2013年5月11日(土)13時から、福島大学で「原発事故子ども・被災者支援法(以下、支援法)」の早期支援実施を訴える集会が行われた。この支援法は、低線量被曝を回避する権利を被災地の住民に認めるもので、昨年6月に超党派の議員立法で成立した。だが、政府はその対象地域すら未だに決めておらず、せっかくの仏(法律)に魂が入らない状態が続いている。
(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)
2013年5月11日(土)13時から、福島大学で「原発事故子ども・被災者支援法(以下、支援法)」の早期支援実施を訴える集会が行われた。この支援法は、低線量被曝を回避する権利を被災地の住民に認めるもので、昨年6月に超党派の議員立法で成立した。だが、政府はその対象地域すら未だに決めておらず、せっかくの仏(法律)に魂が入らない状態が続いている。
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実行委員会側のあいさつに続き、来賓の6人の議員が次々に短いスピーチを行った。川田龍平氏(みんなの党・参議院議員)は「支援法に効力を発揮させるには、基本方針を固めなくてはならないが、その際には、国が、被災地域の住民の声に、積極的に耳を傾けることを忘れてはならない」とし、客席に向かって「みなさんにはぜひ、国に対し、声を上げ続けてほしい。地元の新聞社への投稿を通じて、国にアピールするやり方も有効だ。世論の力は大きい」と呼びかけた。
一方、福島みずほ氏(社民党・ 参議院議員)は「福島県外を含む健康診断の充実も急務であり、これについて文科省は前向きだが、環境省がまるでダメ。『福島県内ですら、さほど被害が出ていなのに、県外で実施する必要はない』の一点張りだ」と批判を展開。その上で、「環境省が、どう反論しようが、『低線量被曝の実態が把握されていない以上、何としてもやれ』と迫るのが正しい行いだ」と主張し、「環境省の担当者には『このままでは、あなた方は将来、刑事告発される』と対面で警告したが、反応は得られなかった。あきらめずにアピールを続ける」と話した。
その後、木田光一氏(福島県医師会副会長)による「福島の医療現場の声を踏まえた支援法の活用」との演題の基調講演と、荒井広幸氏(新党改革・参議院議員)のあいさつを挟み、集会は5人の被災当事者による現状報告へと移行した。
5人のうちの1人、栃木県那須塩原市から愛知県に自主避難中の井川景子氏(原発事故被害者支えあいの会 あゆみR.P.Net 代表)は、「原発事故直後から避難するまでの日々の様子が、たびたびフラッシュバックされる。子どもたちを被曝させてしまったことが悔やまれる」と述べ、6歳と2歳の2人の子どもの甲状腺に、検査で異常が見つかったことを打ち明けた。そして、「その異常を、どれほど心配すべきなのか、現時点でははっきりしない。われわれ親は生涯、不安を抱えながら生きることになるのか」と訴えた。さらに、井川氏は「(原発事故発生時に福島県の近隣に暮らしていた)われわれ大人も検査を望んでいる。しかし、費用の負担が重く、自主的には受診できないのが実情だ。このジレンマは、国によって解消されるべきだ」と主張した。
また、井川氏は「(子も親も)仮に健康被害が現れた場合は、全額国費で治療が受けられるようになることを、強く要望する」と述べて、「支援法は、低線量被曝を巡る不安から、被災者を救うための法律だ。福島県はもとより、近隣にも対象とされるべき自治体が必ず存在する」と重ねて訴えた。
パネルディスカッションでは、大城聡氏(弁護士)が、支援法の中身を示す基本方針が決まらない問題に言及した。「昨年6月に成立した支援法は、当初、基本方針が昨年10月には決まると言われていた。しかし決まらず、年が変わってしまう。今度は(3月の)年度末までには何とかるだろう、との見方が広がるも、結局それでも決まらず、今日に至っている」と説明、「支援対象地域の決定が、デリケートな問題として横たわっている」と指摘した。さらに大城氏は、「対象地域の決定は、原発事故の被害が可視化されること意味する。その可視化に、不都合を感じている人たちが大勢いるのだと思う」と述べた。
基本方針が固まらなければ予算はつかず、いつまでも支援が行われない構図が定着してしまうと懸念する大城氏は、「支援法には、基本方針を決めなければならないと明文化されているが、成立からもうすぐ1年になる。にもかかわらず、方針が決まっていない現状は、政府による重大な怠慢を意味する」と強調した。また、「被災者や避難者の声を、基本方針に反映させる、とも書いておきながら、政府主催の公聴会などは開催されていない」と指摘し、「法律の条文に明示されていることを、いつまでも蔑ろにする政府の姿勢を、市民やメディアが糾弾することが、現状の打破につながるだろう」との見方を示した。