広河隆一氏「何より、子どもたちに親身になること」 ~エレーナ・トルスタヤ准教授講演会「福島の子どもの心のケア」 2013.8.20

記事公開日:2013.8.20取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 「子どもたちにとって、恐怖心も発病のトリガーになる。家庭や社会から、ストレスの軽減を」。エレーナ・トルスタヤ准教授は、子どもの心のケアの重要性を訴えた──。

 2013年8月20日(火)19時より、東京都文京区にある文京シビックセンターで「エレーナ・トルスタヤ准教授講演会『福島の子どもの心のケア』」が開催された。月刊誌『DAYS JAPAN』の招へいにより、チェルノブイリ原発事故後、子どもたちの精神的ケアにあたった心理学の専門家、エレーナ・トルスタヤ氏(国際サハロフ環境大学准教授)が来日。チェルノブイリの子どもたちを診てきた経験を踏まえて、福島の子どもたちへの対応について講演した。

■ハイライト

 冒頭、『DAYS JAPAN』編集長で、被災地の子どものための保養施設「沖縄・球美の里」の理事長を務める、写真家の広河隆一氏が挨拶をした。「最近、被災した子どもの精神的なケアが問題になっている。福島から避難した子どもたち、留まっている子どもたち、国や県がアピールした安全宣言に基づいて(放射能汚染を)気にしない親、心配しながらも言い出せない親などがおり、深い溝ができている」と、福島でコミュニティが分断されている実態を語った。

 次にトルスタヤ氏が登壇し、講演が始まった。「チェルノブイリ原発事故で、ベラルーシの国土の23%が、370億ベクレル/キロ平方メートルのセシウム汚染を被った。事故以前のベラルーシの人口は220万人、子どもは55万人いた」と前置きし、「原発の半径30キロメートル以内で、1万3000人が被曝。汚染地域に住む半数以上の住民は、被曝の恐怖心でストレスが高まり、家族全員の健康に悪影響を及ぼした。また、放射能を無視するような、反動的な行動に出る子どもたちも見受けられた」と報告した。

 その上で、トルスタヤ氏は「両親の過度な恐怖心や心配は、子どもにも影響し、コミュニケーション能力の欠如、自信喪失、社会からの疎外感などの強いストレスを感じさせ、健康被害を発生させる。精神障害の予兆としては、情緒不安定、神経過敏、すすり泣き、過度な興奮、不眠、暗闇への恐怖、ツメ噛み、夜尿症、チックなどが表れる」と述べた。

 さらに、「放射能は、子どもの身体に薬物のように作用し、異常興奮、情緒不安定、疲れやすくなり、結果的に学力低下、行動障害、神経異常を引き起こす。そして、社会順応性の欠如、不眠、情緒不安定、人生への絶望感、活力低下、感情の欠如に陥いる。また、衝動的、活動的、逸脱した行動、虐待、暴力的な所見が見られ、ADHD的症状(注意欠陥・多動性障害)を起こすので、多面的な診療が必要だ」と障害例を説明した。

 トルスタヤ氏は、原発事故が起きた1986年生まれの少女の例を紹介した。「彼女は放射能汚染のない地方で育ったが、1995年、甲状腺がんを発症、手術した。1998年~2001年の調査では、無力症、うつ、対人障害などのストレス症状が見られ、自信喪失、妹への嫉妬などが、それらの誘因と考えられた。その妹は、定期的に保養所でリハビリをしていて、大きな精神的障害は見られなかった」。

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