日本大学理事長・加藤直人氏「日本大学は田中前理事長と永久に決別し、その影響力を排除いたします」‼~日本大学 記者会見 「今般の不祥事に伴う本学の対応と今後について」 2021.12.10

記事公開日:2021.12.12取材地: テキスト動画
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(取材・田上壮彌、文・六反田智恵)

 日大・田中英寿前理事長の逮捕の11日後にあたる、2021年12月10日、日本大学 記者会見 「今般の不祥事に伴う本学の対応と今後について」が東京都千代田区にある日本大学本部で行われた。

 まず、冒頭に日大の理事長兼学長である、加藤直人氏が「日本大学を代表するものとして、学生、先生方、保護者の方々に心よりおわびを申し上げます」と発言し、登壇者全員が頭を下げた。

 登壇者は、加藤学長のほか、渡邊武一郎副学長、長倉澄監事、熊谷信太郎弁護士という4名であった。

 その後、加藤学長は「このたび本学前理事長、田中英壽が所得税法違反で逮捕され、また前理事、井ノ口忠男が背任容疑で逮捕、起訴されるという前代未聞の出来事がございました」と切り出し、以下のように強い憤りを見せた。

 「日本大学、130年以上の歴史がございます。130年の歴史の中で理事長が逮捕されたというのは初めてでございます。先人が築かれた伝統ある日本大学が汚されたということに対して大変憤りを感じ、かつ恥ずかしく思っているところでございます。

 これも校友の方々に対しても、また先輩たちに対してもおわびを申し上げなきゃいけないというふうに思っている次第でございます。」

 続けて、加藤学長「重要なことを先に3点お話し申し上げます」と強調し、以下のように訴えた。

 「第1点です。日本大学は田中前理事長と永久に決別し、その影響力を排除いたします。今後一切、彼が日本大学の業務に携わることを許しません。ここに宣言いたします。また同人の役員報酬、賞与、退職慰労金については一切支給しないことといたします。

 第2点、今回の事案の舞台となった日本大学事業部について、精査の上、清算を視野に対応してまいります。

 第3点、外部有識者を中心とする日本大学再生会議を組織し、日本大学の将来について検討していただくことにいたします」。

 加藤学長はここで着座し、背任事件に関する調査結果について、およそ30分に渡って報告した。

 まず、「第1事件の日本大学医学部附属板橋病院等の建て替え計画を巡る背任に関わる事実関係」として、井ノ口忠男氏が入札において金額を操作、評価点、およびその集計表を改ざんするよう指示し、リベートを要求していたと報告した。

加藤学長「(井ノ口氏のしたことは)事業部取締役として忠実義務違反にも該当します。今後、損害賠償請求を視野に入れて対応してまいります」。

 「第2事件である医療機器と電子カルテの導入、調達を巡る背任行為」については、まだ調査中としながら、井ノ口氏が「医療機器等の使用料に本来介在させる必要のない籔本氏の会社を介在させ」たため、「籔本氏の会社が得る売買差益分が医療機器等の価格に上乗せ」され、「本学はその上乗せされた分を不必要に支払わなければならないことになった」と述べた。

 第3の事件である「田中前理事長に対する所得税法違反の容疑」については、現在捜査中であるため、(現時点では報告せず)最終報告書で述べる、とした。

 続いて、日本大学事業部株主総会で井ノ口忠男取締役の解任を決議し、10月18日に井ノ口氏から辞任願を受理したこと、11月29日に、田中英壽理事長(当時)が所得税法違反容疑で逮捕され、12月3日に理事の解任を決定したことなどが報告された。

 一連の事件から「本学における法人のガバナンスの有効性」が問われているとし、理事全員が辞任願を提出することを決定、「すでに全理事および法人監事が辞任届を提出」したと報告した。

 また、第1事件、第2事件については「大学として被害届の提出を決定し、12月6日に東京地方検察庁に被害届を提出」したと報告した。

 加藤学長は、大学として現時点で認識している一連の事件の主な原因を4点あげた。

 「1点目はアメリカンフットボール問題時、その行動が問題視され理事を辞任した井ノ口氏を日本大学事業部の取締役として迎えた上、事業部内の管理部門からの牽制がほとんど利かない状態で井ノ口氏が絶大な権限を持ち、事業部の運営ほぼ全てが井ノ口氏に任される状態であった」

 「第2点目は、日本大学事業部を管理監督すべき理事会において、その管理監督体制が十分ではなかった」

 「第3点目でございますが、コンプライアンスの十分な徹底がなされてこなかったと思われること、および残念ながら公益通報制度が積極的に利用されなかったことがある」

 「事件発生後の本学の対応として、適宜、適切な説明が十分にできていなかった」

 以上4点の原因への対応として、加藤学長は、株式会社日本大学事業部の生産、日本大学再生会議の設置を挙げ、「専横な支配を許さない体制および公共性の高い学校法人として説明責任を果たすことのできる体制の構築」をめざすとした。

 質疑応答では、「(加藤学長も)イエスマンとして『田中体制』を支えた1人であったのではないか」、「学生に対してどういったケアをしていくのか」、「加藤学長は一連の不正疑惑を知らなかったのか」、「なぜ大学側が主体的に田中前理事長を解任できなかったのか」、「なぜ田中前理事長の暴走を止めることができなかったのか」、「(今壇上にいる4名は)ちゃんこ店に行かれたことはあるのか」といった厳しい質問が相次いでなされた。

 月刊『FACTA』の宮嶋氏は、「加藤さんの会見、これ、臨んだとき、どれほどの危機感を持っているのか、よく分からない。それは日大に溜まった『膿』を本当に出し切る気があるのか」と切り込んだ。

宮嶋氏「私どもが日大の問題を取り上げたのは2012年。井ノ口が理事長相談役という名刺を持ってくると。これでうちの大学は大変なことになってる、助けてくれ、救ってくれっていうのがあるからやったんですよ。

 そうやって理事の皆さんもいたし、学部長の皆さんもいたし、頑張っていたんですよ。だけどそれを全部潰して、私どもは日大から2億4000万の訴訟を受けて。私は今でも警察の保護措置なんですよ」。

 日大の問題は、昨日今日の問題ではなく、2012年から9年も放置されていたのである。

 朝日新聞の記者が「いい大人が半分もいて、なぜ反対できなかったんでしょうか、すごい怖かったんでしょうか?」と問うと、加藤学長は「それはやはり、怖かったと。私自身はそういうあまり経験はありませんけども、ほかの方々については何かそういうことも、自己規制が働くようなことがあったのかもしれません」と回答した。

 田中前理事が日大の執行部を恐怖で支配していたことが窺われる一瞬であった。

 詳しくはぜひ、全編動画を御覧いただきたい。

 IWJ編集部も、日大の問題を以下にまとめているので、あわせてお読みいただきたい。

■全編動画

  • 日時 2021年12月10日(金)18:00~
  • 場所 日本大学会館(本部)2階大講堂(東京都千代田区)
  • 出席予定者 加藤直人 理事長・学長、渡邊武一郎 危機対策本部長・副学長、長倉澄 監事、熊谷信太郎 弁護士

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