2021年12月30日(月)、12時頃より、つくろい東京ファンド、反貧困ネットワークなど、複数の支援団体の共催で「年越し大人食堂2022(四谷)相談会」が東京の聖イグナチオ教会で行われた。
「年越し大人食堂2022(四谷)相談会」は、年末年始休業に伴う生活困窮者、野宿者の方、新型コロナの影響で仕事を失った方など、日常生活が厳しい方への食料・生活必需品の配布、及び生活相談である。
12時から開始される予定であったが、IWJ記者が会場に到着した11時頃には、すでに支援を求める方の約50mの長蛇の列ができていた。
支給されたものは、約400食のお弁当、カップラーメン、菓子類などの食料品だけでなく、子供用おむつ、生理用品といった日用品なども配布されていた。
IWJ記者は、名前など詳細を明かさないことを条件に、配布食料を受け取った男性に取材を行った。
IWJ「今日はどこから来ましたか」
男性「自転車で約1時間くらいかけて来ました。中央区からです」
IWJ「今日、大人食堂が行われることはどこでお知りになったんですか」
男性「昨日、池袋の中央公園でもありました。そこで、並んでいる時に紙をくれて、そこに今日ここでやることを知りました」
IWJ「今日、ここに来た目的はなんですか」
男性「ご飯をもらいに来ようと思って。お弁当とお菓子」
IWJ「他に貰えたらありがたいものはなんですか」
男性「温かいものなんかは、ほとんど口にしません。冷たいものばかり食べてるから慣れてますけど。温かいお茶とか出してくれれば、そういうのが一番ありがたいです」
IWJ「どのあたりで暮らしているんですか」
男性「渋谷の公園とか、芝の公園とかです。あちこち行きます。あんまり長くいると追い出されますから」
IWJ「一番生活に必要なものはなんですか」
男性「食べ物が無いのが一番こたえます」
IWJ「カップラーメンを貰ってると思うんですけど、お湯はどうしてるんでしょうか」
男性「コンビニに行って少しもらってます。暇なコンビニだと貰いづらいから、忙しそうなところを選んで行ってます。そうでもしないと手に入らないんです。
汚い(野宿者の)人がいるじゃないですか。汚くしているとお店にも入れないですよね。ああいう方達は可愛そうだと思います。温かいものが口に入らないですよね。私は毎日、体を拭いて洗って、靴下も毎日洗って、清潔にしていますから。図書館なんかに行って、毎日本を読みますから。
みかんなんかも、ビタミンだから皮ごと食べます。もったいないですから。栄養を取らないといけませんから」
男性「あと、女の(野宿者)の人は、あちこちにいるんですけど、荷物をいっぱい持って歩くんですよね」
IWJ「なんで、荷物を持って歩くんですか」
男性「やっぱり必要なんじゃないですか。我々は、いらないと思ったら、ポンと捨てるけど、(女の人は)キャリーバッグを持って歩いていますよね。荷物があるからここまで来れないわけですよね」
IWJ「明日は、どこか行く予定はあるんですか」
男性「炊き出しの予定だと、新宿の大久保公園に行きます。それが終わったら正月分も含めると足りないだろうから、次は他のところにいきます」
また、IWJ記者は、主催社の一つである一般社団法人「つくろいファンド東京」の代表理事である稲葉剛氏に取材を行った。
IWJ「今回、『年越し大人食堂2022(四谷)相談会』を開催する意義というのをどのように感じていらっしゃるか教えてください」
稲葉氏「コロナ禍で、私達、各地の生活困窮者支援団体は、緊急支援の活動を続けてきました。特に、年末年始の時期というのは、コロナ以前から、例年、日雇いの仕事などがなくなって、生活に困窮される、その時期だけ仕事がなくなって困窮される方も増える時期になります。
そこで、年末年始の期間に温かい食事を提供して『一緒に過ごそう』とメッセージを込め、各支援団体が集まって『年越し大人食堂2022(四谷)相談会』を行っているところです。
IWJ「今年で全体として何回目の取り組みになりますか」
稲葉氏「一番最初に『大人食堂』という名前で取り組み始めたのは2019年の年末からです。
そして1年前の年末年始、今年のゴールデンウィークに続いて今回4回目ということになります」
IWJ「今、仰られたように継続されている活動だと思いますが、これまでの活動を通して、来られる方の生活の状況というのはどうでしょうか」
稲葉氏「コロナ以前まで、2020年の春までは、ホームレス支援団体、生活困窮者支援団体の食糧支援の場に集まる方というのは、ほとんどが路上生活されている方、中高年の単身男性の方がほとんどでした。ところが昨年春以降は、コロナの影響で、飲食店などの仕事がなくなって失業された方が増えてきています。
特徴的なのは、若年層の相談が多いということ。10代・20代の方の相談が多いということと、女性の相談も増えてきています。あと、ご家族連れであったりとか、外国籍の方の相談も増えており、本当に支援を求めてこられる方が多様化しているということが言えるかと思います」
IWJ「昨今、特に女性の貧困の問題について、改善が必要だということが世間で言われていると思います。今回、女性の方の生活の相談というブースを設けていますが、女性に特化した専用の生活ブースと相談室を設けることの必要性をどのように感じてらっしゃいますか」
稲葉氏「コロナ禍で、飲食業など対人サービスの関連で働いてこられた方で、特に非正規の方が失業するというケースが増えています。そうした分野で女性の方が多いという特徴がありまして、女性相談に各団体が力を入れているところであります。
女性の方の相談の場合、経済的困窮だけではなく、DVの問題であったり、虐待の問題なども抱えていらっしゃる、そういう状況に直面されている方が多いです。ですので、よくプライバシーに配慮する必要があり、女性の専門相談員による個別の相談スペースを設け、そこで相談に乗っているという形になります」
IWJ「日本に住む外国人留学生、技能実習生の方が多くなって来ていると思います。特に、外国人の方々には言語の壁がありますが、その取り組みというのは行われているんでしょうか」
稲葉氏「この間、私達生活困窮者支援団体は、もともと国内で外国人の支援をされているNPOの方々との連携を強化しております。今日の相談会にも外国人を支援をされている専門のNPOの方にも来ていただいて、連携して支援を行っているところです」
IWJ「まだまだコロナ禍は続いており、派遣社員の方でクビを切られたということだったり、苦しい状況が続いていると思います。今後、日本政府がやっていくこととして、何が必要か教えてください。
稲葉氏「私達この間ずっと、昨年の春以降、社会の底が抜けていると、生活困窮支援の現場は、野戦病院のような状況が続いているというふうに訴え続けてまいりました。その状況がもう20カ月以上続いているわけですけれども、残念ながら、政府からは、公的な支援を強化するというような政策を明確に出されていないという状況にあります。民間任せの姿勢というのが目立つような状況には大変憂慮しております。
私達、民間の支援団体は公助の防波堤となるために頑張っているわけではないので、やはり公的な責任において貧困状態に陥った人達の支援を強化する、住宅の支援も含めて生活支援を強化する、ということを政府として打ち出してもらいたいと思います」。
次にIWJ記者は、会場でボランティアを行っていた日本共産党・田村智子参議院議員に取材を行った。
IWJ「今回、参加されての感想と印象を教えてください」
田村議員「今日、朝の袋詰めからやったんですけど、まず本当にボランティアの皆さんが、若い方を中心に、本当に一生懸命取り組んでおられることがとても印象的でした。
この2年近く続くコロナのもとで、『支援をみんなでやらなきゃいけない』という思いが広がっていることを何より感じているところです。
そして、来られる方は、いろんな食料支援の所を回っていると思える方もいらっしゃいます。『今回は衣類は置いてないんですか』と言われる方、『大人用の紙パンツはないんですか』という声を聞きますと、当たり前の衣食住が失われている現状が相当広くにあるのではないか、ということを改めて感じます。
今回の女性の皆さん用に生理用品とかも置いてるんですけども、『夜用はないんですか』という声は、女性ならではでよくわかります。
本当に、当たり前の暮らしが奪われている層が、非常に広がっているんじゃないかってことを、とても危惧しています」
IWJ「コロナが始まって約2年が経ちました。今は比較的落ち着いていると思いいますが、まだ、コロナの影響を感じる部分はありましたか」
田村議員「感じます。それは感じます。ここの相談会だけじゃなくて、何カ所か相談会にボランティアとして参加させてもらっているんですけど、一つは、非正規で働いている方、あるいは最低賃金ぎりぎりのところで働いている方は、(生活)相談として来ても、実際には食料をいっぱい詰めてお帰りになったりとか。
そういうのを見ると、長引いている中で仕事が戻ってきてない。お客さんが戻ってきてない。時給が低いままだったら生活が良くなるわけがないですから、この状況は相当広くあるんじゃないかということを感じています。
もう1つは、心が苦しくなってしまっています。人との繋がりがなくなっていますから。その孤独の中にある方は、こういうところに出てこられない方もいるんじゃないか、ということを考えると、こちらから出かけるような支援策というのを、もっとやっていかないといけないと、感じてます」
IWJ「男性の方は、比較的身軽で、年末年始にあっちもこっちと、上手く(食料配布に)回ることができるんですけども、女性の方は荷物を抱えてしまって、行動の範囲っていうのがあまり広くありません。
このような会を開催してもここまで来ることができない、ということもあると思います。支援を必要とする人を拾えていないという現状についてどのように考えてますか」
田村議員「これは本当にボランティアや、市民団体の皆さんが一生懸命この間に、ずっと長年、リーマンショック以来くらいから取り組まれています。
それ自体とても大切なんだけれども、私はこの秋に上映されていた『ボストン市庁舎』、ボストン市っていうのは、市役所で炊き出しやって、市長さんが、『困っていることがあったら私に連絡してくれ』と言うし、市の職員の皆さんに『あなたたちの専門性を生かしてほしいと、その専門性というのは市民の困りごとに応えるっていう専門性なんだ』(とも言っています。)やっぱり、自治体、区役所、市役所に行けば相談に乗ってもらえる、本当に飢えて苦しかったら温かいものを食べさせてもらえる、というぐらいの取り組みが今、必要なんじゃないかなということを感じてます」
IWJ「最近、女性のための専用ブースを設けたりと、特に今年になってからその必要性が訴えられて、各地でも設けられるようになったというのが印象にあります。女性専用ブースを設けるということの重要性と、あと今後の課題というのを教えてください」
田村議員「今年は、『生理の貧困』を若い女性の皆さんが運動してくれたことで、確かに生理用品1つ買うことができない、ということのみじめさ、つらさ、そこに結構光当たって、『そうだよね。食料だけじゃなくて生理用品も配らなくてはいけない』『女性の皆さん抱えている苦しみにもっと応えなきゃいけない』って運動がすごく発展してきたように思います。
その深刻な実態が、安心して話せるということなんかがあると思います。だから、もっと女性が安心して相談ができるという、そういうような場が広まっていかなくてはいけないということを私も感じてます」
IWJ「今、留学生、実習生など、外国人の方々が日本に多くいると思うんですけれども、今日は外国人の方々の姿はみられましたか」
田村議員「今回そんなに多く私は、見かけていません。しかし、これは、不法滞在にされてしまった方々、日本の場合って不法入国ってほとんどないはずなんですよ。みんな何らかの働いたり技能実習だったり留学生だったりで、正規に入ってこられる。ところが途中でいろいろなトラブルに遭って、不法滞在になってしまう。そうなったら働けないし、まるで留置所のようなところに入れられる。そんな対処しかしないという、この日本の政治の貧困さ。
なかなか外国の方が、ここに相談に来るというのは勇気がいるんですよ。相談の場に行くことさえもハードルがあるということが実態としてあるとおもいます。それが一層深刻になってはしないかなということは思います」
IWJ「コロナ禍、まだ続いていると思います。生活の支援を求める人はまだまだ多いと思います。政府・国が今後やっていかなきゃいけないことを教えてください」
田村議員「コロナの危機はまだ続いています。どんどん縮小してるんですよ、事実上支援策っていうのは。
緊急事態宣言の1回目で出された時、何の支援もないまま緊急事態宣言をやり、自己責任を押し付けたというのが政治にあり、まだそれは残っていると思います。
だからこういうコロナ危機を経たからこそ、命と暮らしを守ることに政治の最大の責任があるということを明確にして、国の政治ももっと生活保護費ももっとどんどん繋げるし、お金を貸すだけじゃなくて生活再建がより早くできるための支援策というのを、もっと真剣に具体化していくことが求められていると思います」
コロナ禍によって「女性の貧困」が可視化されたが、世代や性別を超えて日本社会に貧困が拡大している実態が明らかになった「年越し大人食堂2022(四谷)」であった。
詳しくはぜひ、全編動画を御覧ください。