10月31日午後8時から、立憲民主党の開票センターが、東京都港区の東京プリンスホテルに開設された。IWJはその模様を中継するとともに、午後11時半から行われた枝野幸男代表の記者会見で、IWJの記者が、改憲勢力が改憲発議可能な3分の2議席を獲得する可能性を示して、憲法改正について質問した。
投票が締め切られた午後8時から長妻昭副代表・選挙対策委員長代行が、午後9時から福山哲郎幹事長が、開票センターの壇上より中継で各テレビ局、ラジオ局の番組に出演した。
長妻副代表は各番組で共通して、「こんなに予想のつかない選挙は初めてだ」と説明。しかし、立憲の新人・吉田晴美氏が自民党の石原伸晃元幹事長を破った東京8区を例に、「2017年の衆院選では野党が食い合ったが、今回の野党共闘は一騎打ちの構造を作れたため、成果は出ている」と評価した。
福山幹事長は、東京8区で、れいわ新選組の山本太郎代表が当初出馬意向を示して混乱が起きたことについて聞かれると、「最初は野党間で詰め不足はあったが、その後は山本代表とも十分やりとりし、応援にも来ていただいた」と説明。また今回、女性候補が20%以下だったことについて聞かれ、「来年の参院選では増やす」と述べた。
枝野幸男代表は、午後10時から各テレビ局、ラジオ局に中継で出演した。野党共闘に関しては、「共産党との関係について連合から心配の声をいただくことはあるが、選挙なので、個々の候補者については若干のフライングはあったが、党と党とはしっかり整理して、共有している部分と違う部分、ここまでは連携できる、ここからはできないと、連合の皆さんにもご理解いただけるやり方でできた」と説明した。
その後行われた質疑応答での、IWJと枝野代表のやりとりは、以下のとおりである。この時点ではまだ開票・集計が進んでおらず、自民・公明・維新の議席は、改憲発議を可能とする3分の2(310議席)に届いていなかったが、その後3分の2を超えた。
IWJ「改憲勢力の自民・公明・維新等の議席が、改憲発議を可能とする3分の2を超える可能性があります。
自民党は、立憲民主党が改正国民投票法の附則とした3年間のCM、ネット広告規制の検討規定は、発議を妨げないとしており、自民党改憲案発議の可能性が現実化しています。
野党が憲法審査会や本会議で抵抗に努めても、数の力で発議、国民投票が実施され、大量の改憲CMで民意が誘導される可能性があります。そうなれば、自民党改憲案の『緊急事態対応』すなわち『緊急事態条項』によって国会が空洞化され、内閣独裁体制が導かれる危険性は大いにあります。
立憲民主党は、こうした事態にどのような方法で対処されるおつもりでしょうか? 以前、枝野代表は弊社IWJ代表の岩上安身のインタビューで、改憲発議がなされた場合、『国民投票を前にして、全力で国民運動を起こす』とおっしゃっていました。そのお気持ちに変わりはないでしょうか」
これに対して枝野代表は、「まずは有料広告規制について、真摯な議論を求めていく」
とのみ答えた。
「現在の国民投票法は欠陥法だと思っています。与党の皆さんすら、有料広告規制が入ってないことについては、欠陥があるということを事実上認めている。欠陥法である国民投票法にもとづいた発議はできない、と思っておりますので、まずは有料広告規制について、真摯な議論を求めていく」
他社の質問では、ニコニコ動画の記者が、「政権を獲得した場合、共産党は閣外協力とのことだが、共産党の日米安保廃棄などの方針が変わらない中で、有権者は安心して立憲へ投票できたのか、疑問だ。参院選に向けて、共産党との選挙協力の継続性は?」と質問した。
これに対して、枝野代表は、「『閣外協力』でもない、『閣外からの協力』である。しかも20項目に限って、閣外からの協力をいただくということなので、日米安保や天皇制については、これは我々は我々の方針でやらせていただくということで、他党の皆さんにもご理解いただいている」と答えた。
同じくニコニコ動画の記者が、消費税減税について質問した。
ニコニコ動画「消費税減税について、朝日の世論調査で、10%の維持が5割を超えていた。一方で一時的でも下げる方がいいというのは、35%にとどまった。立憲が掲げた時限的な消費税5%減税は、選挙前は与党との明確な対立軸として、大きな武器になると思われたが、結果的にそうならなかったのではないか? 一方、立憲が掲げた金融所得課税の強化は、市場に与える影響への懸念の声が少なくなかった。この2点の投票行動への影響については?」
枝野代表「私は、1点目については、選挙の目玉だと言ったことは一度もない。後者については、そういう危惧があることは十分わかったうえで、自信をもって訴えさせていただいた。一部では批判はあったかもしれないが、街頭などの反応では、かなり強くご理解、ご支援いただいた」。
- 消費税率「10%維持」57%、「引き下げ」は35% 朝日世論調査(朝日新聞、2021年10月20日)