下地真樹准教授ら市民の不当逮捕に抗議し即時釈放と謝罪を求める記者会見 2012.12.22

記事公開日:2012.12.22取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田/澤邉)

 2012年12月22日(土)14時から、大阪市立平野区民センターで、放射能拡散に反対する市民を支援する会が主催する「下地真樹氏(阪南大学准教授)ら市民の不当逮捕に抗議し即時釈放と謝罪を求める記者会見」が開かれた。

弁舌をふるったのは学生時代から下地氏を知るという朴勝俊氏(関西学院大学)、下地氏と同じ阪南大学の島浩二氏、抗議声明の呼び掛け人である成澤孝人氏(信州大学)、石川裕一郎氏(聖学院大学)、石埼学氏(龍谷大学)、山本太郎氏(俳優)。

・1/2 ※動画データ変換時のトラブルにより、動画開始後8分ごろ以降、音声に乱れがございます。

3分~ 朴氏/12分~ 石埼氏/22分~ 成澤氏/24分~ 石川氏/30分~ 島氏/38分~ 山本氏/45分~ 質疑応答

・2/2

質疑応答〔続き〕
  • 日時 2012年12月22日(土)14時
  • 場所 大阪市立平野区民センター(大阪府大阪市)

 スピーカーの大半が憲法学者ということもあり、会見では、下地氏逮捕の不当性を表現の自由に照らして訴える議論が随所でなされた。また「今後、同種の逮捕が頻発する恐れがある」との大いなる危惧が、石埼氏らによって異口同音に表明されている。

 朴氏は「下地君は昨年の福島原発事故が起こる前から、原発政策に批判的な立場だった。彼は正義感が強いタイプ。関西電力の大飯原発の再稼動にも反対していた」と発言。そして、下地氏が最も力を入れていたのが、震災がれきの広域処理というテーマだったと指摘し、「放射性物質を含む、あるいは焼却することで有害物質を発生させる恐れがある、東北地方からの震災がれきを(日本の各地が)受け入れることに対し、安全性のみならず経済性の見地からも、彼は強く反対していた」と続けた。

 下地氏は2012年10月17日、JR大阪駅付近で行ったがれき広域処理への抗議行動で、コンコースを駅職員の制止をきかず通過したなどとされ、およそ2カ月後の12月9日に、鉄道営業法違反・威力業務妨害・不退去の容疑で大阪府警に逮捕され、勾留が続いている。司会役の女性は「逮捕・交流に対する抗議声明の署名活動は、開始して1週間で8000筆を超えた」と説明。さらには「呼び掛け人に加わりたいとの申し出が主に大学関係者から、多く届いており、現在、呼び掛け人の数は92人に膨らんでいる」と明かし、下地氏らの逮捕への関心の高さが大学界で顕著であることを示した。

 呼び掛け人の1人である石埼氏は「下地氏らの逮捕に威力業務妨害の容疑がかかっている点に着目する必要がある」と述べた。「角材などを持っていれば話は別だが、この手の行為で、威力業務妨害の容疑で検挙された事例は過去にないと思う。これは私の見方だが、当日の行動を一体としてとらえ、それを威力と見なしているのではないか」。「人が集まること自体に力がある」と指摘する石埼氏は、「国家権力は、たとえ平穏な集会であっても人が集まることを恐れる。だからこそ日本国憲法はその21条1項で、集会の自由や結社の自由を保障しているのだ。人が集まること自体を危険視するというのは、憲法学者としては許しがたいこと」と断じた。

 さらに石埼氏は、1954年に最高裁判決が出た吉祥寺駅構内ビラ配布事件を紹介した。この事件は当時、伊藤正己判事が補足意見として「パブリックフォーラム論」を展開したことで有名になった。「公園や道路など、本来は表現の場として使われるものではないパブリックフォーラムが表現の場として使われる折は、表現の自由の保障に最大限配慮する必要がある」という考え方だ。石埼氏は「われわれ呼び掛け人は、伊藤氏の考え方が正しいという立場をとる」と表明した。

 成澤氏は抗議演説を行う下地氏の姿が映っている写真を掲げながら、「彼は、JRの敷地内で演説を行ったわけではない。実に疑わしい逮捕だ」とした上で、「何もしないで黙っていたら、いずれ私たちも同じ目に遭うのではないか」と話した。続いて石川氏は、「表現の自由を保障するということは、自分とは価値観が異なる人が話すことにも耳を傾けなければならないことを、私たち市民や権力者に要求するもの」とし、「自分にとって不都合なことを言っているという、それだけの理由で、権力者がその発言者を取り締まってはならない」と主張した。

 下地氏と同じ阪南大学勤務の島氏は、今回の事案で同大学当局がどう反応したかについて説明した。「下地さんの逮捕は9日夜の連絡で知った。それを受け、翌10日に、下地さんのご家族と朴さんを阪南大の経済学部長のところへ案内し、その次に学長と副学長のところへ案内し、会った全員に逮捕されたことを伝えた」。島氏は、その折の相手の淡々とした対応から「当局は事前に、下地さんが逮捕されることを把握していたに違いないとの勘が働いた」とし、下地氏逮捕直後に、学内に下地氏を支援する会を急きょ立ち上げたところ、「名前を出して下地さんを支援したいと表明したのは190人超の教職員のうち、20人余り。その半数以上が署名での支援活動に同意した」と明かした。

 島氏はその後、大学が6日の時点で危機管理対策本部を立ち上げたとの情報を入手したという。これについて島氏は、「なぜこの時期にこういうセクションが必要になるのかとの疑問を抱いた」と述べ、支援する会として大学当局に面談を申し込み、真意を尋ねたことに言及。「当局はよどみなく、6日に大阪府警公安3課の刑事らが大学にやってきて、8日に下地さんを逮捕すること、10日に研究室を捜索することが告げられたと示した」と語った。スピーチの後半で島氏は、目頭を押さえながら「失望」という言葉を口にした。

 質疑応答で記者から飛んだ「今回の逮捕は、下地氏以外の人は軽微な罪の容疑だったのか」との質問に対し、司会者は「威力業務妨害だった」と回答した。すると石埼氏が、「公安が威力業務妨害で検挙できる新たな発明をした」と言葉を重ね、2010年7月の参院選で、住民票のない日雇い労働者の投票支援の行動を起こした有志たちが、威力業務妨害の容疑で起訴され有罪になった釜ヶ崎大弾圧事件に言及した。「あの事件もマスコミは全然取り上げなかったが、同じ大阪で起こっている。抗議行動に対し威力業務妨害が通用する先例ができてしまったのだ。これは、ぜひとも阻止しないといけない。同種の逮捕が全国化する」と、語気を強めて危惧を語った。

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「下地真樹准教授ら市民の不当逮捕に抗議し即時釈放と謝罪を求める記者会見」への1件のフィードバック

  1. コイケタ七味 より:

    憲法研究者の語る、本来「威力業務妨害」とは、机の引き出しに動物の死骸を入れる、レストランの厨房に蛇をばらまく、などの行為ーーのくだりを聞いて、ひっくり返った。
    JR大阪駅構内とは言え、通行するのに通常、許可がいる場所ではない。
    そのコンコースを”歩いた”からといって、「威力業務妨害」で逮捕。
    常軌を逸していることが、鮮明に理解できる。
    また、阪南大学が事前に、同大准教授下地氏の「逮捕」について知らされていたという事実にも驚く。

    「逮捕」と聞けば、そりゃあ、怖い。
    いくらそれが『不当』だと説明されても、「それでも何かしたんでしょう?」とどこかで思う。
    そんな、刷り込まれている”常識”が、覆る動画です。
    これは、必見。
    非常にわかりやすく、切実で、リアル。
    そして、いかなる方法であれ反原発の意思表示をしている人にとっては、(恐ろしいことに)明日は我が身、かもしれないという現実。。

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