2021年10月22日、東京・足立区の北千住駅前で、自由民主党の土田慎・衆議院議員候補(東京13区、「A」ランク)が街頭演説を行った。
土田氏は山東昭子・参議院議長の秘書官などを務めて、先に引退を表明した鴨下一郎・前衆議院議員の後を継ぐ形での立候補。
ここは、野党共闘が成立せず、対立候補として、立憲民主党の北條智彦候補、共産党の沢田真吾候補の2人が出馬した。全員が新人だ。
土田慎候補は、2021年8月4日に衆議院議員総選挙に立候補せず引退する意向を表明した鴨下一郎元環境大臣の後任として東京13区に自民党が送り込んだ若干30歳の候補である。鴨下元大臣の集票基盤を上手く引き継いだかたちだ。
ただし、時系列に支持率を見ると、土田候補は4月下旬の40.9%、8月下旬の37.9%、10月初旬の37.4%と、少しずつ落ちてきている。
とはいえ、立憲の北城智彦(キタジョウ トモヒコ)氏は21%。土田慎候補は、野党の2名の候補を支持率で引き離しており、やはりここでは、共闘が組めなかった野党側が苦戦している。
土田氏は演説で「足立区はエリアデザイン計画で、地域の大規模な開発計画がある」「私、土田慎と足立区自民党はスクラムを組んでどういう足立区を作って行きたいのか提示する構想がある」と述べて、自身と自民党が相変わらずの大規模開発、公共事業への利益誘導頼みであることが明らかとなった。
こうした土田候補の未熟さいい加減さを補うべく、自民党が応援弁士として投入したのが、さらにいい加減な大物、麻生太郎副総裁(福岡8区「A」ランク)である。
「若干30歳、俺の半分以下だよ。こうした若い人を時間をかけて育ててゆくのが政権政党としての責任だと考えています」と麻生副総裁は言うが、土田候補のスピーチから分かるのは、やりたいことややるべきことがあるのではなく、ただ単に、自民党政治家になって権力を手にして利権にありつきたいという欲望だけ。
そういう欲望を持った若い人を、大企業とお金持ちの代理人として、育てて利用するというのが、麻生副総裁の言う政権政党の責任ということではないか。
麻生副総裁は、今回の選挙を次のように述べている。
「総選挙、総選挙と言いますが、なぜ、衆議院だけ総選挙なんですか。参議院はなんで総選挙と言わない? 同じ国政選挙ですが、参議院は通常選挙という。衆議院は政権選択をする選挙なんです。参議院で勝っても政権が取れることはありません。衆議院で勝たなければ政権は取れません」
ここにも、「政権選択選挙」というキーワードが出てくる。しかし、2017年に圧勝した前回の衆議院選挙のときには、「政権選択選挙」と自民党は強調していなかった。当時の安倍晋三総裁が強調したのは「この国を守り抜く」であった。
さまざまな予想で、今回の選挙で自民党は大きく議席を減らすという予想が出ている。麻生副総裁の言葉は、野党連合が成立し、接戦になっている選挙区が激増した現実に対する危機感を反映しているのではないか。