過労死したNHK記者の母・佐戸恵美子さんが悲痛の訴え「二百時間を超える時間外労働で命を落としたかと思うと、私は込み上げてくる怒りを抑えることができません」~AEQUITAS 新宿アルタ前大街宣 2018.3.17

記事公開日:2018.3.18取材地: テキスト動画
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(取材:須原拓磨 文:原力雄)

緊急特集 高度プロフェッショナル制度の異次元の危険性!
※2018年3月24日、テキストを追加しました。

 2018年3月17日午後、安倍政権が進める「働き方改革」の高度プロフェッショナル(高プロ)制度に反対する「すべての働く人たちのための新宿アルタ前緊急大街宣」(エキタス主催)が新宿駅東口で行われた。この中で、2013年7月24日に過労死したNHK記者・佐戸未和さんの母である佐戸恵美子さんが「私たちと同じ苦しみを背負う人が現れることのないよう、働く人の命と健康を守る法律を作っていただきたい。どうぞ皆さん、生きることのできなかった未和の分まで、あなたが生き抜いて下さい」と悲痛な心情を吐露した。

 街宣車の前には大勢の若者たちが詰めかけ、DJが流す音楽に合わせて「残業代ゼロ法案いらない!」「働いた分の金ぐらい払え!」などと過労死を助長しかねない高プロ制度への怒りを爆発させた。

▲新宿アルタ前に集まった人々。「働いた分の金くらい払え」とともに「アベノミクスはあなたを殺す」とのプラカードが。

 佐戸未和さんは、13年夏の都議選、参院選の取材報道で月間約200時間の残業を行った末、選挙直後に自宅で亡くなった。上司から連絡が入り、恵美子さんはブラジルのサンパウロから急遽帰国。放心状態のまま家にこもり、娘の遺骨を抱きながら、毎日娘の後を追って死ぬことばかり考えていたという。

 未和さんの勤務記録表を見せられた恵美子さんは、「こんなムチャな働き方をしていたのか」と驚いた。候補者や政党の取材、演説会、出口調査・街頭調査、局内では夜中の票読み会議や選挙情勢に関するテレビ報道・テレビ出演、当確判定業務など。土曜も日曜もなく、連日深夜まで働き、まともに睡眠を取っていなかった。

 亡くなる直前1ヶ月の時間外労働は209時間、その前月は188時間。同じ職場のベテラン男性記者たち3人が自民、民主、公明の各党を担当したのに対し、未和さんは「それ以外の政党すべて」と明らかに仕事量が多かった。恵美子さんは「記者は裁量労働で個人事業主のようなものと死後に上司から言われた。労働時間を自己管理できずに死んで行った未和が悪かったように聞こえました」と悔しさを打ち明けた。

<会員向け動画 特別公開中>

■ハイライト

■全編動画

  • スピーチ エキタスメンバー/上西充子氏(法政大学教授)/伊藤圭一氏(雇用共同アクションわたしの仕事8時間プロジェクト)/中村優介氏(日本労働弁護団事務局次長)/清水直子氏(プレカリアートユニオン執行委員長)/佐戸恵美子氏(東京過労死を考える家族の会)/中原のり子氏(東京過労死を考える家族の会)/吉良佳子氏(参議院議員、日本共産党)/小川敏夫氏(参議院議員、元法務大臣、民進党)/末松義規氏(衆議院議員、立憲民主党)
  • タイトル すべての働く人たちのための新宿アルタ前大街宣 〜高度プロフェショナル制度もやめろ!!〜
  • 日時 2018年3月17日(土)15:00〜
  • 場所 新宿駅東口アルタ前(東京都新宿区)
  • 主催 AEQUITAS(エキタス)

200時間を超える残業で過労死した未和さん 恵美子さんは「労務管理の怠慢による明らかな人災」と責任を追及 NHKは「法令違反してない」と主張するも、恵美子さん「過労死そのものが法の精神に反する」と一刀両断!

 200時間を超える残業で過労死した未和さん。恵美子さんは「労務管理の怠慢による明らかな人災」と責任を追及する。NHKは昨年10月に公表するまで過労死の事実を4年間も伏せてきた。遺族との話し合いでもNHKは「自分たちは法律に違反していない」と主張したが、恵美子さんは「過労死そのものが法の精神に反することは明白。NHKは本当に反省しているのか?」と疑問を投げかけた。

 聴衆に向かって「災害や事件で人の生死に関わるような取材活動に奔走した結果ならともかく、選挙報道で一刻一秒も早く当確を打ち出すために命を落としたかと思うと、私は込み上げてくる怒りを抑えることができません」と行き場のない無念をぶつける。鹿児島、東京とキャリアを積み上げてきた未和さんは、7月末には横浜へ移動して県庁キャップとして勤務し、9月には結婚する予定だった。

 恵美子さんは「一生懸命に働いた挙句、未来を失ってしまった。責任感やプライドがあれば、無理をしがち。しかし、体は正直で悲鳴を上げていたのでしょう。半身不随でも植物人間でもいいから、生きていて欲しかった」と熱く語りかけ、聴衆は言葉を失ったように耳を傾けていた。

▲佐戸恵美子さん

 高度プロフェッショナル(高プロ)制度は、労働基準法を改正して新たに設けようとしている働き方のこと。働き方を柔軟にすると言われるが、実態は「三六協定」(時間外・休日労働に関する協定)を結ばなくても時間外・休日労働を指示できるようになり、労働時間の上限もない。時間外・休日・深夜の割増賃金を支払う必要がなく、休憩を与える必要もない。つまり働かせ放題で別名「残業代ゼロ法案」と呼ばれ、裁量労働制以上に危険だ。裁量労働制の拡大については、厚労省が国会に提出した労働時間データの不適切さを指摘されたことから、政府は法案提出を断念。引き続き高プロ制度を導入しようとしている。

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 高プロは『成果で評価する』『脱時間給』などと、労働者にとってさも良いものであるように一部で報道されているが、街宣を主催したエキタスは「それは嘘。法案に書かれていることは、一定の条件さえ満たせば、経営者は労働者の残業代をゼロにできる、ただそれだけです。働く人にとってまさに恐怖の制度」と経団連など財界がなぜこれほど強力にプッシュしているかの理由をわかりやすく説明する。

 自分は年収が少ないから関係ないと考える人もいるかもしれないが、まずは「年収1075万円の人の残業代をゼロ」にすれば、その後で「年収400万円の人にまで残業代ゼロの対象を広げる」ことはいとも簡単だ。

上西法大教授「日本はILO(国際労働機関)条約の8時間労働制限を批准していない」!高プロの刃は我々に向けられている!

 一方で今回の街宣には、2018年2月21日に衆議院予算委員会の中央公聴会で公述人として意見陳述を行った上西充子法政大学教授も登壇し、「働き方改革は岩盤規制に穴を開ける良いものと世の中では思われているが、安倍総理のドリルの刃は私たちの方に向いている」と警鐘を鳴らした。

 データ問題については「平成25年度労働時間等総合実態調査がネット上に全部出ている。ここから都合よく計算して加工した。比較できるものでないことは見ればわかるのに、裁量労働制の方が労働時間が短くなると言って国民を騙そうとした。野党が追及してくれたおかげで、ようやく政府は裁量労働制の対象拡大を撤回したが、何の反省もしていない。高プロによって残業代を払わないで働かせられることを隠している」と危険性を強調した。

▲上西充子・法政大学教授

 さらに上西教授は、2018年3月7日に岩上安身が行ったインタビューの中で「日本はILO条約の8時間労働制限を批准していない」と重要な問題点を指摘している。

 ILO条約とは、国際労働機関が採択する労働条件、団結権、社会保障などに関する国際条約のこと。全部で189条約あるが、17年7月時点で日本は49条約しか批准していない。特に労働時間に関する日本の批准はゼロであり、建設・運輸なども含んだ工業的企業で働く人の労働時間を「1日8時間かつ1週48時間」に制限した第1号条約さえも批准されていない。

IWJが全労連に取材!布施国際局長は「財界の意向を受けた政府があまりに後ろ向きだ」!今こそ労働時間の国際基準導入を!

 労働時間に関係するILO条約(数え方によって17あるいは19条約とされる)が日本で批准されない現状について、IWJは全国労働組合総連合(全労連)に取材した。

 街宣現場の全労連スタッフにメールで回答を寄せた国際局長の布施恵輔氏は、「労働時間の国際基準に背を向けていることは明らかだ。日本は1919年に開催されたILO発足総会から参加し、1号条約では『例外とする国や地域』に指定されながらもまだ批准していない。日本はILOの常任理事国(重要産業国)になっているのに、米国と並んで国際的な労働規制に否定的な役割を果たしている」と深刻に受け止める。全労連では「中核条約や優先条約、パート労働条約などの重要な条約から直ちに批准すべき」と政府に要求している。

 ILOの基本原則は、労使と政府の間の健全な「三者構成主義」の実現だ。制裁や罰金などはないものの、ILO条約を批准すれば、国内の法制や職場の慣行などは変わっていくと思われる。

 今日でも新たにメンタルヘルスやハラスメント、グローバル化に対応した労働移動などの国際基準が求められているが、使用者グループは、そうした基準の創設には強硬に反対するケースが多いという。さらに布施局長は「日本経団連の代表がILO総会の場でも雇用区分による差別を正当化するなど、政府に新たな条約を批准をさせない姿勢は一貫している」と日本政府や財界の後ろ向きな態度を厳しく批判した。

 明治時代から続いてきた日本の特殊な労働慣行を変革し、働く人々の命と健康を守れる職場づくりのためにも、ILO条約を批准して国際基準を導入することが今、求められている。

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