あと20年あれば原発分の電力は再生可能エネルギーで賄えるようになる ~即時原発ゼロの設計図! 中西正之氏講演会 2013.8.3

記事公開日:2013.8.3取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 「電気料金を値下げし、CO2を減らし、エネルギー自給率を高め、経済を活性化し、空気汚染も減らす。そのための最適な選択はなにか、という設計図だ」──。中西正之氏は、即時原発ゼロを実現する方法を、このように話した。

 2013年8月3日(土)13時30分より、福岡県北九州市戸畑区のウェルとばたにおいて、中西正之氏講演会「即時原発ゼロの設計図!」が開かれた。冒頭、深江氏より、九州電力川内、玄海原発再稼働申請についての報告があり、中西氏の講演に移った。天然ガスによるコンバインドサイクル発電の仕組みと優位性。天然ガスの一般知識。そして、再生可能エネルギーの可能性と、原発廃炉の方法まで、現状可能な技術を使い、20年後には原発をなくしても、エネルギーが賄えることを証明した。

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  • 第一部 報告 深江守氏(さよなら原発!北九州連絡会事務局長)
  • 第二部 講演 「即時原発ゼロの設計図」中西正之氏(元燃焼炉設計技術者)

 はじめに、さよなら原発!北九州連絡会事務局長の深江守氏が、九州電力が川内原発1、2号機、玄海原発3、4号機の再稼働を申請することを受け、川内原発の直近の活断層の危険性とその評価の状況、それに対する政府、規制委員会の対応を報告した。

 続けて「玄海原発3、4号機に関しては、規制委員会のコメントは、阿蘇火山からの火砕流の評価のみ。再稼働の可能性は大きい。ゆえに、玄海原発30キロ圏内の住民の反対表明が頼りだ。住民避難計画が、反対阻止へのキーになる」などと訴えた。

 次に、中西正之氏の「即時原発ゼロの設計図」の講演に移った。中西氏は「現在、2030年までへの原発ゼロのシナリオはあるが、即時原発ゼロを実現するプランはない。電気料金を値下げし、CO2を減らし、エネルギーの自給率を高め、経済を活性化し空気汚染も減らす。そのための最適な選択はなにか、という設計図を説明したい」と語りだした。

 「現在、再生可能エネルギーが、まだ準備されていないので、電力会社は、緊急避難でコンバインドサイクル発電に頼っているが、天然ガス供給量や価格の問題がある。しかし、原発が動いていない現在でも、それを含む火力発電で十分、賄えている」とし、コンバインドサイクル発電の仕組み、簡便性について述べた。また、600億円ほどで84万キロワットの発電所が作れるなど、川崎天然ガス発電所の実例を挙げ、採算性についても説明した。

 続いて、LNG(液化天然ガス)について、「天然ガスをマイナス162度に冷却、すると体積が600分の1になり、船で運ぶことができる。CO2も石炭に比べて半分の発生量ですむので、緊急避難のためには有効的だが、長く使い続けると価格の問題が出てくる」とした。

 中西氏は「日本は、3.11の震災前、すでに世界の天然ガス生産量の3分の1を輸入している」と資料を見せた。次にシェールガスを説明し、石油と天然ガスの価格の推移、アメリカ、ロシア、ヨーロッパでの、それらエネルギーの需要と供給のからくりを述べた。

 話題は、再生可能エネルギーの買い取り価格に移り、「再生可能エネルギーの企業での使用は、価格と安定供給の問題があり、現在、一般家庭での消費に限られている」と述べ、その解決策について説明。「風力発電は、海上設置で低周波公害の回避をする」とし、イギリスの風力発電への高い依存度を示した。中西氏は「あと20年あれば、原発に相当する分の電力は、再生可能エネルギーで賄えるようになる」と見解を述べた。

 休憩後、中西氏の講演の後半は、原発の発電原価から始まった。「原発事故までは、毎時1キロワットが5.3円と公表していた。しかし、大島教授の研究から、推定数値だが、毎時1キロワット12円くらいになった」。続けて、廃炉費用について、「電気事業連合会の発表では、110万キロワット原子炉で、廃炉費用を544億円と積算。それを電気料金に加算し積み立てているが、不可能だ」と指摘。また、放射性セシウム137の半減期について解説し、廃炉費用の矛盾を説明した。

 中西氏は、すでに東海第一原発で17万キロワットの原子炉を廃炉にしていることを話し、「解体した部材は運び出せないので、同じ敷地にドラム缶に入れ、ぶ厚いコンクリートで密閉し保管するが、100年もたてばボロボロになってしまう。今は、使い捨ての炉で、電子レンジの原理で廃材を溶かし、ガラスと混ぜてインゴット(塊)にして保管する」と説明。廃炉には19年以上の期間がかかり、費用は約20兆円と試算した。

 そして、石炭ガス化発電の説明に移った。石炭は廉価で、北海道にも豊富にあり、CO2処理の解決策も見出され、将来性が期待されるという。また、北九州市の250万キロワットの発電所計画についても触れ、「こういう動きを見ると、政府は原発依存から脱する道も考えているのではないか」と推察した。さらに中西氏は、石炭発電による世界各国の大気汚染を比較し、「日本の公害の防止技術は世界一。その技術を世界へ輸出すればいい」と提案し、講演を終えた。

 質疑応答に移り、地熱発電、風力発電による景観破壊などについて問われると、中西氏は「地熱発電は、現状、国立公園内に地熱源が多いので法律の問題がある。また、ソーラーより経費はかからないが、風力よりコストは高い。風力発電の景観破壊については、良い面と悪い面はどうしてもあり、国民的合意が必要だ」と答えた。

 さらに、中西氏は「原発稼働の本当の目的は、電力会社の経営以上に、国策として、日本の海外へのエネルギー依存を減らし、エネルギー自立を世界へアピールしたいのではないか。また、企業と一緒になり、原発技術を輸出するという目的もあるだろう」と話した。

 深江氏が再び登壇し、「玄海原発3号機は、プルサーマルのMOX燃料。これは3年間稼働させると、100度まで温度を下げるのに500年かかる。また、玄海原発の使用済み燃料プールは、あと3年で満杯になる。「六ヶ所村に持っていく」と九電は言うが、それは不可能だ」と指摘し、改めて再稼働反対を訴えた。

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