【岩上安身のツイ録】体調不良が好転せず、インタビュー強行を断念。岩上安身による矢部宏治氏インタビュー延期のお詫びとこのインタビューにかける思い…病床からのツイート50連投 2018.11.21

記事公開日:2018.11.21 テキスト
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 以下、岩上安身の11月20日のツイートを加筆・修正して掲載します。

 残念なお知らせがあります。明日午後2時半から、『知ってはいけない2〜日本の主権はこうして失われた』の著者である矢部宏治さんにインタビューする予定でしたが、いささか長引いている体調不良が好転せず、今夕も熱が上がってきてしまったので、明日、強行するのを断念することを決めました。

 期待していてくださった皆さんには、申し訳ない気持ちでいっぱいです。戦後の日本は、顕教では主権ある立憲主義国家、密教では軍事主権はまるごと米軍に引き渡した保護国という二重構造の密約国家になってきたことを追及してきたのが矢部さんです。

 矢部さんのお仕事は、多くの人に伝える必要があります。誇りを持ちたいと誰もが願う祖国日本が、みじめな対米隷従を続けてきたという無残な国だった、という事実を辛くても直視すること、そのためにも。

 そうした事実、現実を知れば、今、何が起きているかが、鮮明に見えてきます。なぜ、この10年か、数年の間に、大量のネトウヨ、在特会のようなレイシスト、歴史修正主義者らが大量にわいて出てきたのか、それらが、安倍政権という究極の売国・属国政権を支えている謎を解く鍵をも提供するからです。

 また、直近の未来を見通す視座も提供してくれます。この先は人それぞれ、問題関心領域によって意見が多様化するところでしょうが、安倍政権が目前の課題として取り組んでいるのは、危険な緊急事態条項を含んだ改憲です。この問題について、今、世間に油断が生じていることに危機感を強く持ちます。

 矢部さんが掘り下げた、戦後史の密約という、二重構造問題と、緊急事態条項による日本の傀儡独裁政権確立=米国の軍事属国化の完了というストーリーはつながります。顕密状態だった、戦後日本の矛盾に一つの解決を与える。それは主権を取り戻す方向ではなく、主権を完全に明け渡す方向です。

 憲法に規定されているこの国の主権者は誰でしょうか?有司専制を行う特権的官僚機構?天皇主権?いや、そうではなく国民主権です。米軍の軍事属国にするには、9条に代表される平和主義を壊すだけでなく、他の民主主義国家でも、共通の基盤として共有しているはずの国民主権を破壊する必要がある。

 そして、基本的人権も。この三つと、憲法は最高法規であり、外国との条約よりも上位に位置するという立憲主義の原理も、踏みにじる。それを短期間に強行できるのは、緊急事態宣言を発布して、全権を内閣に集め、まず、国会から立法権を奪う必要があります。国会こそは国民主権の象徴です。

 そして地方自治の権限も奪い、メディア統制を行う必要があります。国民すべての集会、言論、結社の自由も制限するのはもちろんです。全産業も、統制下に入り、戦時体制を構築します。

 苦しむのは、貧乏人だけではない、株高を演出してくれたというその程度の理由で安倍政権を支持していた小金持ちや財界からもしぼりあげるでしょう。何しろ日本は戦争のできるような財政状態ではない。しかし、米国・米軍とすれば、そんなことは知ったことじゃないわけです。

 日本が対中国との覇権闘争のある場面で、過激な鉄砲玉としてお役目をつとめてくれたならば、あとは知ったこっちゃない。けしかけたものは、必ず、「いやぁ、日本のこと、止めたんだけどねぇ、でも、どうしても自分でやるっていうから止めらんなくて」というに決まっている。

 米国メディアも世界のメディアも、各国の政府も、無謀な戦いをした場合、日本を擁護することはないでしょう。愚かにも、右傾化し米国のさらなる奴隷と化した日本政府も、改憲運動を進めている愚かな日本会議の連中も、米国隷従とエセ愛国の混ぜ物です。

 こういうハンパな極右を操り、最後にはそこに罪を着せることになる。日本は米国の属国として、米国による巻き添え的な形であっても、見かけ上、主権国家として中国との戦争に参戦した場合、一つの独立国として決断を下した責任を問われます。

 日本はどんな形で戦争を行なっても、中国にはまったく勝てません。通常戦力も、核戦力も、国力=経済力=工業生産力も、財政も、人口も、はるかに劣勢の日本には、何一つ今の中国に勝てる要素などなく、まして自国を核自爆に持ち込む原発を野ざらしにしているのですから、必ず敗戦します。

 ですから、絶対に破滅的な戦争に至らないようにすること、平和と信頼を築く努力を不断にし続けること、そして同時に、矢部さんが掘り起こしてきた戦後日本の出発点からある宿題、米国との密約による、日本の軍事主権が奪われている問題に早く多くの人が気づくことです。

 そしてさらには経済的主権から政治的主権にまで、侵食してきた厚かましい米国の不当な影響力の行使や工作にも、多くの人に気づいてもらいたい。TPPの問題など食料主権に関わる問題は、無関係ではありません。

 抗って、何度も「我々は米国の属国じゃない!」と主張し続けることです。「緊急事態条項ノー!」と叫ぶことです。「日本の主権を返せ!当たり前の友人になろう、米国よ!」「戦争はいらない、平和を!その選択を決める主権は日本国民のものだ!」と。

 Tシャツやステッカーやポスターなど、デザインで表現できる人は、ぜひしてほしい。音楽と言葉で表現できる詩人やソングライターやラッパーは歌にすべき時です。美術でも表現できるでしょう。

 やりたい人がいたら、協力を惜しみません。というか、すべての人に僕から協力をお願いしたいと思う次第です。でないと死ぬに死ねない。

 日米安保基軸という政治家を信用してはなりません。少なくとも日米安保体制の欺瞞が明らかになったこれからは!日米がイコールのつきあいでなければ同盟などノー!という意思をエリートも庶民もすべての人が持つべきであろうと思います。

 他国との友好と自国の自立・独立は、矛盾しません。誰か敵国を定めて、憎んだり警戒したりすると、モノホンの大人の国になれて、平和主義のお花畑から卒業できるというのは、ホンモノのバカの錯覚です。

 国家の独立とは、国際社会においては、他国からの承認を必要とします。他国から友好的で、危害を加えない国とみなされ、承認されないと、国家の独立は国際社会の中で、自分一国では果たせないのです。

 個人についても言えることですが、実は自立とは、他者への過剰な依存から脱却することから始まりつつも、その自立した人間は新たに自立した個人として他者との関係を結びなおし、他者からのあらためての承認を常に必要とします。

 自立した人間として、他者からの承認、リスペクトを得るために、自己を磨き、友好関係を築くという普遍的な成長と、国家が国際社会の中で他国の承認を受け、尊敬され、他国をも尊敬する位置を築くことは、重なり合う部分が非常に多いと思います。

 悲劇的な例が、虐待とか、暴力の加害当事者、被害当事者になることで、この自立と承認のメカニズムが狂ってしまうことです。日本は世界相手に戦争を繰り広げました。大和民族の優越性を狂信的に掲げて、本当に自分の姿を見失った愚劣な侵略戦争を明治から昭和20年まで続けてきました。

 この狂気から、日本人はまだ、完全には正気に返っていません。それどころか、安倍政権の面々や、同政権を支えて、改憲運動を展開する日本会議らは、心地よい狂気の幻想に浸りたがっている人の心を巧みに捉えています。思想的、倫理的、歴史的詐術を織り交ぜて。

 日本は米国に負けたが、中国には負けていない!と言い張る軍国おじさんは、僕の子供の頃には珍しいものではありませんでしたが、いずれ、こうした戦場のトラウマを背負った世代が退出した後は、アジアとの、次世代同士の和解が可能になっていくと素朴に夢見たものでした。

 しかし、そうはならなかった。日本のエリートたちは、核の二発の拳でKOされ、米軍のその軍事力には平伏しましたが、侵略国家である明治から昭和の大日本帝国を本気でその性根から叩き直して、正気に戻ろうとしていなかったのです。

 力負けした米国にだけは完全屈服しつつ、侵略した相手国には、心からのすまなかった、という謝罪や悔悟には至りませんでした。これは深刻な心理プロセスです。日本の心は、そして制度も、ここで分裂をきたしたのです。

 日本は、クラス中の仲間と自分勝手に喧嘩して、番長にだけはねじ伏せられて負け、その番長のいうことなら何でも聞く犬のごとき舎弟となって、他の旧友と真の和解をしようとしてこなかったのです。ここには、番長に忠義を尽くし、許されていれば、あとはどうでもいいのだという甘えが見て取れます。

 同時にここには、暴力を振るったあと見かけだけ優しく振る舞い、精神的な隷属を本人の自発意思であるかのように思い込ませる、DV男のごとき支配力の巧みさを見せた米国があり、それに応じて「日米関係はダンスパートナーだから上手に踊らなくては」という意識で日本のエリートは応じ続けたのです。

 「日米関係はダンスパートナー」とか、ひどい時には「日米関係は切っても切れない夫婦の関係」とか、よくまあ、そんな自己意識操作ができるものだな、共依存とはまさにこれだなという言葉を、僕は幻影の高級官僚や与党政治家らから、何度も聞いてきました。

 実際、冷戦時代はそれで安定して、実利も得られたのです。旨味があったのは、朝鮮特需が最初です。この共依存関係にもつれ込むことを米国が企図したのはまさに朝鮮戦争の時でした。

 僕は以来これは「朝鮮戦争レジーム」だとか、「戦後国体」だとか、唱えてきたのですが、矢部さんは僕の思いつきの域を出ないコピーどまりの言葉を聞いたときに、それを拾い上げて「朝鮮戦争レジーム」のメカニズムまで、共同研究をするジャーナリストや学者とともに詳しく掘り下げてきました。

 いずれにしても、そんな深層心理の抑圧や現実を見ようとせず、甘い、都合のよい幻想に逃げ込む、共依存関係は、長続きしません。米国が憎んできた共産主義は自ら自壊しました。共産主義の脅威など、もう存在しない。あるのは米国と同じ、新自由主義に侵された国々があるだけです。

 米国は「日本よ、素っ裸でいろよ、軍服を着るんじゃないぞ、いざとなったら俺が守ってやるし、それにほれ、お前のまわりは皆お前の敵だ。仲いいのは俺だけだ。いつでも俺が守ってやるし、俺のミリタリーコートを着せてやる。核の雨が降りそうな時は、核の傘をさしてやるからな」と囁いてきました。

 米国全体、米国の市民社会全体が、こんな気持ちの悪いことを日本に対して囁いてきた、というわけではありません。大多数の人は、日本という国に特別の関心もなく、自国の国防総省や国務省やCIAのような情報機関が、何をしているか、深い関心を払いません。

 それに米国人の彼らにとって、日本の奇妙なへつらいは理解しがたいものです。密約の縄で縛られて米国の奴隷を続けていましたと言ったら、あんたバカじゃないの?嫌だったら表に出て、堂々と交渉したらいいじゃないの、と喝を入れられるでしょう。

 そしてだって自立できないんだもんとベソをかいたら呆れられる。自立できない、という甘えを解いていけば、明治から昭和20年までの、凄まじいまでの暴虐の歴史に直面しなくてはならない。それをひたすら逃げている、という臆病に行き着きます。安倍も、麻生も、百田も、櫻井も、臆病者です。

 だが、心地よい日米共依存関係の時は終わりました。そもそもすべての前提であった、米国は番長であり、子分に大盤振舞いもできる羽振りの良さもありましたが今は影を潜めています。パックスアメリカーナという大前提が崩れているのです。

 ドイツも日本もソ連も、米国の覇権に挑戦しましたが敗れました。その理由は簡単です。国力=経済力が、どの挑戦者も覇権国である米国を上回ることはなかったからです。19世紀末に世界最大の経済大国になってから、100年余り不動の首位だった米国は、中国の再台頭によって脅かされています。

 米中関係は投資と生産と消費が互いに深く依存しており、そう簡単にバッサリと縁を切って、喧嘩する、ということのできる関係ではありません。だから、ついこの前までは、米中という二大大国が、G2として結託して世界を取り仕切るのだ、という解釈が流行っていました。

 しかし、両国の利害の不一致、というよりもやや高みに立って兄として弟に接する形でG2というパートナーを組むことをイメージしていたであろう米国は、購買力平価換算で米中のGDPが並んだ2014年、そしてその後も成長率の違いから中国に引き離され続ける現実を見て、相当のショックを受けています。

 平時の競争では勝てない。端的に面白くない。今のトランプが仕掛けている貿易戦争は過渡期の悪あがきですが、さらに軍事的に優位にあるうちに叩こうという動機が強まってきます。きな臭くなっているのは、その時の道具として日本を使うという選択肢が彼ら米軍部の中で現実味を帯びていることです。

 米国のまごうかたなき犬である安倍、麻生のワンツートップが、現実の地政学的、地形学的な政略も戦略も検討することなく、する頭もなく、祖父の岸信介がそうであったように、米国の要求を飲むので自分の権力を支援してくれ、と求めていないとは想像できない。

 その見返りに、日本をあなた方の戦争に加われる国になる、という取引をしていないとも、これまた、到底思えない。その結果、日本を滅ぼすことになるということに少しも思いがいってない。滅んだら滅んだで、その時々の占領軍のイヌになればいいと、祖父・岸信介を見習うつもりなのかもしれない。

 我々は、こんな異常な人格の持ち主に政権を託し、国の命運を決めさせることから、本気で脱却しなければならない。戦争はあってはならない。多くの命と財産と暮らしが奪われる。問題は、それだけにとどまらないかもしれない。

 幸いにして核の全面戦争を免れたとしても、第2の戦後も、占領者に利用されてイヌになり、自立ができないままに今以上に無様な事態が反復されるかもしれない。そうなったら、日本はもうおしまいである。

 現実を当たり前に認識して、正気を保ち、適切な解を、導き出すのが、知性ある人間の営みである。それができない人が、できる人を抑圧する社会。戦前も間違いなくそうだった。戦後も、ここに来てますます反知性主義が猛威を振るっている。

 覇権国の交代という今世紀最大のドラマも理解できず、自分が誰で自分の親や祖父の世代が何をして来たか、受け入れようとせず、誰に国まるごと利用されようとしているのかもわからないまま、目前の改憲の危険性さえ認知できず、回避の行動もとれなかったら、それは正真正銘のお馬鹿さんである。

 僕は圧倒的多数の人は、おバカさんではない、と信じている。が、事実、現実を当たり前に見る、直視する勇気がたりないとは思う。延期はしますが、必ず矢部宏治さんのインタビューはやりますので、ぜひ、ご覧になってください。発熱中のベットで、長々書いてしまいました。長文連投、失礼。

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  1. 齋藤信子 より:

    ご体調が回復されないとのこと心配です。充分にご休養なさってご快復なさることを祈ります。
    日本が戦力を放棄させられたのは、かの大戦でその侵略のやり方、独特の非論理性、精神の幼稚さなどの特異性に世界が 驚いたからではないだろうか?
    今日のイスラム国は覇権国家アメリカの介入の歴史から、人間の残虐性が表出しているが、日本の場合は国の歴史と、島国という閉鎖立地の辺境(偏狭)も相まって、薩長に象徴される卑怯な軍国主義が生まれた。その温存をしている限り、日本は戦力を持ってはいけないと世界が思うのは当たり前だと思う。これは、自虐ではない。
    自国の歴史の事実を知れば、自国の欠点もみえる。
    アメリカ従属ではなく主権国家という主張はわかるが、その前にせめて国民の人権意識の先進国化に取り組んでほしい。
    まるでゾンビのように戦争に取り憑かれた安倍政権に、緊急事態法などで、全権を託すなど狂気の沙汰だ。

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