環境ジャーナリスト・山本節子氏による鮫川村焼却炉・塙バイオマス問題勉強会「これからの子供たちを守るために私たちが出来ること」 2013.6.28

記事公開日:2013.6.28取材地: 動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 2013年6月28日(金)18時30分より、福島県東白川郡の塙町公民館で、環境ジャーナリストの山本節子氏による、鮫川村焼却炉・塙バイオマス問題勉強会「これからの子供たちを守るために私たちが出来ること」が開かれた。山本節子氏は、日本におけるバイオマス事業促進の背景と、その隠された事実、塙町バイオマス発電所事業の経緯や問題点を挙げた。

 そして、それを推進する環境省を、「行政ではなく、企業。詐欺師だ」と糾弾した。また、バイオマス発電所の、世界での評価や危険性など、実例を挙げながら指摘した。さらに、市民運動の心得、その進め方にも言及し、「とにかくノーと言い、行動してしまうこと。そうすれば、あとから知識や人の輪は広がっていく」と参加者にエールを送った。

■全編動画

  • 日時 2013年6月28日(金)18:30~
  • 場所 塙町公民館(福島県東白川郡)
  • 主催 子供達の未来を守るママの会
  • 共催 塙町木質バイオマス発電問題連絡会、鮫川村の実証実験焼却炉に反対し子どもを守るママの会

 冒頭で主催者が、同日、鮫川村役場で行なわれた、指定廃棄物焼却稼働に反対する申し入れについて説明した。建設地の共有権に関し、「地権者半数の同意で貸与したことには法的根拠がなく、環境省の指示に従っただけだった」と述べ、「鮫川村に、7月10日までに文書による回答をするよう申し入れてきた」と報告をした。

 山本節子氏が登壇し、まず自己紹介をした。「最近は、神奈川県のがれき処理の問題を扱ってきた。がれき問題は、違法性が高い。また、これは政府の目くらまし策で、本当の狙いは、高濃度放射性廃棄物の処理である。放射性廃棄物を福島県外に出せないため、『いかに知られないように処理するか』が、本来の目的だった」と話した。

 続けて、山本氏は「バイオマス発電は比較的新しい施設で、燃料には、木質系廃棄物と農業系の2種類がある。基本的には焼却施設だ。廃棄物系は当初、家畜の糞尿などを利用するものが多く、公害を引き起こすので、厳しい規制がかけられた。そのため、法律でバイオマス燃料を資源と捉え、業者を保護するように変えた。1997年、新エネ法から急速に推進されるようになった」などと、バイオマス発電に関する一般的知識と法整備の流れを説明した。

 「塙町、鮫川村は、環境省にとって、扱いやすい自治体だとされている。なぜなら、うるさい市民がいないから」。そう、話した山本氏は、「今、食い止めないといけない。すべての公共事業には、根拠となる法律が必要で、それを公共サービス基本法で規定している。環境省は、その裏を突こうとする。環境省は企業と同じだ。鮫川村の事業は、表側は環境省だが、中身は日立の事業とも言える」と事業の背景を指摘した。

 次に、山本氏は、福島県のバイオマス事業の経緯を述べ、「地方自治体は、地方自治法に基づいて総合計画を立てる。それにないことを、やってはいけない。しかし、3.11以降、2011年6月に、急に福島県の方針が変わり、『福島を再生可能エネルギーの先駆けの地とする』と言い出した。4ヵ月後、政府の復興対策本部も、それに同調。バイオマス発電事業は、環境省利権だが、復興予算も加わって予算が使い切れず、農水省や資源エネルギー庁(経産省)なども巻き込んでいる。また、県の計画書には『収益事業』と明記されている」と、この事業を促進する裏の意味や、塙町バイオマスでの、木質放射性廃棄物焼却の問題点を挙げた。

 次に山本氏は、話題を市民運動に移した。「市民は、家族、子ども、環境、仕事など、生存できる社会環境を求める。それに対して、行政や企業が守りたいものは、利益、収入、面子など既得権益と旧体制だ。3.11以降、政府の行なってきたことは、高線量基準の設定、棄民、汚染食材の拡散などで、住民を守る意図がない。驚いたのは、それに対して、日本人が怒らないこと。政府は、それをわかっている」と述べて、市民運動の必要性を説いた。

 さらに、山本氏は「福島がなぜ、こんな状態になっているかといえば、原発を受け入れた実績、地元ボスと行政の癒着などの構造的問題のほか、政府、行政へのお上意識の強さなどが挙げられる。また、金権主義、女性蔑視、意見の異なる者へのいじめ、隠蔽体質などもうかがえる。これらは、他の公害施設の立地自治体と共通するものだ。政府は、(リスクのありそうな施設を)受け入れやすい、従順な地域をしっかり調べている。黙っていたら未来はない。住民運動の3ステップ、問題意識、考えを変える、行動すること、である」と訴えた。

 山本氏は「バイオマス発電所は、ごみの焼却施設である」と述べて、シアトルのバイオマス発電所計画の反対運動の事例を挙げた。また、PM(微小粒子状物質、1000分の1ミリ)やナノPM(1000万分の1ミリ)の危険性、生物由来の木材の方が、CO2排出量が石炭より多く出るという論拠、揮発性有機化合物(VOCs)、ダイオキシン発生の危険性などについて、アメリカ環境保護庁(EPA)の資料を示した。

 最後に山本氏は「市民運動の原動力は、怒り。抑圧と不正に甘んじることなく、正当な怒りを発散させ、社会を変えていく活動が市民運動だ。納税者は、知る、説明を求める、子どもを守る権利がある。また、怒ることは、とても能力がいる。グローバル社会では、政府にとって、市民は『敵』。日本ほど、メディア操作、統制ができる国はない。嫌なものは嫌というべき」と強調。「最初は、直感でいい。動いていくうちに、知識と人の輪はついてくる。女性が前に出て、男性がしっかり後押しをすること」と、市民運動の姿勢を繰り返し訴えた。

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