「歴史は文明の糸のようなもの」 オリバー・ストーン監督とピーター・カズニック教授が日本人に伝えたかった本当のこと ~岩上安身による乗松聡子氏インタビュー 2013.8.19

記事公開日:2013.8.19取材地: テキスト動画独自
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(IWJテキストスタッフ・山之内/奥松)

特集 戦争の代償と歴史認識

※全文文字起こしを掲載しました(2013年9月26日)

 共著『The Untold History of the United States』(邦題:オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史:早川書房刊)で、搾取と抑圧を繰り返す「現代の帝国」としてのアメリカを描いて話題を呼んだ、オリバー・ストーン監督とピーター・カズニック教授。2人は、8月5日から15日の日程で来日し、被爆地の広島と長崎のほか、東京、さらには沖縄の在日米軍基地などを訪問した。

 今回、2人の来日をコーディネートして通訳も務めたのが、カナダのバンクーバーで活動する平和団体「ピース・フィロソフィー・センター」代表の乗松聡子氏である。2013年8月19日(月)、岩上安身のインタビューに応じた乗松氏は、日本滞在中のストーン監督とカズニック教授の様子を詳細に紹介。2人が各所で語ったという「歴史は文明の糸のようなものだ」という言葉を示し、「オリバーとピーターは、『歴史から教訓を得ない者は、愚かな戦争を繰り返してしまう』ということを、日本人に伝えたかったのだと思う」と語った。

■イントロ

 アメリカ現代史が専門のカズニック教授は、1995年、ワシントンのスミソニアン博物館で、広島に原爆投下をした爆撃機「エノラ・ゲイ」展示の際、予定されていた原爆の人的被害の展示が中止されたことから、自分の所属するアメリカン大学で、その被害展示を実現させた。それ以来、毎年8月に米国人学生たちを連れて、広島と長崎を訪問。乗松氏は、2006年から、この来日プログラムに、通訳、コーディネーター、講師として関わっている。

 ストーン監督は、カズニック教授の講座にゲストに招かれた時、ルーズベルト政権時の副大統領で、平和主義を貫いたヘンリー・ウォレスに興味を持ち、ウォレスのドキュメンタリー番組を企画。脚本をカズニック教授が担当し、アメリカ現代史の20エピソードからなるドキュメンタリー番組を制作した。その後、2人は同テーマを共著の書籍として出版した。乗松氏は「本の原題に、The Untold Historyとあるように、2人が目指しているのは、隠されてきた歴史の真実を探す、ということだ」と述べた.

 岩上が「日本での2人の記者会見をいろいろ見たが、2人の意見と日本側の対応が、すれ違う時があった」と話すと、乗松氏は「今回、オリバーの知名度でマスコミに注目された。歓迎はありがたい一方で、アメリカの有名な監督が広島・長崎に来てくれた、と属国的に喜ぶような印象も受けた。『憲法9条をどうしたらいいか』と尋ねられたオリバーが、『自分の国のことは、自分たちで考えてほしい』と返答したこともある」と話した。

 乗松氏によれば、ストーン監督は、日本に原爆が投下されるに至った歴史的背景に関心を持っており、アジア各地への日本の侵略の歴史を説明するビデオを熱心に観ていたという。長崎の平和公園では、強制連行された朝鮮人、中国人被害者の碑を長い時間をかけて見学。「日本人は、どうしてこんなに残虐になれたのか」と漏らしたという。

 「私はオリバーに、『日本の軍隊は、自軍の兵士を虐待的に扱う性質を持っており、それが侵略先での略奪や大虐殺、捕虜や慰安婦への虐待を生んだ』と説明した」。そう乗松氏が話すと、岩上も同意し、「兵士自身の命を軽視する軍隊が、他国民の人権に配慮するわけがない、ということ。しかし、そのような視点が、今の日本では失われている」と言葉を継いだ。

 ストーン監督とカズニック教授の様子について、乗松氏は「長崎で、岡まさはる記念長崎平和資料館を見学。ここは、日本の加害の歴史を展示しており、彼らは強い印象を受けたようだ。その後、ことあるごとに、この資料館の話をしていた」と語った。

 さらに、「広島、長崎、東京で、何人もの被爆者の方々に面会し、被爆時の様子を詳細に尋ねていた。沖縄では、名護市長の稲嶺進氏に共感したようで、『彼はファイターだ。来年の市長選でも勝ってほしい」とオリバーは話していた。また、オリバーたちが評価している鳩山由紀夫氏との会見では、鳩山氏が説明する日本の官僚制度に興味を持ち、『官僚とは、どういう生き物か』と質問していた」と振り返った。

 乗松氏は、鳩山政権へのバッシングを海外で見ていた立場から、「鳩山氏をルーピーと書いたのは、ワシントン・ポスト紙のコラムひとつだけ。それを日本のマスコミは、アメリカ全体の意見のように膨らませて報じた。実際、オバマ大統領が鳩山氏を嫌った証拠はない」と話し、「逆に、安倍首相については、米議会調査局が『アメリカの国益に反する要注意人物』と警告を発している。そのため、安倍首相が渡米した際には異例の冷遇をされたが、日本のメディアは歓迎されたかのように伝えた。とても対照的だ」と指摘した。

 その上で、「今回の来日で、2人が伝えたかったことは、大手メディアでは、ほとんどカットされた」と明かした。カズニック教授の「日本が集団的自衛権を行使することになると、アメリカの戦争に引きずられて、日本の若者たちが戦場からボディバッグ(遺体袋)に入って帰ってくる」という発言も、大手メディアはどこも伝えなかったという。

 乗松氏はストーン監督が語った、「歴史は文明の糸であり、歴史から学ばない人間は、愚かな戦争、差別、偏見を繰り返す」という言葉を紹介。「今、日本に欠けていて、オリバーとピーターが一番伝えたかったのは、このことではないか」とし、次のように述べた。「日本にも、語られなかった歴史がある。語られなかった日本史を、日本人がしっかりまとめなければいけない」。

 ストーン監督とカズニック教授を、広島、長崎、福島、沖縄に案内したことについて、乗松氏は「広島、長崎という過去と、福島の今をつなげて考えてほしかった。そして、沖縄に基地を押しつけながら、日本は平和国家だとする欺瞞を、2人に見せたいと思った」と語った。最後に、「本当に平和国家、核廃絶を求めるなら、米国の核の傘から脱して、これ以上、沖縄を犠牲にしないことが必要だ。日米の軍事同盟を、抜本的に見直すべきではないか」と見解を述べた。

―― 以下、全文文字起こし ――

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「「歴史は文明の糸のようなもの」 オリバー・ストーン監督とピーター・カズニック教授が日本人に伝えたかった本当のこと ~岩上安身による乗松聡子氏インタビュー」への1件のフィードバック

  1. 今関 和子 より:

    日本の現状(右傾化、、米国追従、原発大国化、「国民総白痴化」・・・)は乗松聡子氏の言っておられる「歴史は文明の糸のようなもの」ということに日本人が気づこうとしないことから生じた当然の結果ではないでしょうか。
    8月14日ここHamburgのインドネシア領事館で、「インドネシア独立記念日」が例年通り祝われました。350年間殖民地にされていたオランダからの独立ではなく、3年半占領されていた日本からの独立を祝う日なのだそうです。「roomusha」を日本兵が鞭で脅しながら酷使していたこと。強制連行されて帰らぬ人となった「roomusha」もいたこと。集められた女性達が強制連行され、閉じ込められ、強姦されていたこと・・・こういう歴史をインドネシアでは「平和のための教育」として学校で学んでいるそうです。
    著名な韓国人が米国記者に「どうして韓国人は今も日本を許そうとしないのか。」と聞かれて「許してくれと頼まれていないからだ。」と答えたという話もあります。ドイツとの違いをオリバー・ストーン氏も指摘していました。
    「『戦争責任を考えること』がどうしてドイツ人にできて日本人にはできないのか。」 を自分なりに整理してみました。
    1) 戦争を加害者でなく被害者として終えていること(原爆投下、都市空爆・・・)
    2)国の元首である天皇が戦犯不起訴となり、全く責任をとっていないこと
    3)岸信介はじめ戦争犯罪人が戦犯不起訴となったと
    4)それらの政治家(自民党)が復帰して戦後の日本を牛耳ってきたこと
    5)勝戦国アメリカ(CIA)と自民党の利害が一致していたこと
    6)メディア、教育の分野でできる限り戦争犯罪について知らせない方針をとったこと
    7)いやなことには目をつぶりたいという心理があること

    自国の歴史に正面から向かい合う覚悟を決めない限り、「文明の糸」は紡げないのではないでしょうか。

    参考:
    1) DVD: Horror in the East: Japan and the Atrocities of World War II (2000) ( BBC documentary filmhttp://en.wikipedia.org/wiki/Horror_in_the_East)
    2)「昭和天皇・マッカーサー会見」豊下楢彦著 岩波現代文庫

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