「1943年5月の段階で、原爆は白人国家のドイツではなく、日本に投下すると決まっていた」 ~オリバー・ストーン監督、ピーター・カズニック教授記者会見 2013.8.9

記事公開日:2013.8.9取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 「もはや核兵器は、軍事的な切り札ではない。タカ派のキッシンジャーやシュルツといった元国務長官たちですら『減らそう』と言うくらいだ。アメリカの目的は、陸海空、サイバー、宇宙空間での覇権なのだ」と、ピーター・カズニック教授は話した──。

 2013年8月9日(金)18時30分より、長崎県長崎市の出島交流会館にて、映画監督のオリバー・ストーン氏とアメリカン大学歴史学教授のピーター・カズニック氏の記者会見が行なわれた。昨年、発表されたドキュメンタリー映像10部作と書籍『The Untold History of the United States(邦題:オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史)』の共著者である両氏が、広島と長崎を訪れた印象や、核兵器、戦後のアメリカと日本の同盟関係などについて、質問に答えた。

■ハイライト

  • 日時 2013年8月9日(金)18:30~
  • 場所 出島交流会館(長崎県長崎市)

 はじめに、「日曜に来日し、とても忙しいスケジュールをこなしてきたので、かなり疲れている」と前置きをしたストーン監督は、8月6日、8日、9日に出席した、原水爆禁止2013年世界大会について尋ねられると、「参加者たちはとても良心的で、かつ歴史認識も高く、とても感心した」と話した。

 歴史認識については、「戦争中、日本の市民には、アジア人や捕虜などに日本兵が行なった行為も含めて、何も知らされなかった。アメリカでも同様に報道管制を敷き、アメリカの市民は原爆について知らされなかった。だから、被爆者たちは放射能被害を悪化させていくことになってしまった」と語った。そして、「戦後、まず必要だったのは再教育だった。ドイツでは、それがうまく成功した。しかし、日本は戦後すぐに防共の盾として、朝鮮戦争、ベトナム戦争、さらには湾岸戦争でも利用され、再教育は叶わなかった。特に、沖縄はずっと利用され続けてしまった」と見解を述べた。

 続けて、ストーン監督は「その結果、日本人はアイデンティティの回復ができていない。だから、リベラルなリーダーたちは、みな失敗した。鳩山由紀夫元首相も、沖縄の米軍基地問題で希望を持たせようとしたら、オバマ政権に失敗させられた。鳩山元首相とは後日、会見するつもりだ。楽しみにしている」と語った。

▲会見を行うオリバー・ストーン監督

 次に、IWJの岩上が「昨日のシンポジウムで、ストーン監督は『日本人はなぜ、朝鮮人や中国人に残酷なことができたのか』と言った。それを考えていて、監督の著作からヒントを得た。それは、『日本は古くてリニューアルされた小さな帝国、アメリカは歴史が新しい大きな帝国』ということだ。そして、今、この2国が軍事的に一緒になろうとして、とても危険な状態になった。どう思うか」と質問した。

 それに対して、カズニック教授が「帝国主義は、どこにでもある。プロパガンダによって『敵国の人間はゴキブリだ、虫けらだ』と市民を洗脳し、殺戮を容易にさせる」と答えた。ストーン監督は「自分が従軍したベトナム戦争では、人間対人間で戦った。今は無人機を使い、デスクトップで行なう戦争に変わった」と述べ、技術面の進化が、さらに殺戮を容易にすることを示唆した。また、「第二次世界大戦では、人種差別的な部分もあった。1943年5月の段階で、原爆はドイツには使用せず、日本に投下することが決まっていた」と付け加えた。

▲質問に答えるピーター・カズニック教授

 岩上は「周りの国を見下すような態度を持つのが帝国だ。日本とアメリカは、そういう意識を持ち始めている。また、中国に対する脅威をしきりに煽りながら、アメリカは日本に武器を売る。この、帝国主義の日本とアメリカについて、どう思うか」と、重ねてストーン監督に質問した。

 ストーン監督は「日本に経済力があっても、軍事的な帝国とは言えない。イギリスの方が、アメリカにとっては同盟国であり、帝国だ。アメリカは、日本がアジアを代表する同盟国とは思っていない。韓国、フィリピン、オーストラリアなどの環太平洋諸国の一国だ。まして、中国がそんなに脅威だとも思っていない。上海にも近い韓国には、原子力空母ジョージ・ワシントンが行動できるような基地もある。今は、サイバー空間や、宇宙の覇権も視野にある」と語った。

 カズニック教授は「日本は第二次世界大戦以降、アメリカの同盟国になった。同盟のあり方としては、何でも言うことを聞くイスラエルに似ている。アジアの共産化を恐れた大きな流れの中で、ベトナム戦争があり、日本の共産化も恐れた結果での同盟だった」と補足した。

 次に、「核兵器はどうなるのか。どうすれば、なくすことができるのか」との問いがあり、カズニック教授は「核兵器は、重要な兵器ではなくなった。タカ派のキッシンジャーやシュルツなどの元国務長官たちですら、『減らそう』と言うくらい。もはや、軍事的な切り札ではない。アメリカの目的は、陸海空から、サイバー、宇宙空間での覇権だ。ロシアや中国が、もし核兵器を使おうとしたら、他の方法で先制攻撃がすぐにできるからだ」と答えた。その上で、「ジョージ・ブッシュ大統領の時代に、核兵器の縛りを緩めようとした危険があったが、現在は衛星を使って、個人の行動、顔識別、会話、メールなど、すべて監視できる。そういう観点から、核兵器を考えていくべき時代になった」と語った。

 続いて、長崎の平和祈念式典に参加した感想と、広島、長崎を回った印象について尋ねられた。ストーン監督は「日本に来る前、いろいろと勉強はしていた。しかし、実際来てみたら、まったくわずかなことしか学んでいなかった、と思い知らされた。広島、長崎は、とてもショッキングであり、かつ、この悲劇を忘れまいとする日本の人々には、とても感銘を受けた。記憶は、文明の証しのようなものだ。日本にも、いろいろ欠点はあるだろうが、子どもたちに歴史を受け継がせていくのは、とてもいいことだ」と語り、「ただ、日本も、1931年の満州侵略から残虐な戦争を始めたことを、忘れてはならない」と付け加えた。

 最後に、ストーン監督は「これからも、広島、長崎は忘れることはない。特に、被爆者から聞いた体験談は、決して忘れないだろう。出会った被爆者の方々から、大きな人間性や優しさ、許しの気持ちを感じた。(原爆投下のような)こんなことは絶対に繰り返してはならない、と強く感じた」と語り、会見は終わった。

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「「1943年5月の段階で、原爆は白人国家のドイツではなく、日本に投下すると決まっていた」 ~オリバー・ストーン監督、ピーター・カズニック教授記者会見」への2件のフィードバック

  1. 楠 洋明 より:

    通訳の問題なのかもしれませんが、岩上さんの質問が的確に伝わっておらず、回答も適格なものではなかったような気がします。 軍事力の問題ではなく、日本と中国を利用しいかにして武器を売り込む(買わせる)
    かという事だったと思いますが、何かうやむやな答えになっていたのが気になります。

  2. POKUN より:

    オリバーストーンの発言にはガッカリさせられました。
    ある意味、尊敬してた部分もあったので残念です。
    「映画監督」という職業柄、影響力もあると思いますが、今後は発言に注意して頂きたい。

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