子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)接種の、国による積極的勧奨が中止になったのは5年前の2013年6月。HPVワクチンを接種した10代の少女たちに、全身の疼痛や知覚障害、運動障害、失神、けいれん、記憶障害などの深刻な症状が多発したためだ。
日本では、2009年にグラクソ・スミスクライン社(GSK)のサーバリックス、2011年にはMSD社のガーダシルが承認され、厚生労働省の「ワクチン接種緊急促進事業」により、接種率は一時、80%を超えていたが、現在の接種率は1%未満である。
副反応と見られる症状はさまざまで、遅発性の場合もあり、国や製薬会社、そして製薬会社との間では利益相反の関係にあるはずの厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会や日本医師会、日本産婦人科学会、日本小児科学会などは「HPVワクチン接種との因果関係は立証されていない」と主張している。被害少女とその保護者たちは、副反応症状に苦しみながらも、多くの医療機関を回っても診断がつかず、医師から「精神的なもの」と言われたり、詐病を疑われるなど、肉体的にも精神的にも傷つけられてきた。
2013年3月、「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会」が発足。2016年には、被害者12人が国とグラクソ・スミスクライン社、MSD社に損害賠償を求める集団訴訟を起こしている。
2014年、小児科医で横浜市立大学名誉教授の横田俊平氏らのグループが、HPVワクチン接種後に起こる多様な症状をデータベース化して検証。「HANS(ハンス:HPV Vaccine Associated Neuropathic Syndrome)=HPV(子宮頸がん)ワクチン関連神経免疫異常症候群」という新しい概念を提唱した。
2016年11月には英国の科学誌『Nature』系列の『Scientific Reports』に、日本人研究者グループによる実験論文「HPVワクチンと百日咳毒素の併用投与後の血管細胞アポトーシスによるマウス視床下部破壊」が掲載され、HANSが起きるメカニズムの解明が進むと期待された。
しかし、2018年5月11日、『Scientific Reports』側の判断で、この論文は一方的に撤回される事態となった。
この間、2017年11月には、医師でジャーナリストの村中璃子(本名:中村理子)氏が、その『Nature』が深くかかわる「ジョン・マドックス賞」を受賞している。
村中氏は、HPVワクチン接種後の様々な激しい症状をワクチンの副反応とみるメディアや厚労省、そして横田医師らの研究グループに対する批判を続けてきた。「ジョン・マドックス賞」の受賞理由は、「ワクチンについての誤情報を指摘し、安全性を説いた」というものだ。
2018年5月22日、東京都千代田区の厚生労働省にて、論文を発表した研究者グループが所属する、一般財団法人難病治療研究振興財団の主催により、「HPVワクチンマウス実験に関する論文がScientific Reportsにより撤回された件についての記者会見」が開かれた。
政策研究大学院大学シニアフェローでリウマチの研究者である医師の西岡久寿樹(くすき)氏は、論文撤回に関しては向こうに権利があり、抗議しても意味がないとして、「次のペーパー(論文)を作ればいい。きちんとリライトして、別のジャーナルに投稿することは自分たちの義務だ。そして、日の目を見る形にすることが絶対に必要だ」との見解を示した。
しかし、帝京大学医学部客員教授で神経内科学の専門家である黒岩義之氏は、「『Scientific Reports』に動物実験論文を投稿したのは2016年5月。査読や修正が行われ、 11月に論文が掲載された。掲載後に外部から批判があったが、そのすべてに回答。編集部とは、正誤表を作ればいいという結論で2017年2月に合意した。しかし突然、同年9月2日に論文撤回の提案があった」と、非常に不可解な一連の経緯を振り返った。
英科学誌がHPVワクチンの副反応を解明した論文の掲載を撤回!横田俊平医師ら、HPVワクチン副反応「HANS」に取り組む医師らが記者会見を開き、英科学誌の姿勢を批判! https://iwj.co.jp/wj/open/archives/422238 … @iwakamiyasumi
科学的事実より経済的利益を優先。いまこそ医療マフィアの圧力に屈しない科学の良心が必要。
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