故ジャニー喜多川氏から性被害を受けた元ジャニーズJr.らが、性被害を受けても一定期間が過ぎると加害責任を問えなくなる「民事消滅時効」の撤廃を求めるシンポジウムを、2024年3月18日、東京都千代田区の衆議院第一議員会館で開催した。
主催は、性被害当事者や法律の専門家などで作る「子どもの性被害 時効にNO!」(以下「時効にNO!」)事務局。「時効にNO!」では、「民事消滅時効」を児童の性被害に適用させない特措法成立を目指すキャンペーンを開始した。シンポジウムは、これを周知するために開催された。また、「時効にNO!」では、このキャンペーンに関するクラウドファンディングを募っている。
「時効にNO!」共同代表を務める川上資人(よしひと)弁護士は、ジャニーズ性加害問題で、子供への性加害が長年放置されてきた理由を、「会社(旧ジャニーズ事務所)の法的責任が明らかにされないこと」とし、「その原因は時効の問題が大きい」と指摘した。川上弁護士は、「会社の責任を追及したいと相談されても、時効の問題を説明せざるを得ず、その時点で(被害者が)諦め、泣き寝入りしてしまう」と訴えた。
川上弁護士は、現在の民法では、「被害者が加害者を知っている場合、(被害から)3年または5年以内に加害者を訴えなければ(損害賠償の)権利が消滅し、加害者の責任を問えなくなる」と解説した。
この「消滅時効」の正当化の根拠とされるのは、「権利の上に眠る者は保護しない」「証拠の散逸による立証の困難」「永続した事実状態の尊重」という考え方だという。しかし、川上弁護士は「性被害に遭った子供は、権利の上に眠っていたのか?」「子供が性被害を受けたという事実状態を尊重するのか?」と真っ向から疑問を投げかけた。
その上で、米国で2022年に制定された、連邦管轄下で発生した児童性被害に時効を適用しない法律や、ニューヨーク州やドイツでの性被害の時効延長の動きを紹介した。日本でも子供の性被害には民事消滅時効を適用しない法律の制定が必要だと呼び掛けた。
続いて、松本克美・立命館大学法科大学院教授が「時効と正義」と題し、時効改革の目指すべき方向について、様々な事例を踏まえながら詳細に講演した。
次に性被害当事者の方々が、長年言い出せなかった自らの体験や思い、時効の問題等について語った。登壇者は、「時効にNO!」共同代表で元ジャニーズJr.の飯田恭平氏、15歳から19歳の時に中学の美術教師から性被害を受け、41歳で民事訴訟を起こした石田郁子氏、元ジャニーズJr.の長渡(ながと)康二氏、中村一也氏、二本樹顕理(にほんぎあきまさ)氏である。
続いて、石田郁子氏の訴訟を担当した小竹広子弁護士が、「裁判実務における時効の問題について」と題して講演した。
山井和則衆議院議員はじめ、国会議員による挨拶を挟んで、最後に前記の当事者全員が登壇して、「子どもの性被害 時効にNO!」キャンペーンへ向けた決意のメッセージを訴えた。
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