2021年秋の衆議院選挙の争点の一つは「政治とカネ」の問題である。中でも、2019年参院選での河井案里・克之夫妻による選挙買収事件の原資に、自民党が河井陣営に支給した1億5000万円が使われたとの疑惑は、安倍元総理や菅前総理、二階前幹事長らの関与が疑われ、注目される。
9月22日、自民党総裁選の最中に、自民党の柴山昌彦幹事長代理(当時、以下同)が、この1億5000万円は「買収事件の原資ではなかった」と発表した。
柴山氏は、1億5000万円のうち、1億2000万円について使途を説明した。この説明は、河井夫妻が訂正した収支報告書にもとづくもので依頼性に欠く点も問題だが、もっと問題なのは、残りの3000万円については使途不明のまま、という点である。買収事件では約2680万円が配られたとされ、この3000万円こそ買収の原資ではないかと疑われる。
岸田文雄総理は総裁選で、この問題の再調査や追及を行うことを否定した上、総理就任後の10月13日にも改めて、「1億5000万円が買収事件の原資ではない」との党見解を認め、再調査に対して否定的な考えを示した。
自浄能力がないどころか、自民党は党ぐるみで買収資金提供疑惑の隠蔽を図るつもりなのか? 衆院選を前に、このことが改めて浮き彫りになった。