2013年6月28日(金)13時30分から、福島県東白川郡の鮫川村役場で、鮫川村の実証実験焼却炉に反対し子供を守るママの会による、環境省の指定廃棄物焼却稼働に反対する申し入れが行われた。この施設は、環境省が主導し、8000ベクレル/キログラム以上の高濃度放射性廃棄物を焼却するために、日立造船が建設、運営をする実験炉だ。非公開で進められた計画は、それを知った住民たちの反対運動で、一旦は建設中止になった。しかし、環境省は1回だけの住民説明会をもって「同意を得た」とし、工事を再開。今年7月には稼働予定になっている。
- 出席者 鮫川村の実証実験焼却炉に反対し子供を守るママの会、山本節子氏(環境ジャーナリスト)
- 日時 2013年6月28日(金)13:30~
- 場所 鮫川村役場(福島県東白川郡)
- 主催 鮫川村の実証実験焼却炉に反対し子供を守るママの会
鮫川村役場を訪れた、山本節子氏、鮫川村の実証実験焼却炉に反対し子供を守るママの会のメンバー数名に、鮫川村の白坂利幸副村長ら3名が対応した。
冒頭、山本節子氏が、焼却施設の土地の貸与に関して、「建設地には18人の地権者がいる。土地を処分、または貸借するに際しては、地権者全員の同意がいるはずだ」と質問をすると、地域整備課の近藤課長は「管理の場合は半数(の同意)でいい。環境省の指定廃棄物課の原田氏から聞いた」と答えた。
それに対して山本氏は、「私有地なのに、多数決で決められたのがおかしい、という所有者がいる。そういった不信感があるので、その半数でもよい、という証拠を文書で提出してほしい」と求めた。続けて、「村が制定した公害対策条例に基づいて、環境省にその措置を講じさせる必要がある」などと要望した。
近藤課長が「焼却炉で処理するのは、村で発生した600トンの放射性廃棄物で、8000ベクレルを超えるのは、うち5%の30トンだ。その計測は、村の資料館にある計測器で測った。別の検体は、郡山の県の農業センターで調べたが、公表していない」と説明すると、山本氏は「なぜ、公表しないのか」と詰め寄った。近藤課長は「精度がない(低い)ので公表しなかった」などと、あいまいな答弁を繰り返した。
山本氏は「鮫川村は、いまや有名な村だ。市民の方が、よっぽど勉強している。村役場は、環境省にしか目を向けていない。鮫川村が受け入れる実験炉での焼却は、がれきより数倍危険だ。放射性廃棄物を燃やすことは、汚染を拡大することになる」と主張した。近藤課長は「環境省は、排ガスを2ベクレル以下に押さえるという。バグフィルターの前後に計測器をつけて管理する。発生した焼却灰は、10万ベクレル未満にし、管理された仮置き場に置き、中間処理施設ができたら、そちらに移す。現在、廃棄物600トンは各家に保存してある。その記録、報告書はある」などと説明した。
山本氏はそれに対して、「汚染の拡散を防ぐ義務は、行政にある。世界の認識では、焼却は拡散処理。気化してしまうと、バグフィルターでは捉えられない」と指摘した。近藤課長は「600数度でセシウムは気化する。それを800度で2秒間熱し、急速冷凍とすると個体になり、99.9%は取れる、と環境省は説明している」と応じた。山本氏は「それを裏付ける資料はない」と反論。近藤課長は「バグフィルターの計測値から、計算できる」と、やりとりの応酬が続いた。
山本氏は「一番はじめの、全体の数値はわからない。環境省が言うのは、バグフィルターを通す前と後での数値。村には、焼却炉の危険性を理解してほしい。鮫川村の公害対策条例に基づいて対処しないと、行政の責任を問われる。鮫川村と日立、環境省とで公害防止条例を作って、リスクヘッジした協定にするべき。神奈川県では、被災地の漁網の受け入れを、公害防止協定によって阻止した」と、対策を示した。
白坂副村長が「絆とは、別か」と言葉を挟むと、山本氏は「そうだ、これは汚染事業。汚染されたら、それこそ絆のために、支援する農産物が汚染されてしまう」と答え、さらに、「このようなことは、どこの地方も、地元のボスが一切を仕切って利権事業となっていて止められない。だから、あなた方で止めてほしい。このままでは、鮫川村は歴史に汚名を残す。風評被害どころではない。とにかく、鮫川村と、日立、環境省との公害防止協定には、焼却炉の稼働停止項目、住民の監視機関を参加させること、測定の立ち会いなどを加えるべきだ」と訴えた。
近藤課長が「監視機関としては、住民監査委員会がある」と言うと、山本氏は「それならば、監査委員会が、少なくとも煙突の排ガスの線量検査をチェックすべきだ」とした。それに対し、近藤課長は「監査委員会が、千葉県にある日本分析センターに排ガスの線量分析を依頼し、日立造船が出した数値と突き合わせる」と説明したが、山本氏は「不信感を抱かせないために、公害対策委員会を作るのが筋だ。村の条例に、委員会の設立義務が書いてあるのにおかしい。村が、村民を困らせる権限はない」と主張し、委員会を設置して、住民の目を行き届かせるように要望した。
他の出席者から「焼却灰の受け入れ先が決まるまで、焼却しないことはできないのか」との意見が出た。「環境省としては、7月の半ばくらいには稼働させたい意向だ」と白坂副村長が答えると、山本氏は「きれいな川がいくつか流れていたが、漁協と合意はできているのか。それがないと焼却炉の稼働はできない。環境省は、村がそのような規定を知らないと思って押し付けている。環境省には、(鮫川村は)とても甘く見られている」と述べた。
また、他の住民が「今回の建設に至った経緯は、高濃度放射性廃棄物の仮置き場がないから実験炉を作る、ということだった。そして、放射性焼却灰は、施設内の空き地に置く。それなら、各家庭に保管してある汚染廃棄物を、焼却せずに、その仮置き場にまとめておけばいい」と主張。「この焼却施設について、『村の廃棄物がなくなれば終わりにする』という、環境省や日立とやり取りした書類はあるのか」と尋ねた。
近藤課長が「その確認書はある」と言うと、住民の1人が「環境省に、2年でやめるのかと聞いたとき、環境省の答えは『(焼却する)もの自体が増えればやめない』であった。さらに、廃棄物の量が減って、焼却が早く終わることもあるのかと質問すると、『その時、考える』と答えた」と話した。その後、近藤課長の示した確認書を見た山本氏は、「有事の際の対応に関しては、何も書いてない。とにかく、ちゃんとした協定を作ることだ」と重ねて要望した。
ほかの出席者からも「住民たちの権利を守りたい。原発事故で甚大な被害を受けたのに、さらに傷口に塩を塗るようなことをするのか」との訴えがあった。また、「量は減っても放射能は減らない」「稼働が終わったあと、高濃度に汚染された炉の始末はどうするのか」などの質問が続き、さらに、焼却灰保管の安全性、地震や土砂災害などへの備えなどについても疑問をぶつけた。
最後に、会の代表者が「環境省の指定廃棄物焼却稼働に反対する申し入れ」を読み上げ、稼働停止を訴えた。申し入れの事由として、「住民の絶対反対の意見が、受け入れられなかったこと。事前の情報公開もなく、一部の住民への説明会を1度だけ開催し、それを合意として工事を強行したこと。高濃度放射性廃棄物の焼却により、環境汚染は免れないこと。住民の生存権がなおざりにされていること」などを挙げて、文書での回答を求めた。