11月半ば、米医薬品大手の「ファイザー」と「モデルナ」が、各々開発中の新型コロナワクチンの「高い治験結果」を矢継ぎ早に発表した。さらには、米欧の規制当局に対し、異例のスピードで「緊急使用/販売許可」申請を行った。コロナ対策の「劣等生」と揶揄される英国は、先鋒を切って国民への大規模接種の決定を下した。欧米各国政府は、ワクチンによるコロナ封じ込めを「切り札」のように喧伝するが、一方、多くの国で、ワクチンに不信感を抱き、接種を望まない国民が数多くいるという調査結果が出ている。
11月15日にわざわざ訪日して、約7ヶ月後に東京五輪を強行すると宣言した、国際オリンピック委員会のバッハ会長は、五輪参加者に対して接種を強く要望したがこうした「問答無用」の「ワクチン接種強要」ともいうべき動きに対し、選手たちから反発の声が出てきた。日本でも、陸上の女子1万メートル東京五輪代表の新谷仁美選手らが、「接種したくない」と明言している。コロナワクチンのスピード認可・接種の動きに、人々は安全性が担保されるのか、仮に副作用が出て、それが深刻だった場合、誰がどれだけの補償をしてくれるのか、といった点が曖昧である、という点に不安を抱いている。「ワクチンが開発されれば全て解決」するかのような、「ワクチン狂想曲」の行き着く先が、大規模な「人体実験」に帰結してしまうことのなきよう、願いを込めてお届けする!
「検査」と「移動制限」という防疫の基本を無視し、経済優先で「Go To キャンペーン」を強行し、人々を動き回らせて感染を拡大、さらには外国人を「ほぼノーチェック」で受け入れる東京五輪に前のめりの政府。「ワクチンがあれば全て解決」なのか!?
11月以降、日本のコロナ感染者が急増していることは、日刊IWJガイドでも連日のようにお伝えしている通りである。
エピデミック・パンデミックに際しては、網羅的な検査を通じて感染状況を正確に把握すること、および、ウイルスの運搬主体たる人の移動を制限することが基本である。
実際、岩上安身のインタビューにたびたび登場している矢吹晋氏も、近著『コロナ後の世界は中国一強か』(花伝社、2020年)で詳細に紹介しているとおり、中国が新型コロナ封じ込めに成功したのも人の移動の制限を迅速かつ徹底して行ったがゆえだった。欧州各国も、封じ込めには苦戦しているものの、「検査」と「移動制限」をベースに様々な策を模索している。
ところが、経済最優先、より正確に言えば財界の「オトモダチ」最優先の、安倍前政権と後継の菅現政権は、この二つの基本をどちらも行おうとしなかった。むしろ、「Go To キャンペーン」などという、人の移動を促進する、逆のベクトルの政策を強行したのである。秋の感染者急増と「Go To キャンペーン」との因果関係は明らかだ。にもかかわらず、日本政府は、この天下の愚策「Go To キャンペーン」を来年1月以降も継続する方針という。
▲国土交通省・観光庁 Go To トラベル事務局公式サイト 旅行者向けサイトのスクリーンショット
東京五輪開催にも、前のめりである。無観客試合等の感染拡大防止策を講じるどころか、政府は12月2日、外国人客を大規模に受け入れる方針を表明したと、日本経済新聞が同日付記事で報じた。外国人向けに売れたチケットは100万枚にもおよぶ。
日経によれば、「外国客のワクチン接種は出身国の判断に委ねる。日本側にウイルスの陰性証明書を提出して専用アプリを利用すれば入国後2週間の待機は不要で、制限なく行動できるようにする」、要はどこの国からも、「ほぼノーチェック」で入国させてしまい、その後の国内の「移動は自由」というのである。
ここでワクチン接種に言及されていることからもうかがえる通り、政府は、猛威をふるう新型コロナ感染症も、ワクチンさえ完成すれば事足れりと考えているふしがある。
新規感染者数がうなぎのぼりに増加していた11月16日、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が来日し、3日間にわたる東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会・国際オリンピック委員会(IOC)・国際パラリンピック委員会(IPC)の三者による、合同プロジェクトレビューを開催した。
- 3日間にわたるIOC・IPC合同プロジェクトレビュー終了…詳細な議論に高評価(公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会公式サイト、2020年11月18日)
朝日新聞11月16日付記事によれば、バッハ会長は「東京オリンピック・パラリンピックの開催を予定している2021年夏までに、新型コロナウイルスのワクチンが開発・普及しているという前提」で、次のように述べつつ、ワクチン接種を強く要請したという。
「各国のオリンピック委員会(NOC)を通してあらゆる努力や支援をしてもらい、選手や役員、関係者が訪日前にワクチンを接種することを働き掛けてほしい」
ところがこうした一方的な動きに、当事者である選手たちから「反対」の声があがった。
12月5日、女子1万メートルの新谷仁美選手をはじめ、陸上五輪の代表に内定した選手3名が記者会見し、コロナワクチンは受けたくないとする意思を、揃って表明したのである。
女子1万メートルの新谷仁美選手をはじめ、五輪内定選手3人が、ワクチン接種への懸念を表明! 言外ににじみ出る、安全性に対する不信感!!
12月4日、大阪・ヤンマースタジアム長居にて、第104回日本陸上競技選手権大会(長距離種目)が行われた。2020東京五輪における同種目日本代表選手選考競技会を兼ねた大会で、相澤晃(旭化成、男子10000m)、田中希実(豊田自動織機TC、女子5000m)、新谷仁美(積水化学、女子10000m)の3選手が日本代表選手に内定した。
▲長居陸上競技場(ヤンマースタジアム長居)(Wikipediaより)
3選手は翌12月5日、記者会見に臨み、五輪に臨む意気込みを語った。新型コロナワクチンを接種することへの不安、ひいては接種拒否の意思を表明したのは、この時である。時事通信の同日付記事が、3選手の言葉を次のように伝えている。
新谷仁美選手「個人的な意見だが正直、受けたくない。アスリートは結果と同じように体調管理を大事にしている。対策をしっかりした上で(五輪に)臨みたい」
田中希実選手「受ける、受けないはまだはっきり決めているわけではないが、アスリートとしては自分で体調を管理していくことが一番」
相沢晃選手「しっかり専門家の話を聞いて、どうするか決めていきたい」
時事通信は、これらのコメントが3選手の「ワクチン接種について副作用への懸念」を表すと評しているが、その通りであると思う。それはワクチンに対する無知や「わがまま」に発するものと、批判されるべきだろうか?
いや、そうは言えまい。
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