広域震災廃棄物3日間連続講演会(3日目)「今国会で改正・環境法改悪の最大の問題点を暴く」 2013.6.29

記事公開日:2013.6.29取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 2013年6月29日(土)19時より、名古屋市中村区の愛知県産業労働センター・ウインクあいちで「広域震災廃棄物(放射性廃棄物瓦礫)全国拡散被曝地域拡大から二年!何がこの国で、今起きているのか 中部地域3日間連続講演会」の3日目が行われた。

 藤原寿和氏と青木泰氏は、「この改正案は、広域がれき処理や除染事業の利権を、環境省が地方自治体から奪ったとしか思えない改悪だ」と説明した。また、平山誠参議院議員は「広域がれき処理は、全国の汚染濃度を上げて、『福島は安全だ』と言わせるために画策した」という、双葉町前町長・井戸川克隆氏の怒りの言葉を紹介した。

■全編動画

  • テーマ 「今国会で改正・環境法改悪の最大の問題点を暴く」
  • 第一部 藤原寿和氏(放射性廃棄物全国拡散阻止!3・26政府交渉ネット事務局、廃棄物処分場問題全国ネットワーク共同代表)「『放射性物質による環境の汚染の防止のための環境法律の整備に関する法律』の問題点」
  • 第二部 鼎談 藤原寿和氏、青木泰氏(環境ジャーナリスト)、平山誠参議院議員
  • 日時 2013年6月29日(土)19:00~
  • 場所 愛知県産業労働センター・ウインクあいち(愛知県名古屋市)

 はじめに、平山誠参議院議員の国会答弁の映像が上映された。環境省の予算について、「120億円のうち10億円だけが、がれきの広域処理を行なう自治体に使われ、残りは関係のない自治体へ支払われている」などとした、委員会での質疑風景や、平山氏が指摘した大阪府堺市の件に答える石原伸晃環境大臣の姿を映し出した。続けて、藤原寿和氏が活動を報告し、「放射性物質による環境の汚染の防止のための環境法律の整備に関する法律」の問題点について、講演した。

 藤原氏は、まず、この法律の成立経過の概略を説明したあと、本題に入り、水質汚濁防止法一部改正案(地下水などの汚染防止を義務づける法案)の付帯決議1の、放射性物質に係る適用除外を指摘。「環境省の回答は、『原子炉等規制法、原子力基本法などに(該当部分が)あり、まったく規制していないわけではない』という理屈だ」と述べて、その他の付帯決議を示して説明した。

 続いて、藤原氏は「環境省所轄法と放射性物質との関係」について述べ、「環境省は、水質、特定有害物質、大気中などから、放射性物質を除外している。しかし、なぜ放射能をモニタリングするのかというと、環境省設置法にその旨が書かれているのだ」と、各種法律の要旨と矛盾することを示した。

 次に、大気汚染防止法改正を解説した。「この法律でいう放射線は、セシウム134、137、ストロンチウム90だけが対象。また、環境大臣が、放射性物質を常時監視し公表しなければならない、ということになった」。その上で、「ここでの問題は、中央環境審議会での審議が不十分なことだ」とし、その審議経過を示した。さらに、「もうひとつの改正の問題点は、国の権限強化になること。地方自治体主導では、住民の反対運動でうまくいかないので、国が中央集権を狙っているのではないか。また、今回は一部改正にとどまり、放射性物質の放出による環境汚染に対する規制や、防止対策への規定がない」などと指摘した。

 次に青木泰氏が、藤原氏とは違う角度から改正案を紐解いた。「大気汚染防止法の改正は、現行法では『都道府県知事は常時、大気汚染を監視』とあるが、放射性物質を除外し、その義務を環境大臣に移した。どこが権限を持つか、どこが民間へ下請けを出す権限があるのか、ということで、今回、環境省に利権を集約させた」と述べた。

 話題は変わって、「原発事故の発災後、福島第一原発で、放射能汚染水を海洋投棄した。その際、『ロンドン条約(船や航空機からの有害物質などの海洋投棄を規制する条約)には違反しない』と政府は答えた。では、陸上から海洋投棄するなら、国内法で規制しているはず。しかし、環境省は『廃棄物処理法の定義の中に、放射性物質は含まれていない』という。その法律では、原子炉等規制法に定める、とあったが定めていなかった。つまり、事業者や管理施設内での法律はたくさんあるが、それが環境中へ放出される、という事態は想定していなかったのだ。むしろ、為政者や官僚は、事故があると想定していたから、わざと罰則を規定しなかった、ともいえる」と指摘した。

 続けて青木氏は、「発災後、近隣のゴルフ場が放射能汚染で営業できず、東電を訴えたことがあった。裁判では『放射能は無主物だ』とされ、『責任は東電にない』という判決だった。広域がれき処理の際、ほとんどの自治体は、責任の所在がないものを受け入れなかった。それでは処理できないので、放射性物質汚染対処特措法を作り、8000ベクレル/キログラムまでは、廃棄物処理法で扱えるようにした。その際、がれき処理について、自治体から環境省に『原子炉等規制法では、100ベクレル/キログラム以上の放射性物質はドラム缶で200年以上保管しなければならない、とあるのに、なぜ、特措法では大丈夫なのか、という質問が多く寄せられた」と話した。

 青木氏は、「結果的に、8000ベクレル/キログラムを超えるものは、環境省が引き受けることになった。しかし、その汚染がれきを、福島県の鮫川村に実験施設を作り、そこで焼却するという。なぜかというと、試験焼却、研究だったら、ごまかせるからだ。広域がれきの見積り量は400万トンあったのが、10万トンしか処理できなかった。環境省は『がれきの広域処理は収束』としたが、実態は破綻したのだ。理由は、住民の反対運動と、地方自治体に権限があったため。それを、今回の改正で、権限を都道府県知事から奪ってしまった」と憤った。

 次に平山氏が登壇した。「参議院では、この改正案を決議する際、194人が賛成で、自分1人だけが、自治体から権限を奪うことに反対した。六ヶ所村の再処理工場は、排水は海に垂れ流し、大気中に放出されるクリプトン等を止めるフィルターはない。また、視察したイギリスのセラフィールド核燃料再処理工場も、汚染水を海に垂れ流している。近隣の漁師に魚の流通先を聞いたら、『日本がよく買ってくれる』と答えた」と話した。

 平山氏は「前日、双葉町の井戸川前町長にお礼の電話をした際、井戸川氏は『がれき焼却の問題は、全国で放射能濃度が上がれば、福島も安全だと言える、住民も帰せると画策したのではないか』と怒っていた」と語った。そして、双葉町の友人の体験として、「3.11で、福島第一原発3号機が爆発した際、ドドドーと爆音がして、ピンポン玉くらいの白いものが降ってきた」という話を紹介した。その上で、「愛知で問題になるのは浜岡原発だ。津波は防げないので、どう対処したらいいか、考えるべき。安倍政権は、再稼働をするなら、その責任をとらなくてはいけない」などと訴えた。

 最後に、青木氏、平山氏、藤原氏が、会場からの質問を受けた。質疑応答の中で、平山氏は「原発は1955年、日米原子力協定を強制され、軍事も含むことで始まった。原発については、長い間、国会でもタブーだった。今、津波が原発の危機といわれているが、日本海沿岸の原発には、他の危険もある。しかし、廃炉にする技術も、使用済み燃料の処理技術もない」と話した。

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