衆院会派「無所属の会」の野田佳彦前総理が、年明けにも立憲民主党会派に入る可能性が濃厚になってきた。「無所属の会」は12月10日の総会で、立憲民主党の会派に合流することを確認し、所属の13人の議員中、玄葉光一郎元外相以外の12人が立憲民主党会派に合流する方針だという。
- 野田前首相 立憲会派入りへ最終調整(毎日新聞、2018年12月18日)
立憲民主党の枝野幸男代表は10月15日、安倍晋三総理が消費税率を2019年10月に10%へ引き上げることを表明したことについて、「この段階でそれを決めることについて全く理解できません」と批判した。そうであれば、2019年10月の消費税増税にも賛成している野田氏が立憲民主党会派に合流することによって、立憲会派、立憲民主党の政策方針に矛盾をきたすことはないのか。
- 消費増税「この段階で決めることに全く理解できない。2度延期した状況と何も変わっていない」枝野代表(立憲民主党ホームページ、2018年10月15日)
- 「それでも本当に消費増税しかないんですか?」10%への引き上げの”立役者”、野田佳彦元首相を直撃!(週プレNEWS、2018年12月12日)
そこでIWJは、12月21日に開かれた枝野代表の定例記者会見にて、次のような質問をした。
「枝野代表は10月29日の衆院本会議で『消費税引き上げが可能な状況ではない』とおっしゃっていますが、野田佳彦前総理は消費税増税を決めた当事者です。
仮に野田氏が立憲会派への合流の意志があった場合、現在、野田氏が消費税増税についてどのように考えているのか、問いただすつもりはあるのでしょうか
また、枝野代表は、街頭で何度も『立憲民主党はあなたです!』と国民に訴えかけたはずですが、もし仮に、立憲民主党の支持者、サポーターが、野田前総理の会派入りに強く反対するようであれば、そうした反対の声に対し、どのように対応するつもりでしょうか?」
これに対し枝野代表は、「まず一点目ですが」と言いながら、次のように回答した。
「かつて消費税導入を決めた時の、当事者でいうと、私も当事者です。したがって、そのことを理由に一緒にやれないということはありえない。自己否定になりますから。
私も当時は、適切な判断だと思っていましたが、その判断の下で作ったものが、安倍政権の下で我々の想定どおりに運用されていない。そして、その後の経済状況や社会状況、税の使われ方、その他を考えたら、現状で(税率を)上げることはできない。そして消費税に依存した財政再建ではなくて、直接税の公平、公正を優先して議論すべきだと、私自身も意見を変えました。
こうした考え方を理解して、賛同していただけるのであれば、ぜひお加わりいただきたいと考えています」
枝野代表は2つめの質問には答えなかった。
2012年6月21日に野田総理のもとで民主党(当時)、自民党、公明党と三党間において、社会保障と税の一体改革に関する合意がなされた。この時に消費税増税が決められている。
さらに同年11月14日、国会で安倍自民党総裁との党首討論で、野田氏は議員定数削減実現を呼びかけ、確約を得られれば16日に衆議院を解散してもいいと明言。実際に衆議院を解散し、民主党は総選挙で大敗した。
まさに野田前総理が、民主党政権の崩壊、安倍自民党の政権復帰の最大の「功労者」であった。こうした経緯があるからこそ、野田氏の会派入りに対し、インターネット上では特に立憲民主党の支持者の間で反発が強い。にもかかわらず、12月21日の立憲民主党・枝野代表の会見で野田氏について質問したのはIWJだけだった。
IWJ代表・岩上安身は病床から12月19日、野田氏の会派入り報道を受けて、「これだけは許せない」と批判した。以下、19日の岩上のツイートの連投を、一部訂正して掲載する(※注)。
(※注)岩上は19日の連投ツイートで、野田氏の立憲民主党「会派入り」報道について、誤って「入党」と記していた。岩上は21日にツイッター上で、「『会派入り』のことを『入党』と表現していました。正しくは立憲民主党の会派入りです。訂正するとともに誤解を招いたことをお詫びいたします」と、お詫びと訂正をしている。以下の連投ツイートは、「入党」を「入会」に訂正した上で掲載した。
「国民民主党に前原氏が当たり前のように入党したことで、国民民主のイメージは決定的なものとなった。2度とこれは覆せない。同様に立憲民主が野田氏を迎え入れることで、立憲民主は致命的ダメージを負った。ただし、立憲民主党には、引き返す道がある。
枝野氏は、街頭で何度も『立憲民主党はあなただ!』と訴えた。この言葉が真実ならば、立憲民主の支持者は、野田氏の会派入り許可を撤回するように『主権者』として請願すべきであり、党執行部はその請願を受け入れて対処すべきである。
支持者の請願を党執行部が聞き入れたら、『党が人民の前衛に立つ』とする共産党のあり方よりもはるかに民主的と評判を得るかもしれない。だか、突っぱねようものならば、国民民主党と同類(前原氏と野田氏はまさに同類)であり、ここまで巧みに有権者を欺いてきたと、落胆と怒りは増幅されるだろう。
野田氏の会派入り許可という、こんな破壊的で自滅的な決断を下したのは誰なのか、まずは責任者を明らかにしてもらいたい。党執行部で要職を得ているならば、潔く退き、『主権者』たる党の支持者の声を聞いて、野田氏の会派入り許可を撤回してもらいたい。
もちろん、立憲民主党の支持者が、野田氏の会派入り取り消し署名を集めようとしないならば、つまりは野田氏の会派入りを是とするならば、それはそれで仕方がない。支持者も執行部も、安倍政権に『大政奉還』した野田民主党を肯定するようなもので、丸ごとそういう党なのだと思いなすしかない」
岩上は、消費税増税や安倍政権の税制の問題について、様々な分野の識者にインタビューを行ってきた。ぜひ、下記のインタビューをご覧いただきたい。
- 【大義なき解散総選挙6】「立ち直りかけては逆噴射する」アベノミクスと消費税増税がまねく「財政の落とし穴」とは ~岩上安身によるインタビュー 第369回 ゲスト 植草一秀氏 2013.11.15
- 【大義なき解散総選挙10】「財政で経済を潰す」に反転したアベノミクス 増税逆噴射で「日本の奈落」を招く財務省と安倍政権の狙いは ~岩上安身が政治経済学者・植草一秀氏に聞く〜 岩上安身によるインタビュー 第486回 ゲスト 政治経済学者・植草一秀氏 2014.11.25
- 租税特別措置による大企業優遇税制 その見返りに自民党へ政治献金!ツケは消費税増税!! 安倍政権の「歪んだ税制」で国が滅びる~岩上安身によるインタビュー 第652回 ゲスト 中央大学名誉教授・富岡幸雄氏 第2弾 2016.5.28
市民が聞きたいことを代弁したIWJ。
肝心なことに答えなかった枝野氏。
嫌な予感しかしない。
えっ!? 立憲民主党枝野幸男代表が消費増税の張本人・野田佳彦前総理の会派入りを歓迎!? IWJ記者の質問に「一緒にやれないということはありえない」!? ええっ!? https://iwj.co.jp/wj/open/archives/438023 … @iwakamiyasumi
https://twitter.com/55kurosuke/status/1076755015526604800