もはや日本は再生可能エネルギー後進国! 世界から遅れをとる一方!! 「容量市場」の導入は、旧電源と大手電力会社を守り、新電源と再可エネ拡大を阻害、一般家庭の電気料金は1万円アップ!? 菅総理は「行政改革」を唱える前に自身を筆頭に政治家と担当省庁の意識こそ改革を! 2020.9.17

記事公開日:2020.9.22取材地: テキスト動画
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(取材・文:六反田千恵)

 日本のエネルギー政策を再生可能エネルギー中心へと転換していくことは、喫緊の課題である。そう言われて何年が経っただろうか。鉱物資源の少ない日本にとって、石油や石炭、原発のためのウランなど輸入資源にいつまでもエネルギーを依存することは、国民生活の質から国家安全保障にまで関わる大きなリスクだ。

 しかし、一方で、日本は自然資源の宝庫である。太陽光、水、波、風、地熱、森林。どれをとっても非常に豊富なのだ。再生可能エネルギーという分野では、日本は世界有数の資源大国だといっても過言ではない。どうしてこの豊富な資源が十分に活かされていないのか。

 2020年9月17日14時から16時の間、参議院議員会館101会議室で、超党派議員連盟「原発ゼロ/再エネ100の会」が主催する「第85回 国会エネルギー調査会(準備会)日本でも電源選択の時〜再エネ100/24時間供給に向けた障害は?」が開催され、IWJも取材に行ってきた。

 「超党派議員連盟 原発ゼロの会」とは、休会中の河野太郎氏を除くと、共同代表を近藤昭一(衆・立憲民主)とし、世話人として長谷川岳氏(参・自民)、阿部知子氏(衆・立憲民主)、逢坂誠二氏(衆・立憲民主)、初鹿明博氏(衆・立憲民主)、山崎誠氏(衆・無所属)、真山勇一(参・立憲民主)、伊藤俊輔(衆・立憲民主)、笠井亮(衆・共産)、日吉雄太(衆・国民民主)、照屋寛徳(衆・社民)、柿澤未途(衆・無所属)の12名の世話人からなる団体である。

注意:IWJのほうで一部所属党名を2020年9月17日現在に改めた。

 17日の調査会には、事務局長である阿部知子議員が議長を務め、会場には現役の国会議員として、菅直人衆議院議員、嘉田由紀子参議院議員の2名が出席していた(両名とも中座)。

 しかし、自民党396名、公明党57名、合計453名もいる与党議員は一人もいない。いかに自公両党の与党議員の再生可能エネルギーに対する関心が低いか、あるいは「統制」されているのか、いずれにしてもその姿勢は一目瞭然であった。政治家の意識が変わらないと、再エネの拡大は望むべくもない。

 2011年の「3.11」の際に、日本の原発を停め、「日本は原発がなくても十分電気をまかなうことができる」ことを証明したのは、まさに菅直人総理(当時)であった。嘉田由紀子滋賀県知事(当時)も「卒原発」を掲げ、脱原発勢力の結集を図ったことがある。菅直人氏、嘉田氏が参加していることの重みを感じた。

 最初に、国会図書館経済産業調査室の萩原真由美氏から、インド政府が世界で初めて導入した、再生可能エネルギー24時間供給を要件とする入札方式についての調査報告があった。このようなレポートを聞くと、日本はエネルギー政策の面でも、もはや後進国としかいいようのない状態にあると痛感せざるをえない。

 続いて、環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也氏による問題提起があった。世界では、もはや、原発の発電力を太陽光も風力も追い越していること、2030年には太陽光が世界のエネルギーの32%を供給しているという予測、ドイツでは2050年には再生可能エネルギー100%をめざしていること、VRE(風力と太陽光)のコストが10年で7割減少し、風力は2011年に、太陽光は2013年に原子力発電のコストを下回っていることなどが示された。

 最後に飯田氏は、電力供給の安定化効果をもたらすとして導入されようとしている「容量市場」が、再エネにとっては「不公平・不公正」な歪みを持ち、このまま日本に導入されれば、再エネの拡大を阻む危険性があると指摘した。

 続いて原子力資料情報室事務局長の松久保肇氏から、この容量市場のメカニズムについて、解説があった。容量市場の市場規模は1.6兆円と推定され、古い電源や大手電力にとってインセンティブを与えるもので、新設電源や小規模電力にとっては著しく不利となるメカニズムであることを指摘した。

 そして、旧電源を保存する容量市場が導入されれば、電源の9割を旧電源を主体とする大手電力グループが所有し、月間電力使用が450kWhの一般家庭では年間負担金額が約1万円増加するという試算を示した。「電力の安定供給」は間違いなく重要である。しかし、それにかこつけて原子力発電を含む旧電源とそれらを保有する大手電力会社の権益を守るのはまったくいただけない。

 これらの報告と問題提起を受けて、経済産業省資源エネルギー庁、環境省職員とのディスカッションがあった。その中で、資源エネルギー省職員が「日本のように資源が少ない国は」と当たり前のように発言した。政策を進める側が、日本が豊富に持つ自然資源をまったくみていないのだ。政策担当者がこのような意識では、再生エネルギーは拡大することができないのではないか。もどかしい、の一言である。

 詳細は、動画をぜひご覧ください。

■ハイライト

  • 日時 2020年9月17日(木)14:00~16:00
  • 場所 参議院議員会館 会議室(東京都千代田区)
  • 主催 超党派「原発ゼロの会」改め「原発ゼロ/再エネ100の会」および国会エネ調(準備会)有識者チーム

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