刑事・司法・メディアぐるみの組合潰し労働弾圧! 警察・検察は正当な組合活動を犯罪として逮捕! 裁判所は不当な保釈条件をつけ、メディアは真実を伝えず!~8.21「関西生コン事件」国家賠償請求訴訟 記者会見・報告集会 2020.8.21

記事公開日:2020.10.24取材地: テキスト動画
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(取材・文:浜本信貴)

※2020年10月25日、リード追加しました。

 2020年8月21日(金)、午後2時30分より、全日本建設運用連帯労働組合の主催で、東京・千代田区永田町の厚労省記者会見室にて、「関西生コン事件」国家賠償請求訴訟についての記者会見が開催された。原告の組合員らとともに、評論家の佐高信氏、平和フォーラム共同代表の藤本泰成氏が登壇した。

 冒頭、国賠訴訟・弁護団の小川龍太郎弁護士より、このたびの国賠訴訟の主旨等、その概要について、次のように説明があった。

 「本日、第一回の期日だったが、提訴したのは今年の3月17日。内容としては、原告は『全日本建設運輸連帯労働組合』およびその『関西地区生コン支部』とその組合員3名、合計5名。そして、『国』、および『滋賀県』、『京都府』、『和歌山県』の4名を相手どって提訴した国家賠償訴訟である。

 本訴訟は、原告が、『正当適法な労働組合の活動を理由として、逮捕・勾留・起訴された、あるいは異常な保釈条件をつけられた』というもので、刑事手続きに名を借りた『組合つぶし』の責任追及をすることを目的としたものであり、実際の事件の内容よりも、警察により、『組合を脱退せよ』ということを主眼に取り調べが行われたことが問題である。

 また、警察だけでなく、検事も組合員の妻の携帯に電話をして、その組合員について『ストライキと聞いているかもしれないが、実際は悪いことをしている。家族として組合を辞めるように勧めるべきだ』などど発言している。

 長期勾留も行われており、これは恣意的勾留であると国連へも申し立てをしている。仮に保釈された場合でも、専従の組合員に対して、組合事務所に立ち寄ったり、組合員と接触することを禁じられるなどの保釈条件を課されている。

 この事件の一番の特徴は、これらのことが組織的に行われているということ。滋賀、和歌山、そして京都と、複数の都道府県をまたがって行われており、そこに国のなんらかの意思も働いていると思われ、一連の刑事弾圧であるとして、このたび提訴した次第である」

 続いて、国賠弁護団のひとり、太田健義(たけよし)弁護士がこの訴訟の背景について説明した。

 「この関西生コン事件の延べ逮捕者数が89名ということで、実に異様な組合つぶしであると言わざるを得ない。私も弁護士として23年目だが、こんな事件は見たことがない。

 もうひとつ、保釈条件がひどい。本日、原告の一人が意見陳述をしようとしたが、法廷で他の原告と会うのが危ないということで、その方だけが先に意見陳述して、その方が退廷したあとに、他の原告が意見陳述をした。

 そして、それをちゃんと記録してもらうようにしておかないと、なかなか安心して法廷に立てない。ここまで保釈条件が厳しく、それが組合活動を阻害しており、まともに活動もできない。裁判所も、よってたかって、組合の活動を制限しているというのが、この事件の端的な特徴であと言える」

 関西生コン支部執行委員長として、640日を超えて不当勾留された武建一(たけけんいち)氏、そして、関西生コン支部執行委員の西山直洋氏の二人も原告として登壇しており、代表して武氏が発言した。

 武氏は、開口一番、「今日は新聞記者のみなさんがおいでですけど、私の認識では、新聞記者をまったく信用しておりません」「物事の本質をしっかり伝えるような仕事をしているとは思わない」と指摘した。

 武氏は、「先ほど弁護士の先生方からあったように極めて異常な事態が関生弾圧の中で起きている。そのことを是非、発信してもらえれば幸いです」と訴えた。

 このあと、各社記者と登壇者との質疑応答が行われたが、その模様については、動画をご確認いただきたい。

 会見の最後に、国賠弁護団の小川龍太郎弁護士は、こう付け加えた。

 「当然、今回問題にしてるのは、刑事手続、捜査機関、裁判所の暴走ではあるが、ただ、それと同時に、報道いただきたいのは、そもそもの『労働運動』の正当性・適法性です。そこが、関西の一部では偏った報道がなされていて、『もともと違法な労働運動だった』かのように扱われている。が、そうではない。

 そこでポイントになるのは、『産業別労働組合』であるということで、日本の労働組合の中では特殊な形態ではあるが、当然、適法に認められた労働組合であり、適法な範囲で労働運動をしていた。それに対して、捜査機関・裁判所の違法な暴走があったということであり、そこを踏まえなければ、この問題の悪質性、および全体像は見えてこない。

 この訴訟は憲法28条(団結権・団体交渉権・団体行動権)の問題でもある。関生の活動が憲法で規定された範囲の活動であり、それに対して、攻撃がなされた。 それはまさに違憲であり、憲法訴訟であると考えている」

 記者会見終了後、東京都千代田区の連合会館2階の大会議室に場所を移し、午後6時半から、「関西生コン事件国賠訴訟第1回口頭弁論後報告集会」が開催された。

 まず、報告集会の主催である「関西生コンを支援する会」共同代表の藤本泰成さんによる冒頭の挨拶があり、藤本さんはその挨拶を次のように結んだ。

 「この場に来ていただいている(関生支部の)武委員長は、640日の勾留を越えて、本日の陳述でこう言いました。『自らの団結と民主主義を守るために、断固闘う』。共にがんばりましょう!」

 続いて、その武委員長本人が登壇し、640日に渡った勾留での経験、そして今後に向けての決意を非常に熱い口ぶりで語った。

 「皆さんのご支援のおかげで640日の勾留から開放された。おそらく、権力の側は、もっともっと長期に勾留したかったようです。彼らは、業界と我々組合員を脅すために、ある人には『あと7年間出さない』、また、ある人には『あと10年間出さない』と言いました。

 7年とか10年とか出さないなんて、よほどの重罪でも犯したのか? これは、私たちが『まともな労働運動をしている』という権力側からのお墨付きであると考えている。連中はもっともっと長期に勾留したかったのだと思う。それはなぜか? 関生型の労働運動、産業別労働組合を叩き潰すためです。

 抵抗する労働組合というのは残念ながらなくなってしまったが、我々の労働組合は、2010年に4ヶ月半のストライキを行い、大阪駅の北側の開発を完全に止めました。2017年には、SS(セメントの基地)を50数か所止め、運賃の引き上げを要求した。

 大阪と兵庫では、ヤメ検を中心に20数人の弁護団が編成され、そのストライキを『威力業務妨害』として事件化した。そして、この事件を利用し、滋賀県警が、すでに労使の合意によって成立しているものに対して、被害届を出させた。それも、被害届を出さないのであれば、その会社、もしくは協同組合の理事を逮捕すると脅した。つまり被疑者を作り出した…」

 武委員長は関生事件における権力側の不当労働行為について、そして、労働組合のあるべき姿について滔々と語った。武委員長のこのあとの発言内容については、動画で確認いただきたい。

 続いて、関西生コンを支援する会の共同代表の海渡雄一弁護士からの報告・挨拶があった。

 「関西生コンへの刑事弾圧は凄まじい弾圧であるが、それに対する『支援する会』を結成し、その共同代表として、裁判の傍聴などに行ったりしていたが、国賠訴訟を東京地裁でやるということになり、なかなかいい構想だと思い、国賠の弁護団を引き受け、本日、第一回期日が行われた。

 まずは、訴状の概要を是非読んでみて欲しい。刑事裁判では切り取られた全体の一部分が論じられるが、国賠訴訟では、この弾圧の構造そのものを明らかにすることができると考えている。

 我々が問題にしようとしているのは、『警察や検察が、正当な組合活動を犯罪行為だと決めつけている』ことであり、事件を細かくばらして不当逮捕・勾留を乱発する『逮捕勾留制度の悪用』です。

 そして、裁判所が『組合活動を禁止し、社会活動を規制するような保釈条件を決めている』こと。

 関西生コン支部は、生コンの輸送などに従事している業界を横断的に組織した産業別労働組合であるが、彼らは、そこで働く労働者だけでなく、自分たちのパートナーである中小企業を組織化し、協同組合をつくり、そこを交渉の母体にし、ゼネコンと交渉し、買い叩かれていた生コンの値段を上げていくことに成功した。そのことで、賃上げにも成功した。これは本当に画期的な労働運動の成果だと思う」

 この問題は、「闘う労働組合」がほぼ絶滅したかに見える日本の労働環境で、戦いに成功を収めた稀有な労働運動への権力側からの牽制であり、ひいては、企業別に分断された組合ではなく、業界を横断し、そこで働く労働者同士の『横の連帯』を可能とする『産業別労働組合』への弾圧でもあることは明らかである。

 千葉の船橋二和病院の労働組合による、ボーナス減額・労働条件悪化に反対するストライキや、24時間営業をめぐって、セブン-イレブン東大阪南上小阪店のオーナーであった松本実敏さんが本部と契約解除の撤回をもとめて大阪地裁で戦っている裁判など、多くはないが、現状に泣き寝入りをせずに戦っているケースがある。それらの戦いの経過を注視していきたい。

■ハイライト

  • タイトル 関西生コン事件国賠訴訟第1回口頭弁論後 記者会見・報告集会
  • 日時 2020年8月21日(金)14:30〜(記者会見)/18:30〜(報告集会)
  • 場所 厚生労働省(記者会見)/連合会館(報告集会)(東京都千代田区)
  • 主催 全日本建設運輸連帯労働組合(全日建)

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