2018年12月17日、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)に対する、設置変更許可処分取消訴訟(川内原発行政訴訟)の第10回口頭弁論が福岡地裁で行われ、記者会見と報告集会を上杉記者が取材した。
2013年6月当時の原子力規制員会が「世界一厳しい」と豪語した「新基準」のもと、2015年8月11日には、川内原発1号機が、同年10月には2号機が再稼働した。
しかし川内原発は、鹿児島県の姶良(あいら)カルデラや熊本県の阿蘇カルデラなど、多くの活火山や巨大カルデラに囲まれ、世界的に見ても有数の「カルデラ密集地帯」に立地している。2016年6月10日、「世界で最も火山リスクが高い原発」に対する2014年9月の原子力規制委員会の設置変更許可は違法であるとして、鹿児島、熊本、福岡など10都県の33人が、国を相手に許可取り消しの行政訴訟を起こした。
- 鹿児島・川内原発 規制委許可取り消しを 10都県33人提訴(毎日新聞、2016年6月10日)
第10回目の口頭弁論となるこの日、12月17日には、弁護士による最終陳述が行われた。裁判が結審を迎えるということで、福岡、熊本や遠く鹿児島からも多くの原告および支援者が駆けつけた。裁判所に入廷する前の挨拶で、脱原発弁護団全国連絡会共同代表の海渡雄一弁護士が述べたように、これまで取り組まれてきた各地の訴訟において裁判所は「破局噴火のリスク」については、住民側の主張をほぼ認めてきている。
しかし、住民側の主張を認めながらも、「絶対的な安全性の確保」は「社会通念になっていない」、すなわち、「破局噴火の可能性を無視することは『社会通念上容認される』」として、2016年4月6日に福岡高裁宮崎支部は、川内原発仮処分即時抗告の申し立てを棄却した。福岡高裁宮崎支部によるこの不当決定以降、被告である国・原子力規制委員会は「社会通念」という言葉を濫用するようになったという。
なお、この日からほぼ1年前の2017年12月13日には、阿蘇カルデラから海をはさんで130キロメートルの距離に立地する伊方原発に対し、「火砕流が到達する可能性がじゅうぶん小さいと評価することはできない」として、広島高裁が運転差し止めの仮処分を命じている。川内原発の仮処分取消訴訟に取り組んで以来、火山の問題に没頭してきたという脱原発弁護団全国連絡会共同代表の海渡雄一弁護士が「ようやく妥当な、常識的な法律論が通った」と喜びをあらわにする記者会見は、下記記事をご覧いただきたい。
また、その直後には岩上安身が海渡弁護士へのインタビューを行なった。「火砕流は海を渡る」という衝撃の事実が海渡弁護士によって明らかにされた、この日のインタビューは下記記事をご覧いただきたい。
海を渡る火砕流の直撃を受ける可能性がある伊方原発に比べても、姶良(あいら)カルデラから直線距離にして50キロメートルしか離れていない川内原発が、非常に危険であることは、誰が見ても明らかだ。
口頭弁論後の記者会見で、海渡雄一弁護士、中野宏典弁護士、そして甫守(ほもり)一樹弁護士は、「社会通念」に対して裁判所がどう判断を下すかという点を除いては、「100パーセント、勝訴を確信している」と断言した。ただし本件は、3.11福島原発事故以降初めての、原発に関する行政訴訟であるため、「国の側も本気の裁判をしている」と、中野宏典弁護士は語った。
遠く鹿児島市から駆け付けた男性は、「国が社会通念、と言って原発を動かし続ける。世界的に恥ですよこれは!」と憤りをあらわにした。また鹿児島県川内市から来た女性は「社会通念、社会通念、っていうけど、私たちの社会通念は311で変わりました。もう原発はいらない、それが社会通念です」と力強く語った。
判決は2019年6月17日、福岡地裁で言い渡される。
今回、住民側が設置許可の取消を求めた川内原発に関しては、2016年にIWJが熊本大震災を取材した際、取材チームが現地取材を行っている。こちらの記事もぜひ、ご覧いただきたい。