2021年7月19日(月)11時より、東京都千代田区の衆議院第2議員会館で、原発事故被害者団体連絡会(ひだんれん)、伊方原発広島裁判原告団による、広島県、広島市、厚生労働省への「黒い雨」訴訟最高裁上告断念の申入れが行われた。
1945年8月6日、アメリカ軍による原爆投下直後に、広島では広範囲に放射性物質を含む「黒い雨」が降った。「黒い雨」は健康被害をもたらすとされ、これまでに、1時間以上「黒い雨」が降り続いた「区域」でがんなどの健康被害にかかった人を、国は「被爆者」として認定してきた経緯がある。
しかし、訴訟を起こした住民84人は「黒い雨」を浴び、健康被害を受けたにも関わらず、被爆当時その「区域」外にいたという理由で、被爆者として認定されていなかった。そこで、国に被爆者として認定するように裁判を起こしていた。
第一審の広島地裁では、「黒い雨」が広範囲で降ったことを「確実に認めることができる」として、84人全員が被爆者にあたると結論づけていた。
7月14日、二審の広島高裁でも、全員を「被爆者」として認定した広島地裁の決定を支持し、広島市と広島県の控訴を棄却した。
- 黒い雨訴訟、二審も幅広く被爆者認める 原告84人全員(朝日新聞デジタル、2021年7月14日)
今回のひだんれんと伊方原発広島裁判原告団の申し入れは、7月14日の広島高裁の判決を受けて、訴訟を起こした84人全員を被爆者として認めた一審と二審の判決を支持し、上告を断念するよう厚労省、広島県、広島市へ働きかけるものであった。
冒頭、原告側の代表者は、「申し入れ」の内容と「理由」を読み上げた上で、厚生労働省の役人と申入書の手交を行った。
原告団の一人は、16日に広島市長と広島県知事(副知事が代理で上京)が、田村憲久厚生労働大臣に直接、上告はしたくないので、上告断念の申し入れを行っていたことを明らかにした。その上で、16日の広島県と広島市の申し入れを受けて、厚生労働省の現在の考え方を質した。
厚労省の担当者は質問に対して、田村大臣の発言として「判決の内容を精査して、関係省庁、広島県、広島市と協議して対応してまいります」と述べるに留めた。
原告団の別の一人は、「広島市も県も『上告しないでほしい』という意向をお伝えしているわけですよね。ぜひ、重く受け止めてほしい」と述べた上で、「もう14人ですか、原告の方が亡くなったのは。去年の9月以降、1年もしない間に2名も亡くなってるんですよ。被爆者に残された時間は多くないです。被害の実相に照らして、被爆者に光を当てて欲しい」と発言し、一刻も早く被爆者として認定し、救済するよう国側に求めた。