目を検査したところ、検出限界を1.8か1.7Bq/Kgにしても、放射能は検出されなかった。「しかし、このように汚染の低い食品を摂っているコヴァリン村でも、健康障害が起こっていた」と小若氏は指摘した。

 非汚染地域のノヴィ・マルチノヴィチで、子どもが1日に食べる食事を調査した結果、放射性物質は平均1.1Bq/Kgだった。小若氏は「1.1Bq/Kgの食事でも健康被害が出ており、日本政府の基準は100Bq/Kgなので、それで健康が守れるわけがない」とし、「少なくとも、危険性が証明された食品はやめるというのが、これからの最低限の基準でなければならない」と主張した。

 さらに、小若氏は、放射能による土壌汚染の調査図を示し、ウクライナでは、土壌汚染が非常に低い地域でも健康被害が出ている、という現状を示した。

 一方、日本とウクライナを比較して、小若氏は次のように説明した。1. 原発の爆発の規模がちがうので、日本ではストロンチウムの地上汚染が少ない。2. 日本は世界最大の科学肥料の投入国であり、土中にカリウムとカルシウムが多いので、セシウムとストロンチウムを植物が吸い込むリスクは少ない。3. 食料自給率が低い日本では、海外の食品を食べることが多いので、食品の放射能汚染による健康被害が出にくい状況もある。

 その後、小若氏は、食品と暮らしの安全基金が、ウクライナの調査地域でおこなっている、放射能の少ない食事にするプロジェクトについて説明。それによって、健康状態が改善されたという結果を報告した。

汚染の低い食品に切り替えることが重要

 続くタチアナ氏の講演では、放射能汚染の危険が高い食品を避け、安全な食品を摂ることによって、健康障害が改善される例が多数報告された。

 タチアナ氏は、チェルノブイリ原発事故後の7年間、原発から32キロの場所に住み続け、1992年になってから、汚染の少ないコヴァリン村に移住した。被災者や、今なお汚染された地域に住む人たちの救援団体を立ち上げ、小若氏のプロジェクトに協力するコーディネーターでもある。

 タチアナ氏は「小若氏の基金のおこなった、15の家族と2つの学校の調査の成果が、日本でも有効に活用されることを願っている」と述べ、その具体的な結果を報告した。

 また、タチアナ氏の住むコヴァリン村の10家族について、「移住することなく、強い汚染の心配される肉などを、別地域の低汚染のものに切り替えた。汚染の少ない食品を摂るという対策によって、健康を回復した」と事例を紹介した。

 タチアナ氏の家族の場合、3人の娘のうち、後になって生まれた子ほど、放射能によると思われる健康障害が強く現れ、1998年に出生した末娘は先天性の乱視、両足の長さが不揃いなことによる障害、鼻血などがあったという。

 「だが、食べ物に気をつけるプロジェクトに参加した3ヵ月間は、鼻血は現れていない」と語り、「そのほかの家庭でも、同プロジェクトに参加することにより、子どもたちの健康や学業面における回復が見られた」と報告した。

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