青森県にある東北電力東通原子力発電所の敷地内破砕帯にかかわる現地調査が9月3日、4日の2日間にわたって行われ、原子力規制委員会の島崎邦彦委員をはじめとする有識者らが、今年の春以降新しく掘削されたトレンチやボーリングコアなどを確認した。
今回、調査に参加した有識者は以下の5名。東通原発の現地調査は、昨年12月以来2度目となる。
■第1回目の現地調査のようす
(動画編集:IWJ・原佑介、記事:IWJ・大西雅明)
青森県にある東北電力東通原子力発電所の敷地内破砕帯にかかわる現地調査が9月3日、4日の2日間にわたって行われ、原子力規制委員会の島崎邦彦委員をはじめとする有識者らが、今年の春以降新しく掘削されたトレンチやボーリングコアなどを確認した。
今回、調査に参加した有識者は以下の5名。東通原発の現地調査は、昨年12月以来2度目となる。
■第1回目の現地調査のようす
■ハイライト
調査の初日、2日目ともに記者団のぶら下がりに応じた島崎委員は「特にこれまでの評価と大きく変わるところは今のところない」、「基本線は変わらない」などと述べ、敷地内にはしる破砕帯を活断層とする規制委のこれまでの評価は変わらないとする認識を示した。
有識者会合では、昨年12月に行われた第1回目の現地調査を踏まえて、東通原発の敷地内をはしる「F-3」「F-9」と呼ばれる破砕帯について、「耐震設計上考慮すべき活断層である」とした評価書を今年の2月に発表し、5月に行われた会合でもその評価書案の内容を踏襲している。
一方、東北電力は、有識者が指摘する破砕帯は活断層ではないと主張しており、今年12月まで追加調査を行っている。また、島崎委員は4日、「できれば、もう一段違う所で見たい」と述べ、さらなる現地調査を行う意向を示しており、活断層かどうかの最終的な結論が出るのは、早くても年明けとみられる。
ここからは、現地調査が行われたトレンチの状況と、現時点での東北電力の見解を紹介する。
今回、有識者らが確認したのは、5つのトレンチ内部と断層のボーリングコア。初日の調査で、5つのトレンチ内の断層すべてを確認し、さらに2日目にも、5カ所のうち4カ所に再び入り、入念な現地調査を行った。
今回、調査が行われたトレンチはそれぞれ、Tr-30、Tr-31、Tr-2k’、Tr20′-4、Tr-28と呼ばれるもの。確認内容としては大きく2つに分けられ、ひとつめは「変動地形と断層との関連性の確認」、ふたつめは「水平掘削面調査の状況確認」だ。
※変動地形について
通常は、山側から海側へ向かって地形の傾斜は下がっていくが、東通原発周辺の敷地では、反対に海側へ向かって傾斜が上がっている箇所が見られる。本記事内では、そうした地形を変動地形と呼ぶ。第1回目の現地調査以降、原発敷地内の数カ所について、有識者から変動地形と断層との連動性を指摘され、今回新たなトレンチを掘り、現地調査を行う運びとなった。
初日の最初に確認したのが、Tr-30のトレンチ。このトレンチは、敷地の南西面で変動地形が指摘され、その地形と断層との関連性を確認するために新たに掘られたもの。現段階で、東北電力は、「地形に対応した断層は認められないことを確認した」としている。
次に、調査団はTr-31のトレンチを確認。ここでは、F-9断層を確認することができ、有識者からは、変動地形とF-9断層との関連性が指摘されていた。トレンチ掘削後、東北電力は、「F-9断層は変動地形形成に関連するような変位を被覆層に与えていない」ことを確認し、また「地形の高まりに対応して、岩盤劣化部が存在し、変状が認められる」としている。
※ここで言う『変状』とは、第4紀(258万8000年前~現在)にできた地層や岩体が劣化し、それが水などを含むことによって、体積が膨張した状態のことを指す。
続いて、調査団が向かったのは、Tr-2k’と呼ばれるトレンチ。これは、今回新たに掘削したものではなく、平成22年度に掘ったもの。Tr-31と比較するために今回、現地調査が行われた。ここでも、F-9断層をはっきりと確認することができるが、東北電力は、「F-9断層付近には変動地形も変状も見られない」としている。
4番目に確認したのは、Tr-20′-4というトレンチ。ここでも、変動地形と断層、変状との関連性を有識者から指摘された。現時点で、東北電力は、「地上表面にはかなりの盛土がしてあり、ローム層では自然な勾配が確認できること、また岩盤劣化部が地形の高まりと対応していること、さらに変動地形に対応する断層が見られないこと」などを確認したとしている。
初日の最後に現地確認が行われたのが、Tr-28と呼ばれるトレンチ。ここでは、水平方向に掘削面を形成しながら調査が行われている。
このトレンチは、もともと昨年12月に行われた第1回目の調査のとき、F-3断層を確認する目的で掘られたもの。しかし、現地調査の際に、佐藤比呂志教授からF-3断層が縦ずれではなく横ずれを起こした可能性を指摘され、その確認のために、新たに「水平掘削面調査」が行われることになった。
水平掘削面調査とは、垂直方向の断層を確認するのではなく、水平方向に広く浅く掘削を繰り返しながら、その都度、地表の掘削面をスケッチし記録していく調査のこと。作業の進捗は天候に大きく左右され、またTr-28では、1回の掘削深さが30センチ間隔と短いため、大きく7段階に分けられる掘削工程のうち、まだ3段階しか完了していない。現時点で、東北電力は、「横ずれを示唆する明確な構造は認められていない」としている。
初日、2日目ともに、東北電力は記者会見を開き、活断層を否定するコメントを発表した。
コメントの中で、東北電力は、「これまでの当社の追加地質調査では、変動地形指摘箇所におけるトレンチ調査においては、断層との関連は認められておらず、水平掘削面調査やボーリング調査においても活動性を示すようなデータは確認されておりません」と主張している。対する調査団が、今回の調査を踏まえてどのような結論を出すのかが注目される。