2023年8月3日、午後6時30分より、東京都千代田区のアキバシアターにて、映画『テレビ、沈黙。放送不可能。II』の完成披露試写、および、試写後のトークイベントが行なわれた。
トークイベントには、出演者の田原総一朗氏(ジャーナリスト)と小西洋之(立憲民主党 参院議員)、そして、金平茂紀氏(ジャーナリスト)、望月衣塑子氏(東京新聞記者)が登壇した。
この映画は、2015~16年、当時の安倍政権が高市早苗総務大臣の国会答弁を通じておこなった放送法の解釈変更と政権批判潰しの言論弾圧、そして、2023年3月2月、小西洋之参議院議員(立憲民主党)が、記者会見において、当時の安倍政権の陰謀を記録した総務省の内部文書を公表(※)するまでの出来事、そして、その裏側で、実際、何が起こっていたのかについて、非常にわかりやすく再構成したドキュメンタリーである。
トークイベントでは、登壇者それぞれが、問題の当事者として、この放送法にまつわる騒動について、意見を交わしあった。
以下、登壇者の印象的な発言を紹介したい。
望月氏「映画のワンシーンでも、『私たちは怒っています!』というあの会見(※)の場に、そういえば、当時、私も駆けつけて、小西さんはあの場にはいなかったんですけど、田原さんや金平さんや、亡くなった岸井(成格)さんたちが本当に声を上げてたのを覚えていて…。
あの時に、やっぱり私も、いくつになっても、この目の前にいる人たちのように声をあげなきゃなっていう覚悟はあったんですけど、あの時、今日のドキュメンタリーで出てた岸井さんとか皆さんが、本当にその同調圧力と忖度の中でメディアが萎縮してるっていうこと。
あの時にあれだけ言っていて、その後、安倍さん、菅さん、今は、岸田さんになりましたけれど、その後どうなったかってことを考えると、あの時よりもより広くメディアが萎縮してしまってるなというのが、私の思いです。
岸井さんがその後すぐ辞められて、国谷(裕子)さん、それから古舘(伊知郎)さん、3人が続々と辞められましたよね。いや、降板させられたと言っていいのかな。だから、今日はあの歴史を振り返って、小西さんに、あの時何があったかっていうのを紐解いていただいたんで、改めて私たちが向き合わなきゃいけないメディアの歴史を、こう、田原さんのツッコミとともに教えてもらえたな、というドキュメンタリーでした」。
金平氏「これ、ドキュメンタリーっていう形になってんですけど、『テレビ、沈黙。放送不可能』っていう話なんで、要するに、お前たちが悪いんだっていう風に、こう、名指しされてる映画みたいな形で見たんですけどね。
僕、正直に言いますよ。あれは放送できると思いますよ。これ、何一体びびってんですか? できますよ。できるんで、それがなぜできないかっていう。『やらない人間』がいるわけでしょ。放送をしようとしてる、つまり、放送局の人間とか放送の内容を決める人間が今日の内容を放送して何が悪いわけですか?
何も、だって、事実にもとづいたことを放送、やってるわけでね。あれ別に放送して何が悪いの?」
田原氏「あの時に高市早苗が、『悪の象徴』と言ったのはTBSの『サンデーモーニング』。こんなん作ってる局は潰せって言ったんだよね」。
金平氏「だから、これはつまり、なぜこういうふうなことで、『自分たちが放送できないのか』みたいなことを、僕らの間である種共有しちゃってるっていうところが問題なんで。出しちゃえばいいんですよ。こんなものは。出せるんです。出せる内容だし、これだって事実に基づいたこと言って、国会での答弁だって、出せばいいんだけど、出さないってことになってる」。
小西氏「あの、内部文書に当時の事実関係がですね。半年間にわたる解釈の改変のプロセスが克明に記録されてるんですけど、言い出しっぺと主導権を担ってたのは礒崎(陽輔)さん。(中略)
まあ、事実上、意向を受ける形で最後はやってるんですが、まあ、礒崎さんが考えて、で、高市さんの同意を取って、官邸側からゴーサインが出れば私はやりますと、そういうふうに官邸に伝えてください、と。(中略)
高市さんが、ああいう解釈の改変、絶対やっちゃいけないことですけどね。それに対しても慎重だったのかどうか、ちょっと、私の見立てとしては、やはり、あの、総務大臣ですから、実際、答弁をする当事者で、答弁した以上は、現にそうなりましたけど、あの田原さんや金平さん、皆さんから批判を受けるし、あるいは野党で国会で質問も受けるわけですから、その当事者・責任者としての『これって大丈夫なのか』というレベル…。(中略)
だから本来は、『何をあなた方をやろうとしてるんだ』と、官僚に対してですね。そして、礒崎さんに電話して、本来は、『うちの官僚を勝手に使うよう官邸に呼びつけて。あなたは放送担当でも何でもないでしょ?』と『何をやってるんだ』と怒るのが普通だと思うんですけども。
『安倍総理がやるんだったらやります』と言って、ものの見事に、渡された原稿、答弁を読み上げただけだと。(中略)
今日、この日があるのもですね、今、あの違法な放送法の解釈は撤回、全面撤回されてますから、そういう意味ではテレビの報道の自由が守られてるのは、私に文書を提供してくださった『本物の国家公務員』の方がいたからですね。
この映画「テレビ、沈黙。放送不可能。Ⅱ」は、2023年8月19日(土)の新宿 K’sシネマ、横浜シネマ ジャックアンドベティでの上映を皮切りに、その後、全国で順次公開予定である。また、K’sシネマでは、8月19日~25日の一週間、日替わりでゲストを招いて、「公開記念トークフェス」が開催される予定である。ぜひとも、足を運んでみていただきたい。
上映スケジュール等(テレビマンユニオンHP)
https://www.tvu.co.jp/movie/2023_housou_fukanou_movie02/
トークイベントの詳細については、ぜひ全編動画にてご確認ください。