「想定される最悪のケース、政府が放射線量の基準を上げる」白石草氏 ~公開学習会「骨抜きにされる?原発事故子ども・被災者支援法」 2013.5.21

記事公開日:2013.5.21取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富山/奥松)

 2013年5月21日(火)19時から、東京都千代田区の日比谷図書文化館スタジオプラス(日比谷図書館4階小ホール)にて「公開学習会『骨抜きにされる?原発事故子ども・被災者支援法』」が行われた。学習会の講師を務めた、特定非営利活動法人OurPlanetTVの白石草氏は、支援法の代替案として出された被災者支援施策パッケージや、除染目標値の緩和策などの問題点を解説した。

■ハイライト

  • 講師:白石草氏(特定非営利活動法人OurPlanetTV、一橋大学客員准教授)
  • 日時 2013年5月21日(火)19:00~
  • 場所 日比谷図書文化館スタジオプラス(東京都千代田区)
  • 告知 http://2011shinsai.info/node/4110
  • 主催 福島原発事故緊急会議

 「骨抜きにされる?原発事故子ども・被災者支援法」というタイトルで講演を行った白石草氏は、原発事故子ども・被災者支援法が、国会議員と市民が協力して作り、衆議院にて全会一致で成立した法律であるにもかかわらず、マスコミの報道もなく、国民に対して周知されていない点を問題視した。

 続いて、この法律の基本理念について、「被災者一人ひとりが、支援対象地域における居住や避難、帰還を自らの意志で行えるよう支援し、被災者に言われなき差別が生じないよう配慮し、健康被害の未然防止を実現するもの」と説明。その上で、「除染の実施、生活支援や子どもの学習支援など被災者へのさまざまなサポート、放射線による健康への影響に関する調査。医療費の負担は、原発事故との因果関係がないと国が証明できない限り、国が負うなどの、具体的な施策が考えられていた」とした。

 次に、この支援法が棚上げになってしまった理由として、支援対象地域が定まらず、基本方針の策定が一向に進まないことを説明した上で、「自民党に政権交代してから、支援法の基本方針を定める代わりに、被災者支援施策パッケージというプランが、今年3月に復興庁から発表された」と述べた。白石氏は、被災者支援施策パッケージについて、「被災者の不安解消や安定した生活の実現のために、支援法よりも幅広く施策を取りまとめた、と自民党は主張している。一見すると良い政策のように見えるが、97の政策をリスト化した行政レビューシートをひとつひとつ確認すると、地デジチューナー切り替えの支援制度など、以前から全国的に行われている普通の事業が目立ち、ほとんどが平成23年度の第3次補正予算の時に挙がった項目だ」と指摘。その上で、「25年度に、新規で加えられた項目のほとんどが、帰還促進政策である。実質的には、避難する人への支援を行わない方向に進んでいる」と批判し、被災者支援のために議論した形跡がない、自民党の対応を疑問視した。

 白石氏は、自身が想定している最悪のケースとして、「除染目標を緩和して、被災者の帰還が促進されること」を挙げた。「福島県伊達市の仁志田市長などは、除染目標である年間積算線量1ミリシーベルトの達成が難しいことから、除染目標を年間5ミリシーベルトに緩和したいと発言している。そういう意向を、現地の声と受け止めて、自民党は、放射線との共存を前提にした放射能対策が必要であるとし、新たな防護措置の具体化を目指そうとしている」。

 さらに、「被災者支援施策パッケージの発表後、子ども・被災者支援議員連盟は、事実上活動停止状態である。自民党の方針と、支援法の考え方は一致しておらず、自民党案では、人口流出の進む被災地へ、どうやって住民を戻すかに力点が置かれている。これは帰還施策である」と指摘し、支援法を実現するためのロビー活動や、担当官庁へ働きかける必要性を訴えた。

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