2013/09/26 【大阪】孫崎享氏講演 東アジア青年交流プロジェクト 日中交流ステップアップ講座 第2回 領土問題 <境界>を考える(尖閣諸島を事例に)

記事公開日:2013.9.26
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 元外交官で評論家の孫崎享氏は、尖閣諸島の領土問題に関して「棚上げを言えば、国賊扱いされる。言論の自由がなくなりつつある」と述べて、日本社会に広がる空気を危惧した。さらに、「マスコミは権力の一部。妄信を止めて、自分で情報を得て考え、発信していかなればならない」と警鐘を鳴らした。

 2013年9月26日、大阪市中央区のエル・おおさかで、孫崎享氏を講師に迎え、東アジア青年交流プロジェクトの「日中交流ステップアップ講座 第2回 領土問題 <境界>を考える(尖閣諸島を事例に)」が行われた。孫崎氏は「なぜ、日中間の経済発展を捨ててまで、尖閣諸島のような小さな島を取ろうとするのか」と、日中外交の本質に迫った。

■主催 東アジア青年交流プロジェクト

◆おかしいことを、おかしいと言えなくなった日本

 孫崎氏は「今、とても怖い時代になってきた。おかしいことを、おかしいと自由に発言できない状態になりはじめている」と切り出した。宮崎駿氏が引退会見で、「世界がギシギシと音を立てて変化している時に、ファンタジーを作り続けるのは無理がある」と語ったこと。柏崎刈羽原発の地元である新潟県の泉田裕彦知事が、「自分は絶対に自殺はしない」と圧力の存在を感じさせる発言をしたこと。松江市の『はだしのゲン』の閉架問題は在特会の恐喝が発端だったこと。これらを実例として挙げた孫崎氏は、「まるで、1930年代のようだ」と、日本社会を憂慮した。

 さらに、「自分も、TPP批判をテレビで発言したら、参議院の総務委員会でNHKの予算審議があった時、ある議員がNHK会長に『孫崎を使うな』と迫った。国会の委員会で、公共放送への特定個人の出演について云々するのは極めて異常。しかし、どの政党の議員からも『それはおかしい』という声は上がらなかった。先日、安倍首相が『福島第一原発事故の海洋汚染はコントロールされている』と嘘を言っても、誰も非難しない」と指摘した。

◆中国を過小評価している日本

 尖閣問題について、孫崎氏は「棚上げにすれば、それで済む。しかし、国会議員は批判を恐れて、誰もそう言えない」と話して、「中国は米国を、大国として追い抜くか」というアメリカの世論調査を提示した。「英仏独などでは7割以上の人が『追い越す』とし、アメリカ国民は『半々』なのだが、日本は6割の人が『中国はアメリカを追い越せない』という結果だった。日本人は、客観的な情報で判断していない」とし、中国に対する欧米と日本の評価の違いを、次のように分析した。

 「日本は、いつまでも古いデータで判断している。『中国はたいしたことがない』という先入観を持ち、尖閣問題でも『日本は中国を軍事的に倒せるし、アメリカも守ってくれる』と信じている。しかし、軍事衝突になったら、日本は徹底的にやられる。このままでいけば、その日も遠くない」。

◆領土問題の一番大切なことは対立しないこと

 孫崎氏は、栗山尚一元外務事務次官が著した『アジア時報』の論文を紹介し、「1978年、園田直外務大臣と鄧小平副首相の会談で、尖閣諸島の棚上げ合意があった。日本はこの事実を隠し、中国は公表している。日本ほど平然と嘘をつく国はない」と指摘した。

 続いて、オリバー・ラムズボサムの著作『現代世界の紛争解決学』のゼロサムゲームの外交理論をについて語り、「相手への関心と、自分への関心が合意したところが、理想的な解決になる。たとえば、鳩山由紀夫元首相は『中国が領土権があると主張している根拠は、彼らなりにある。それを踏まえて紛争をしないようにすべきだ』と言った。しかし、国賊にされた」と解説した。

◆外交と政策に求められる柔軟性

 孫崎氏は「安倍首相は、物事の一面しか見ていない。外交にはいろいろな面があり、その頂点に政策がある。敗戦時、日本はポツダム宣言やカイロ宣言を遵守した。平和だったら、それらを受諾するわけはないが、その時は、戦争を止めることが最重要課題だったからだ」と歴史を遡り、外交と政策の関係を説いた。

 そして、「領土問題の視点は、唯一ではない。外交や国策の中で、どう位置づけるのか、時代と場合によって変わってくるものだ。尖閣問題も同様で、なぜ、日中間の経済発展を捨ててまで、小さな島を取ろうとするのか」と疑問を呈した。

 最後に、孫崎氏は文藝春秋の記事を取り上げて、「米国は、日本に『尖閣問題で何も遠慮することはない。アメリカからF35やイージス艦を買え』と言っている。目的は明確だ」とした。さらに、元東京都知事の石原慎太郎氏が「東京都が尖閣諸島を買う」と講演したアメリカのヘリテージ財団が、昨年11月に発表したレポートに言及。「レポートは安倍首相の誕生を予測しており、『日本の防衛費を増大させる。集団的自衛権を認めさせる。普天間基地の移設を進める』などの提言が書いてある。今、安倍首相がしていることだ」と指摘。「尖閣問題があることで、これらが進めやすくなっている。逆に言えば、これをやりたい人たちが、尖閣問題に手をつけたのだ」と断じた。

◆自分で考え、マスコミ妄信は止めるべき

 質疑応答に移り、「実際に、日本と中国は戦争ができるのか」との質問が出た。孫崎氏は仮説として、「最初、日本は尖閣に10名ほど公務員を置く。対抗して中国は20名を派遣。すると、両者に小競り合いが生じ、どんどんエスカレートする。そうなれば止まらない」と語り、「石原前知事は『中国は何もできない』などと言うが、中国脅威論を言う人が、一番、中国認識が甘い」と批判した。

 参加者からの「尖閣棚上げを書いた栗山論文を、もっとマスコミが取り上げるべきだ」との発言には、「今や大手マスコミに、正しいことを追求する姿勢はない。彼らは権力の一部だ」と応じた。続けて、最近のシリア問題に触れ、「アメリカはシリアと戦争をしたかったが、米国民の7割が反対して止めた。なぜ、止められたか。米国民はマスコミ妄信を止めたからだ。80年代は50%以上が新聞などを信じていたが、現在、23%しか大手マスコミを信用していない。これからは、自分たちで独自に情報を見つけ、拡散していかなくてはならない」と述べた。

 中国の軍事力の強化について尋ねられると、孫崎氏は「アメリカ国防省の中国分析を見ればよい。そこには『中国は戦略として平和を求め続ける。自国民の平定のために、中国はいたずらな冒険主義はとらない』とある」と答えた。その上で、「中国の軍事力が増すなら、なおさら、近隣諸国は外交的に対応しなくてはならない。かつて日本は、外国から平和国家だと思われていた。アメリカに追随するだけの国になっていいのか」と締めくくった。【IWJテキストスタッフ・関根/奥松】 

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コメント “2013/09/26 【大阪】孫崎享氏講演 東アジア青年交流プロジェクト 日中交流ステップアップ講座 第2回 領土問題 <境界>を考える(尖閣諸島を事例に)

  1. 売国奴と孫崎さんを呼ぶ人たちはおかしいことを、おかしいと言っているだけだぞ
    むしろ孫崎さんのほうがおかしいことを、おかしいと言うなと言っているに過ぎない

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