2021年2月6日(土)午後3時、この日から2月14日(日)までの期間で開催される「オリンピック終息宣言展2021『私たちはオリンピックの終息を宣言する』」の取材のため、IWJ記者は、東京都新宿区矢来町の「神楽坂セッションハウス」をおとずれた。
この展覧会は、文化庁「文化芸術・スポーツ活動の継続支援事業」の助成を受けて開催されたものであるが、「政府の助成金を受けつつ、政府の政策に抗うイベントを行う」という姿勢に、権力に屈することのないアーティストの矜持があらわれている。
会場には、東京大学東洋文化研究所教授・安富歩氏をはじめ、オリンピックおよび、そこから生まれるさまざまな問題に意識を持つアーティストたちの作品が展示され、在廊のアーティストから、その作品についての話を聞けるオープンな雰囲気に満たされていた。
IWJ記者は、折しも、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会会長で元総理大臣の森喜朗氏が女性差別的な発言をした直後だったということもあり、展覧会参加の20名のアーティスト中、当日在廊の3名の女性アーティスト(田島和子氏、阿部尊美氏、飯沼知寿子氏)に、それぞれの作品、そして、森氏の女性蔑視発言などについて話をうかがった。
また、この展覧会のコーディネーターであり、自身もアーティストである、戸山灰氏にも、展覧会開催の趣旨、そして、今後の活動などについて、語っていただいた。
戸山灰氏は、次のように語った。
「私たちの展覧会は、今、半分以上の参加作家が女性であるが、立ち上げたのは男性である私なので、『男性が立ち上げた展覧会』ということからは逃れられない。
だが、『女性が話し合いに加わると、時間がかかって仕様がない』などといった森(元総理)の発言を聞いて思うのは、やはり、益々、女性の発言権を確保するということに、男の側、男性の側から、取り組んでいかなければいけないということだ。
つまり、女性が困っているから、女性問題として扱われているが、実はこれは男性の問題、男性問題である。私自身も今まで四十何年、男性として生きてきたので、知らずしらず、加害行為を働いている可能性もある。元々が、下駄を履かせてもらって生きている部分がどうしてもあるだろうと思う」
また、飯沼知寿子さんは次のように語った。
「私は、『女性である』ということから始まる絵というものを描きたいと思って制作をしている。そして、『家父長制』ということが気になっていて、そのシステムを絵にたとえたらどうだろうと思った。
そして、『一点透視図法』という遠近法の技術があって、それを使って、『家父長制』というシステムを象徴させる事ができるのではないかと考えた。(中略)つまり、単一的な価値観に向かって、すべてが仕組まれている状態。そこからこぼれ落ちてしまうものが沢山あり、それをすくい上げることのできる表現を目指している」
実際の展示作品については、神楽坂の会場へ足を運んで御覧になって頂きたい。