激しい頭痛など10以上の副反応に襲われ、腕の握力を失ってしまったAさん
現在18歳のAさんは、都内の短大に通う大学1年生。一見、どこにでもいる普通の女子大生のように見える。そのAさんは、4年前の2011年の夏、14歳の時に子宮頸がんワクチンを打った。その日を境に、激しい全身の症状に苦しみ続けている。
▲取材に応じてくれたAさん
2011年8月、9月、2012年2月にAさんは子宮頸がんワクチンを接種した。初回、2回目の接種後にも腕の痛みや腫れ、気分が悪くなるなどの症状があったが、我慢できないほどの症状ではなく、3回目の接種をむかえた。
「ワクチンを打ってから3時間ぐらいで、(ワクチンを接種した)左腕が1.5倍も膨れたんです」
「(その後)1、2週間は、腕を上げることができませんでした。(今も)握力はゼロです」
その後も、ありとあらゆる副反応症状がAさんを襲った。その数は10以上にのぼるという。腫れ上がってしまった左腕は、今現在も接種した箇所のけいれんがおさまらず、握力もゼロのまま、一向に回復していない。
「ワクチン接種後から現在まで続いている症状はどういうものですか?」
IWJの質問に、AさんとAさんのお母さんから、たくさんの症状が挙がった。
「ひどい頭痛とか吐き気、胸の痛みは、ずっと続いています」
接種後から現在まで毎日、Aさんはこの辛い症状に耐えなければならない。
「一般の人が平均的に頭痛で感じる痛みが3だとすると、この子が今感じている痛みの強さは5です」
Aさんのお母さんは、Aさんが日々感じている痛みの強さを、医師から受けた説明をもとに話してくれた。
「(痛みが)7ぐらいの時もあるよね?」とのお母さんの問いかけに、Aさんはうなずいた。7の痛みというのは、ドアに指を挟んでしまった時の痛みに相当するという。
Aさんは、この激しい痛みと、毎日のように対峙しなければならないのだ。
学校内でも強く勧められていた子宮頸がんワクチン、症状に苦しむ被害者に対する陰湿ないじめが横行
Aさんがワクチンを接種したのは、子宮頸がんワクチンが定期接種に指定される前だったが、なぜ、接種することになったのか。
IWJ「当時、クラスのどのぐらいの人がワクチンを打っていたんですか?」
Aさん「全員です」
IWJ「任意接種なのに? 全員? どうしてそんなに接種率が高かったんですか?」
Aさん「保健の授業で先生がワクチンのことを話して、『子宮頸がんワクチンは受けていますよね?』と当たり前に言ってました」
Aさんが通っていた女子中学では、当然のように授業でワクチンに関する説明を受けたり、校内にはワクチン接種を勧めるたくさんのポスターが貼られていたという。
「副反応の症状が出てからは、学校はどういう対応でしたか?」IWJの質問にAさんは、「ポスターがはがされて、授業でもワクチンのことを話さなくなったりしました」と語った。
しかしその後、ワクチンが定期接種に指定されてしまった後、Aさんと同じ学校で2人目の被害者が出てしまった。
学校側は、ワクチンの被害者であるAさんへの理解を示しており、家族や友人の支えもあって、Aさんは苦労しながらもかろうじて学校生活を送ることができている。一方、他校では、突然不随意運動や、けいれんなどが起こってしまう被害者に対するいじめが横行し、不登校になる子もいると、Aさんは危惧した。
ワクチンによる副反応に加え、処方された薬による副反応も
3回目の接種から1年が経った2013年2月、副反応症状はさらに勢いを増してAさんを苦しめた。
「発作的に起こる過呼吸、後ろからハンマーで殴られるような頭痛、全身の脱力、失神…」
こうした重篤な症状が表れたとAさんは言う。左腕の痛みは耐えられないほどになり、「泣きわめくような激痛」があったと、お母さんとともに当時の状況を振り返った。
この時、医療機関から処方された薬は、表向きは痛み止めとして処方されたものだが、「抗うつ剤としての効果がメインの薬だった」とお母さんは言う。Aさんは副反応の症状だけでなく、こうした薬の副作用にも苦しめられた。
「まっすぐ歩けなかったり、手足のしびれもあった」
Aさんが証言するこの症状は、ワクチンの副反応ではなく、強い薬の副作用によって引き起こされた症状だ。
「それでも、突然薬を止めることはできなかったんです」
ひどい副作用があっても、徐々にその量を減らしてからでなければ、薬を止めることはできない。苦しむAさんのそばにずっとついていたお母さんも、Aさんと一緒に、2重にも3重にも辛い思いをしなければならなかった。
味覚障害、食欲減退、足の感覚がなくなり車いす生活に
次第に、Aさんは味覚もおかしくなり、食欲がなくなっていく。2013年4月、高校2年生の春には、足が動かなくなってしまった。
「夏になっても、(足が)氷みたいに冷たかった」。体温は平熱なのに、「寒くて毛布をかぶっていた。学校でもみんなに服を貸してもらっていた」。
足の感覚を失ったAさんは、車いす生活を余儀なくされた。トイレも、一人ではできなくなってしまった。
学校生活、家庭生活にも深刻な影響がおよんだ。ワクチンを打つまでは、バドミントン部に所属し、運動神経が良かったAさんだが、それ以降、みんなと体を動かすことはできなくなった。
「体育が大好きだったんですけど、卒業するまで、ずっと見学。修学旅行も、車いすでした」
介助がなければ通学が困難であるため、Aさんのお母さんは毎日一緒に登下校を付き添うことになった。
「私は車を運転できないので、毎日電車で送り迎えしました」
家でも、つきっきりでAさんの看病にあたっていたAさんのお母さんは、仕事を続けていくことが困難になり、11~12年間勤めていた職場に別れを告げた。
Aさんの車いす生活は半年間続いた。この間までにAさん親子は、わらにもすがる思いで、整形外科、神経内科、精神科など、何度も何度もいろいろな病院の門を叩いた。しかし、ほとんどの病院で「異常なし」と言われ、他の病院に回されたり、門前払いの扱いを受けた。
医療機関での治療効果が期待できないことから、Aさんたちはあらゆる民間療法も試したという。10ヶ月続けた漢方では効果が得られなかったが、自然の発酵熱によって身体を芯から温めるという酵素風呂は、足に効果があり、徐々に足の体温を回復できたAさんは、車いすなしでも歩けるまでになる。それでも、左腕や肩甲骨の痛みや激しい頭痛、ひざの関節痛などの症状は改善しなかった。
突然起こる深刻な記憶障害、友人や担任の先生の名前が分からなくなってしまう
「友達の名前とか、担任の先生の名前が分からなくなりました」
秋になると、Aさんには重度の記憶障害が起こった。
「計算問題、簡単なたし算も、できなくなりました」
「毎日通っている道が途中で分からなくなって、家に帰れないこともありました」
こうした症状は日によって異なり、突発的に起きてしまうため、Aさんはそのたびに、分からないという恐怖におびえなければならなかった。
進学校に通っていたAさんだったが、みんなが必死に受験勉強に入る中、Aさんは勉強することさえままならない状態が続いた。
「寝て起きたら、記憶がないかもしれない」
「いつ、記憶がなくなるか分からないので、寝ないでテストを受けたこともありました」
この記憶障害の症状は、2ヶ月ほど続いたという。
なにを食べても吐いてしまう、睡眠薬を飲んでも眠れず、激痛に耐えるしかない日々
高校3年生の冬には、自分の好きなものをはじめ、なにを食べても吐いてしまうという副反応症状が起こった。病院で検査したところ、小麦、卵、乳製品、いんげんのアレルギーが見つかったという。フードアレルギーの症状は、Aさんだけに発症しているわけではなく、他の子宮頸がんワクチン副反応被害者も同じように苦しんでいる症状の一つだ。
「好きなものなら大丈夫かなと思って、天ぷらとか、うどんとか、ラーメンを食べたらやっぱりだめで…」
それまではなんでもなく食べることができていたメニューも、食べることができなくなった。
「外食は本当にできなくなりました」とAさんのお母さんは語り、現在も小麦や卵などを除去した限られたものしか食べられないため、食事のメニューに苦労していることを話した。
友達とカフェで好きなものを注文したりすることができないため、「自分のせいで、気をつかわせてしまって申し訳ない」と、Aさんは語る。
Aさんを苦しめる身体の痛みは、先に述べた頭痛や腕・肩甲骨・関節の痛みだけではない。生理痛もワクチン接種後からひどく重いものになり、痛みがひどい日には眠ることすらできない。眠くならない日もあり、睡眠薬を飲んでも、効き目がないのだという。
治療法が見つからない現状では、毎日襲ってくるこうした激痛に、Aさんは耐え続けるしかない。痛みに耐えながら、ビタミンB・Cなどのサプリメントを毎回16錠飲み、週に1度は高濃度ビタミンの点滴を受けに病院に通う。
この点滴を受けてから、最初の頃は頭痛がかなり回復したという。しかし、最近では効果が次第に薄れてきており、「半分ぐらいしか効いていない」とAさんは話す。さらに、むねやけや過呼吸など、点滴の副作用も覚悟しなければならない。
年間120万円にもおよぶ医療費の負担、補償を受けるのが難しい現実
医療費の負担も大きい。毎週の点滴には2万円の費用がかかり、そのほか、リハビリをするための病院など、複数の医療機関の通院費用や薬代など、経済的不安が重くのしかかる。これら医療費は、年間で120万円にもおよんだという。
一度は車いす生活になり、非常に不自由な生活を余儀なくされたAさんだったが、その後足は改善したため、障がい者として認められたのは、左手が動かないということのみ。副反応による身体への障がいがあっても、その症状が継続して見られなければ、障がいとして認められないのだ。
ワクチンを含む、医薬品で健康被害が生じた場合、医療費などの給付を行なう「医薬品副作用被害救済制度」が日本にはある。給付を受けるためには、PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)に申請を出す必要があるが、実際に給付を受けることができるようになるまでのハードルは高い。
申請には医師の診断書が必要になるが、病名が確定しなければ、因果関係が分からなければ、診断書を書けないと、Aさんは断られてきた。重篤な症状に苦しむ上に、補償すら受けることができないのかと、絶望する思いを味わったAさん親子だったが、努力の甲斐があり、理解のある医療機関の医師が、診断書を書いてくれると言ってくれており、補償の申請にチャレンジする予定だという。
他方、一部の自治体では、独自に副反応被害者へ医療費の支援等を行なっているが、Aさんが住む東京都ではまだ実施されていない。Aさんの両親は、区議会に陳情し補償を訴えたが、その回答は、「東京都の措置にしたがう」というものだった。
IWJは、Aさんが住む自治体の区議に現状を聞いた。区議会では、子宮頸がんワクチンの副反応問題について、今も継続審査になっているという。しかし、継続審査は「国の動向をみるなど、理由はいろいろあり、その時点で賛否を表明できないということで 、結局、お蔵入りで会期が変わり、審査未了になってしまう」ことが懸念される。
東京23区は、市町村などの自治体と同等の権限を持つ基礎自治体に位置付けられているが、「特別区」として、他の自治体とは異なる部分があり、分野によって、都が所管するケースと、区が所管しているケースとに分かれるのだという。
医療については、都の所管とされているため、「区として策を講じられない
と言いたいのではないか」と区議は指摘する。しかし、区でも現在、健康推進課を作るなど、医療政策を講じている部分も増えていることから、所管ではないことを「言い訳」にさせず、区としてできることをすべきだと、語った。
その一つには、都に支援策を求める意見書を区議会から提出することがあると、区議は提示する。また、他の医療分野への補助金などの支給を考えれば、「区として独自の支援策を検討することも十分ありうる」と語った。
夢をあきらめなければならなくなったAさん、これからも続く病との闘い
副反応に苦しみながらも、高校、短大へと進むことができたAさん。しかしそれは、けして望み通りの結果ではなかった。
体調がすぐれず、希望通りの進学を果たせなかったAさんは、「将来の夢はなんだった?」という質問に、「本当はプラネタリウムの解説員になりたかったんですけど…」と答えたが、「でも、今通っている短大では、学芸員の資格が取れないので、無理になりました」と話す。
「今は、将来なにになろうと思っている?」と聞くと、「普通のOLです」とAさんは答えた。
将来の夢を絶たれ、生きる希望も失いかけそうになるほどの壮絶な病と闘いながら、Aさんはそれでも、「落ち込んではいられないから」と、明るく振舞う。
「体を思うように動かせない、みんなと同じようにできない」ことが辛いと、こぼしながらも、体を動かせなくなってから始めた写真が楽しいと、笑顔を見せた。
AさんやAさんの両親が失ったたくさんのこと、その重みは、はかりしれない。何事もなく平穏に過ごせたはずの時間は、戻ってはこない。
金銭的な補償だけで償いきれるものではないが、Aさんたち被害者は、一日も早い治療法の確立と、救済を求めている。Aさんも所属する子宮頸がんワクチン被害者連絡会には、副反応被害に関する問い合わせが1700件以上寄せられており、登録者も400人を超えている。
連絡会の地方支部も増え、北海道、群馬、茨城、埼玉、千葉、神奈川、長野、愛知、岐阜、大阪、福岡、沖縄と、12支部が各自治体で活動しており、今後も、鹿児島、静岡、四国、東北と、支部が立ち上がる予定だという。こうした被害に対し、国をはじめ、自治体レベルでの対策が急がれる。
そして、他のワクチンとは比較にならないほど多数の副反応を引き起こし、現在もなお、その有効性が極めて不明確な子宮頸がんワクチンの接種事業の見直しも、当然のことながら検討されなければならない。
しかし、それと逆行するように、2015年7月、子宮頸がんワクチンを製造するMSD社は、子宮頸がんなどを予防するとして、9つのHPVに対応したワクチン「ガーダシル9」を日本で承認申請したと発表した。
日本ではこれまで、グラクソスミスクライン社が製造した「サーバリックス」と、MSD社(メルク)が製造した「ガーダシル」の2種類のワクチンが認可を受けていたが、この申請が通れば、3つ目のワクチンとして、広く導入されることになる。
今回のワクチン「ガーダシル9」は、これまで従来のガーダシルが対応していた6、11、16、18の4つのHPVに加えて、新たに31、33、45、52、58の5つのHPVが加わっているもの。これら9つのHPVの感染に起因する子宮頸がん及びその前駆病変、外陰上皮内腫瘍、膣上皮内腫瘍、尖圭コンジローマの予防に効果が期待できるとして提出された。
しかし、従来の子宮頸がんワクチンと同様、子宮頸がんを減らすという、その有効性には疑問の声が上がっており、ワクチンの安全性にもいまだ疑問符がついたままだ。
ガーダシル9の有害事象の報告頻度はガーダシルと同程度だったが、腫脹や疼痛、紅斑などの接種部位の有害事象の報告頻度は、ガーダシルよりも高かったという。
「これ以上、新たな被害を生んでほしくない」と、Aさんをはじめ、多くの副反応被害者は願っている。
Aさんのような子宮頸がんワクチンの被害者たちは、みんな、好き好んで政府や製薬会社に対して闘いを挑もうとしているわけではない。やむにやまれず、闘うほかに道を見出せそうにないのである。その闘いの出口は、まだ見えそうにない。
――解題(岩上安身)
Aさんたちを苦しめる、この悪魔のワクチンを、日本政府が積極的に勧奨するように強く求め、そのためにメディアをもコントロールせよ、と異常な内政干渉ともいうべき要求を行っている米国のシンクタンクがある。それがCSIS(戦略国際問題研究所)である。
CSISは、安倍総理以下、自民党にも日本政府にも日本の主要メディアにも極めて強い影響力を及ぼす世界最大の軍事戦略シンクタンクであり、日本に集団的自衛権の行使、自衛隊の海外派遣を強く求めるアーミテージレポートも、このCSISから出されている。原発の維持推進政策も、TPPの締結を強く求めているのも、このCSISである。
IWJは、この第三次アーミテージレポートを仮訳しているが、これを一読すれば、日本政府の、国民不在の政策の遂行は、米国の軍産複合体やグローバル企業の利益を代弁したCSISのような組織の「勧告」に唯々諾々と従っているものだということが、よくわかる。
ぜひ、以下の「岩上安身のニュースのトリセツ」をお読みいただきたいと思う。なぜ、Aさんのような、何の罪もない少女が、こんなワクチンのためにここまで苦しまなければならないのか。製薬会社の利益のために? あまりに非道な話ではないか。
なぜ、日本政府は、自国の国民を守ることもができないのか? なぜ日本の大半の主要メディアは対抗言論を打ち出すことができないのか?(日経のように、CSISとがっちりスクラムを組んでバーチャルシンクタンクを作り、世論操作に励んでいる論外なメディアすらある)
日本に集団的自衛権の行使を求めて戦争法案の推進を促し、TPPによって「経済植民地化」を進めている、そんな米国の要請に言われたとおりに従うような政権では、Aさんのような、いたいけな少女の未来も人権も、守ることはできない。
軍事の話と、子宮頸がんワクチンの話と、農業や食に関わる話など、一見、バラバラに見えるテーマだが、すべてつながりあっている。ぜひ、そうしたことにお気づきいただきたいと思う。