2013年2月23日(土)13時半より、茨城県ひたちなか市の正安寺会館で「原発事故から2年 “いま何を考え 何に備えるべきか” 西尾正道氏講演」が行われた。北海道がんセンター院長の西尾正道氏が、データや図を用いながら、放射線の影響やICRPの隠蔽体質などについて語った。
(IWJテキストスタッフ・富山/奥松)
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2013年2月23日(土)13時半より、茨城県ひたちなか市の正安寺会館で「原発事故から2年 “いま何を考え 何に備えるべきか” 西尾正道氏講演」が行われた。北海道がんセンター院長の西尾正道氏が、データや図を用いながら、放射線の影響やICRPの隠蔽体質などについて語った。
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はじめに、放射線治療の有効性を訴えてきた西尾氏は、自身の経歴と日本のがん治療の推移を語り、「私の医師としての経歴は、切りすぎる外科医と、抗がん剤に固執する内科医との闘いであった。日本のがん医療は、放射線を理解していない」と述べ、抗がん剤使用量の多さ、手術優位である一方、貧弱な放射線治療体制が日本のがん医療の特徴であると指摘した。その上で、放射線治療の概要、メリットを解説した。
また、かかった医者により治療方法が変わる日本のがん医療の現実を説明し、「放射線治療は、放射線を当てて治療することによって、患部の切除を避ける事ができるが、まともな放射線医がいなければ切除される。日本のがん医療は、ロシアンルーレットである」と述べ、放射線治療の情報が国民に示されていない点を問題視した。
続いて、外部被曝と内部被曝の違いを解説した西尾氏は、年間20〜100ミリシーベルト以下でも、健康被害が起きる医学的な証拠が多数存在していることを説明した。その上で、障害発症率と発症時期が線量依存性であるとし、線量が少ないほど、晩発症である点を解説した。
また内部被曝線量評価のための個人モニタリングが、ガンマ線のみである点を問題視し、「被験者への影響は少ないが、尿などの生体試料を測定するバイオアッセイ法を利用し、線種を問わず、実測値での説明や議論をするべきである。1999年の東海村JCO臨界事故の時に、バイオアッセイ法で測定することは国のマニュアルとなったが、今回の福島第一原発事故では一切やらなかった。これでは絵に描いた餅である」と述べた。
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福島県立医科大学の放射線医学県民健康管理センターについては、「最大の目的は、子どもの保護者の不安解消であって、きめ細かな対応がない」と述べ、超音波スクリーニング検査に携わる技師が専門医ではない点、血液検査がない点や、検査結果の画像を被験者、保護者に渡さない点を指摘し、アリバイ工作的な検査であるとした。
また、国際放射線防護委員会(以下ICRP)の被曝の概念に公衆被曝、医療被曝、職業被曝の3種類がある点を解説した西尾氏は、医療被曝の線量限度が設定されてない問題を説明した。その上で、セシウムが、がん以外の疾病の要因になっている点や、放射性物質の遺伝的影響を伝えるルモンド紙を例に挙げながら、「線量限度のない医療被曝と、公衆被曝の限度を比較して、大きな影響はないと断定するのはおかしい。がん以外の障害の研究を軽視し、遺伝的影響や内部被曝を否定してきたICRPによって、世界基準の放射線防護基準が作られている」と述べて、ICRPの隠蔽体質を問題視した。
福島第一原発事故に起因する海洋汚染については、10年後にアメリカ西海岸が汚染されるシミュレーションを示し、「(放射能汚染水の放出は)人類に対する犯罪と言われている。海洋汚染も深刻で、食品からの内部被曝を検査する必要がある。また、日本の避難基準はチェルノブイリの4倍である。世界的に恥ずかしいことが起こっている」と述べた。
さまざまなデータを示しながら、放射線の影響を解説した西尾氏は、「今後、本格的に調査を行なって、本を書きたいと思っている。皆さんに知っていただきたい秘密や隠蔽されている情報がたくさんある」と語った。