「原子力に携わってきた人間として、私にも責任がある」最悪の事態を迎える福島原発事故 小出助教「シニア決死隊」への参加を明らかに ~岩上安身によるインタビュー 第123回 ゲスト 小出裕章氏(京大原子炉実験所助教 ※収録当時)後編 2011.5.10

記事公開日:2011.5.10取材地: テキスト動画独自
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 2011年5月10日、京都大学原子炉実験所助教、小出裕章氏に対してインタビューを行った。2011年4月1日、2011年4月10日に引き続いて3回目であるが、事故後、氏が推定していた事故の様相が次々と事実として確認されてきた。

 放射能をまき散らし続け、絶望的な状態にある原子炉を封じ込めるために検討されているさまざまな方法論について、課題は何かを岩上安身が訊ねた。

記事目次

  • インタビュー内容
    • 水棺と循環式冷却
    • 福島原発暴発阻止行動プロジェクト(シニア決死隊)
    • 現在の福島第一原発の状況
    • 福島第一原発3号機の爆発は本当に水素爆発か!?
    • 年間20mSv問題
    • 浜岡原発停止、そして、全原発廃止へ
    • エンディング

■ハイライト

 2011年4月1日、4月10日に引き続いて3回目のインタビューとなった。

 東京電力が水棺方式に着手したことについて、小出氏はダメ出しをする。特に2号機については、圧力抑制室(サプレッションチェンバー)が既に損傷していることから、水棺はそもそも不可能であると。さらに、仮に格納容器内を水で満たせたとしても、元々、格納容器は水を入れることを前提とした設計ではないため、水の重量・水圧がどのような力学的影響を及ぼすか分からず、既存の損傷部の悪化、余震に耐えられるか等々、様々な不安要素があると言う。

 かねてより小出氏が提案していた、圧力容器と格納容器を一体と見なした循環式冷却は水棺と違って、圧力抑制室の水をひたすら汲み上げて熱交換器を介して圧力容器に戻すものであり、この方が簡単で、水棺よりも懸念事項が少なく、作業者の被曝も少ないであろうものである。何れにせよ、何かしらの工事の際には、作業者の被曝は避けられない状況であり、小出氏はその点を非常に心配している。

 「福島原発暴発阻止行動プロジェクト」とは、山田恭暉氏が、若者に被曝させるのではなく、放射線の感受性が低いシニア世代が作業に行くべきであるとの趣旨で立ち上げられたものだが、小出氏も既にその一員であると言う。小出氏は「自分が行っても、何も役に立たないかもしれない」としながらも、岩上氏の「旧ソ連以下とも言われる、現在の情報閉鎖的状況を打破する副次効果がある」との見解には、相応の同意を示している。

 現在の福島第一原発の状況について小出氏は、燃料がどこまで溶けているかは誰にも分からないが、東京電力の発表が本当だとするならば、燃料の上部は損傷しているが下部は未だ残っており、炉心全体は下には落ちていないだろうと言う。

 しかし、その状態で、もし何らかの要因で水位が下がり、下部の燃料損傷が進み、燃料全体が溶け落ちて一気に圧力容器の底に溜まっている水と接触すると、水蒸気爆発の可能性がある、そして、その場合には圧力容器→格納容器が破壊され、どうしようもない事態、つまり、放射性物質が撒き散らされる事態となるだろう、としている。

 3号機の爆発に関して、水素爆発ではなく核爆発、即発臨界との推定が海外で示されていることについて、小出氏は否定的で、これは滅多に起こらないだろうと言う。ただし、一つの疑念として、CTBTにより高崎(群馬県)で大気中の放射能を測定しているが、3月15日から16日にかけて、半減期が6.7時間のヨウ素135が検出されたというデータが公開されていたにも関わらず、4月になるとそのデータがなくなっていると言う。

 半減期からすると、原子炉が停止していれば観測される筈のないデータが公表され、そして、消えた、そのことに小出氏は疑念を抱いている。

 年間20mSv問題について、小出氏は憤る。年間20mSvは、小出氏のように放射能に関わる仕事に従事する特殊な職業人の年間被曝限度。ところが、仕事で従事しているわけではない一般人、ましてや、何の罪も責任もなく、放射能の感受性が高い子供にまで一律に、年間1mSvから20mSvまで引き上げて被曝を我慢させるという政府指針は、「間違った考え方」と断じる。

 20mSvはICRPの勧告に基づくものであり、政府はICRPをあたかも絶対的な存在かの如く見なすが、他にも様々な機関が様々な見解を出しており、そうした見解を考慮することもなくICRPの勧告にのみ従う姿勢にも、小出氏は疑問を呈す。

 ただ、小出氏は、避難させるのが良いか否か、自身には分からないと言う。チェルノブイリ原発事故の際、避難した人達は故郷を捨て、後の生活も悲惨であった。一方、避難すべきもしなかった・できなかった放射線管理区域の人達は、被曝のリスクを背負い続け、今もなお、そこで生活している。

 よって、「いずれも悲惨だ」と。したがって、「もう、原発を廃絶するしかない、それしかない」と小出氏は言う。

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