熊本・大分地震、14日夜と16日未明は「どちらも本震」 中央構造線、そして南海トラフ地震との関連について「現在の科学では分からない」~東京大学地震研究所・纐纈一起教授に聞く 2016.4.21

記事公開日:2016.4.24取材地: テキスト
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(平山茂樹)

 4月14日夜と16日未明に起きた、最大震度7、マグニチュード7.3の「熊本地震」は、1週間が経過した現在も依然として震度5程度の余震が続いている。死者は48人、熊本県内の避難者は9万8000人に達するなど、今回の地震による被害は極めて甚大なものとなった。  気象庁は、4月14日夜の会見では、最初の地震を「本震」とし、その後に起きた地震を「余震」と位置づけていた。しかし、16日未明にマグニチュード7.3の地震が起きた後は、こちらを「本震」とし、14日夜の地震を「前震」であると訂正した。  

 しかし、地震学が専門で、東京大学地震研究所教授の纐纈一起(こうけつ かずき)氏は、14日夜と16日未明の2つの地震が、日奈久(ひなぐ)断層帯と布田川(ふたがわ)断層帯という別の断層帯で発生していることから、両者とも「本震」と考えるべきであり、気象庁の見方が混乱を引き起こしてしまったことは残念なことだと述べた。  

 では、2つの「本震」がたて続けに起きたのだとすると、今後さらに別の「本震」が起きることはあるのか。そして、今回の地震が、九州から本州を横断する日本最大の活断層「中央構造線」に波及する可能性はあるのか。纐纈氏に話を聞いた。

▲東京大学地震研究所教授・纐纈一起氏

▲九州の活断層と原発の立地図

  • 日時 2016年4月21日(木)17:00~
  • 場所 東京大学地震研究所1号館504号室(東京都文京区)

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4月14日夜と16日未明のふたつの地震、「どちらも『本震』」

――今月14日の夜に熊本県で震度7の激しい揺れを観測するマグニチュード6.5の地震が発生し、16日には熊本県や大分県で震度7や震度6強の激しい揺れを観測するマグニチュード7.3の地震が発生しました。  

 当初は14日の地震が「本震」だとされていましたが、現在では16日の地震が「本震」だとされています。この評価をどのようにご覧になっていらっしゃいますか。

纐纈氏「14日の地震は日奈久(ひなぐ)断層帯で発生して、16日の地震はそれとは別の布田川(ふたがわ)断層帯で発生していますので、両者は『前震』・『本震』という関係ではなく、あえて言えばどちらも『本震』だと考えています。本震がふたつあるので余震の数が非常に多くなったと考えることもできます」

――今回の地震は、震源地が移動し、最初の地震よりさらに大きな地震が起きるなどして、「想定外」「珍しい」などと言われていますが、こうしたことは地震を専門にされている方々の間でも本当に今まで想定「されていなかった」ことなのでしょうか。

纐纈氏「ある断層帯で起きた地震が、隣接する断層帯のより大きな地震を引き起こした、という例はこれまでなかったと思います。また、広範囲な地震活動ということでは2004年の中越地震がありますが、今回の地震の方が大分県などずっと遠方まで広がっています」

運転中の川内原発1・2号機への影響は? そして阿蘇山への影響は?

――政府は今回の震災を受けても、稼働中の川内原発を停止させようとしません。川内原発地域では震度3程度の揺れしか起こっておらず、その程度の揺れであれば問題ないということだそうですが、今後、川内原発の近くで大きな地震が起こることは考えられないのでしょうか。

纐纈氏「19日夕刻にM5.5の地震が、今回の地震活動域の南端付近で起きました。今後、さらに南側で大きな地震が起こるかどうかは、現状の科学では予測できない問題です。政府がこうした状況と、科学以外の要素も勘案して、責任を持って決断すべきことです」

――16日午前に阿蘇山が小規模噴火を起こしました。今回の地震は阿蘇山にどのような影響を与えているのでしょうか。

纐纈氏「地震活動域に近い阿蘇山には何らかの影響があるだろうと考えられており、その影響をとらえようと、全国の研究者が観測を行っているところです」

中央構造線、そして南海トラフ地震との関連は

――日奈久断層帯と布田側断層帯は、中央構造線の延長に位置しています。今回の地震に誘発され、中央構造線が大きく動くことも考えられるのでしょうか?

纐纈氏「現状の科学では分かりません。気象庁の見解に沿って考えていただくしかないと思います」

――今回の熊本地震が「南海トラフ地震」の「前兆」だという指摘もありますが。

纐纈氏「これも、現状の科学では分かりません。同じく、気象庁の見解に沿って考えていただくしかないと思います」

――これらの問題について、現在の科学では、分からないことである、ということでしょうか。

纐纈氏「そうです。勘のようなものはあるのですが、非常にクリティカルな問題ですので、勘で答えるわけにはいきません。基本的には、気象庁の言うことが公式見解ですから、それに沿って考えていただくしかありません」

――熊本、大分を中心とした余震は、今後もまだ続くのでしょうか。

纐纈氏「最新(取材日の22日)の気象庁の報道発表で、『熊本県から大分県にかけて活発な地震活動が続いています』としか言っていないので、まだ続くが見通しはわからない、ということだと思います」 

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