2025年5月30日午前8時45分より、東京都千代田区の農林水産省にて、小泉進次郎農林水産大臣の記者会見が行われた。
冒頭、小泉大臣より、「令和6年度食料・農業・農村白書を本日公表」「農林水産分野における温室効果ガス(GHG)排出削減技術海外展開パッケージの策定」「日本産水産物の中国向け輸出再開に必要な技術的要件についての合意」「農林水産物食品の輸出拡大実行戦略の改定」の4つの事項について、報告があった。
- 令和6年度食料・農業・農村白書を本日公表(農林水産省、2025年5月30日)
- 「農林水産分野GHG排出削減技術海外展開パッケージ」策定!(通称:MIDORI∞INFINITY,ミドリ・インフィニティ)(農林水産省、2025年5月30日)
※日本産水産物の中国向け輸出再開に必要な技術的要件について合意しました(農林水産省、2025年5月30日)
続いて、小泉大臣と各社記者との質疑応答となった。他社の記者からの質問は、おおむね「コメ問題」についてのものだった。
IWJ記者は、かねてより小泉大臣が掲げる「農政改革」の具体的な内容について、次のように質問した。
IWJ記者「大臣が掲げておられる『農政改革』とは、具体的にどういう改革なのかについて、2点、質問します。
まずJA(農協)の改革ですが、これは、お父様である小泉純一郎元総理が掲げたような、構造改革的な発想の改革なのでしょうか?
郵政民営化と同じように、農協の民営化を果たし、最終的には『株式会社化』するというようなイメージ、理解でよろしいでしょうか?
また、その場合、外資の参入も認めるのでしょうか?
もう1点、大臣は、かねてより、農地を集約化するということをおっしゃっていますが、そのためには、農地法などで定められた農地売買に係る制約を取り払う必要があります。
大臣は、個人・法人にかかわらず、外部からの参入を認め、また、農業従事者を外国人労働者へ開くなどして、大規模化を図るというお考えなのでしょうか?」
この質問に対して、小泉農水大臣は、以下の通り答弁した。
小泉大臣「まず、1点目の『農協を株式会社化するのか』というのは、まったくないです。
そして、この『農政改革』ということは何かというのは、まさに昨日(5月29日)、JAグループの山野(徹)会長など、幹部の皆さんとお会いをして、まずは、目の前、この米の価格の高騰を抑えていかなければ、農協の皆さんも心配をしている消費者の米離れを加速させかねないので、この、今、随意契約によって、安いお米をマーケットに流していくということは理解できる、その一致を見たと、そういうふうに、昨日、お話をした通りです。
なので、こういう状況になるとですね、みんな、だいたい、対立を演出したくなる。その方がわかりやすいし、たぶん、(記事が)読まれるんですよね。
なので、そういったことには、まったく私は思いはなく、純粋に、米の、まず、異常高騰を抑えたい。そういったことに、あらゆるプレーヤーと一緒になって、取り組みたいと思っております。
もしも、1点目について、そういうご懸念があるとしたら、まったくそんなことはありません。
そして、2点目。この大規模化とか、そういったことですけれども、これは、大規模化とか集約化、大区画化については、これは、今、与野党の皆さんから、理解を得ています。
『食料・農業・農村基本計画』の中に位置づけられている、その取り組みであって、そして、これから5年間で、集中的に構造転換を進めていこうと。
この方向性は、与野党一致なんですよね。なのでこれも、さまざまな、何でもそうなんですけど、不安を煽る方が、記事とか読まれるんですよね。
なので、そういったことは、ビジネスとしては理解をしますけれども、我々は、ビジネスじゃないので、しっかりと農政、農業者、そして日本農業の発展のために、純粋に喜んでいただけて、意欲を持って、将来に向けて、農業に営んでいただける、その政策の遂行に邁進していきたいと思います」
小泉大臣は、「『農協を株式会社化するのか』というのはまったくないです」と断言し、加えて、「不安をあおる方が記事とか読まれるんですよね」、「対立を演出したくなる。そのほうがわかりやすいし、たぶん、読まれるんですよね」と、メディア批判めいた答弁も行った。
しかし、農地の大規模化には、法人経営という手段が入り込む可能性がある。法人が外資に買われることは十分あり、土地をもたずに雇われる農業従事者として、少子化で、人手不足の現在、そしてこれからは、外国人労働者をあてにせざるをえなくなる。小泉大臣のメディアへの責任転嫁は、受け入れられるものではない。
今後も、小泉大臣のこの発言の帰結については、しっかりと監視していく必要がある。
会見の詳細については、全編動画を御覧いただきたい。