3.11はすべての始まりであり、すべての課題が集約した「構造的な悪」である!戦争と原発のつながりに目をこらし、国家利権村の「操作」からの脱却を! 2018.3.11

記事公開日:2018.3.11 テキスト
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(文・尾内達也)

 今年も3月11日がやってきた。福島原発事故から8年目に入る春である。7年前の3月11日からすべてがはじまった。そう考える人も多いのではないだろうか。何が始まったのか。「フクシマ」はこの国のいままで見えなかった「構造的な悪」を白日の下に晒した。そして、今も晒し続けている。それには、ツイッター、フェイスブック、ブログなどインターネットを介した双方向メディアによって、商業メディアが伝えない情報を市民がいち早く知ることができるようになったことも大きい。

▲福島第一原発(資源エネルギー庁のホームページより)

季語としての「原発忌」

 俳句には、忌日という季語のカテゴリーがある。たとえば、陰暦10月12日は、芭蕉の亡くなった「芭蕉忌」である。亡くなった人を回想し追悼するための季語であるが、必ずしも、個人だけが対象ではない。集団もある。8月6日の「広島忌」と8月9日の「長崎忌」がそれである。これと同じように、震災と原発事故で亡くなった人を追悼し回想する季語として、3月11日を「原発忌」としようという動きもある。

 時間はめぐってくる。めぐるたびに、始まりを思い出す。原爆も広島・長崎へ投下されて、それで終わったわけではない。それが過去になったわけではない。むしろ、そこから新たな時が始まったと考えたほうがいいだろう。亡くなった人々の記憶は、家族・友人・同僚などへ受け継がれ、運よく一命をとりとめた方も、その後の人生は、被爆の後遺症の苦悩とともにある。さらに、その苦悩は二世三世へと引き継がれてゆく。

 日本の三月にあり原発忌   長谷川櫂

 原発忌も同じ運命を背負っている。3月11日は、過去であるが、同時に、現在でもあり、未来でもある。始まりであり、同時に、克服すべき課題として3月11日は何度も何度もめぐってくる。

現在も、約7万3千人が避難生活を送り、人口減に歯止めがかからない。

 いまも約7万3千人を超える人が避難生活を送り、岩手、宮城、福島の3県の人口は震災前と比べて約25万人減少している。沿岸部を離れ、別の地で生活を再建する被災者が増え、観光目的の宿泊者数は3県とも震災前の水準に及んでいない。さらに、被災地では人手不足に加え、東京五輪関連の建設ラッシュのため、工事費が高騰、公共工事の入札不調が相次ぐなど、復興が遅れている。福島では、4町村で避難指示が一斉に解除され、間もなく1年になるが、帰還者は少ない。農業産出額も回復していない。避難生活に伴う精神的苦痛に対して支払われてきた賠償は、避難指示がおおむね解除されたとして、3月分で終了する。

▲2011年11月にオープンした復興屋台村気仙沼横丁。気仙沼市内には復興商店街として、地場産品を取り扱う店や飲食店が復活している。(宮城県観光連盟のホームページから)

 作家の柳美里さんは、2012年3月から南相馬市にある臨時災害事故放送局・南相馬ひばりFMで南相馬に住む市井の人々と語り合うラジオ番組『柳美里のふたりとひとり』をノーギャラで始め、現在は福島県南相馬市へ移住し、2018年4月からは書店「フルハウス」を開店することになっている。被災地の人々の声に耳を傾け、心に寄り添ってきた柳さんは、東京オリンピック・パラリンピックについて、以前こんなコメントをしている。

 「6年後、東京オリンピックの開会式を、仮設住宅のテレビで観る人が一人でもいたら、東京オリンピックは失敗だと、わたしは思います」

 この国の一角に、家に帰れない国内難民と化したたくさんの人々がいることをを考えたならば、東京オリンピックでうつつを抜かしている場合ではないのではないだろうか。

 また、福島第一原発の廃炉にかかる費用は、賠償金を含めて20兆円を超え、廃炉までに要する時間は、東電のロードマップでは、30、40年後とされている。

▲南三里町の志津川の中心部では、流失した家々の瓦礫の間に、志津川地区の店頭に飾られてきた「きりこ」と呼ばれる伝統の切り紙やご幣束を模したアルミ複合板を設置。白く清らかな美しい祈りの形に、南三陸町の人々の思いを託している。(宮城県観光連盟のホームページから)

国家利権村による国家支配とデモ文化の成熟

 政権を支える特定の利権集団の私腹肥やしにしかすぎないものを、意図的に「国家プロジェクト」と位置づけて遮二無二推進し、貧しくなる一方の大多数の生活者の声に耳を傾けない安倍政権のありかたは、原発問題や東京オリンピック・パラリンピック、「モリ・カケ・スパ」問題に限らず、いたるところで見受けられる。

 それは安倍政権とそれを支える日本会議が、原発村(政権・東電・行政・司法・原子力学界などの学界・読売・産経などのメディア・経団連)を中心にして、それを拡大した「国家利権村」を構成しているからにほかならない。彼らの言う「愛国心」とは、まさに、国家利権村を愛せよ、忠誠を誓えと強いるものにほかならないのである。こうした「構造的悪」の姿を明るみに出したのも、「フクシマ」の功績の一つである。

 もう一つ、福島原発事故には大きな功績がある。それは、デモをこの国の日常的な文化にしたという紛れもない現実である。街頭に市民が出て、統治権力を中心にした国家利権村に対して、プラカードで自由に主張し、スピーチを行い、コールする。それが日常的な文化のひとつになった。しかも、立憲民主党等の原発ゼロ法案の提出や、裁量労働制の廃止、佐川国税庁長官の辞任要求など、市民デモの要求が一定の成果を出したケースもある。

 ネトウヨや自民党議員らが、「特殊な思想の持主」とデモ参加者にレッテルを貼り付けても、「特殊な思想」なのは、国家を私物化し、まったく時代に合わない明治復古をめざす安倍政権の方なのは、今や、誰の目にも明らかになってきた。

▲2017年の3.11(国会前にて、尾内撮影)

▲2017年の3.11(官邸前にて、尾内撮影)

 多様な問題に関して、民衆が自ら反対する姿を路上で示し、それが日常の文化のひとつになったことは非常に重要な意味がある。国会内での野党の攻勢をバックアップするだけではなく、デモに参加することで国家利権村の「操作」の呪縛を断ち切り、政治的な目覚めを市民にもたらす機会が増えたからである。

 今日の3.11も、2つ市民集会が予定されている。

核兵器と原発、この2つはつながっている

 核兵器と原発は同じ核分裂を利用する。そして、二つとも、そのための社会体制を必要とする点で共通している。日本が原発を止められない理由の一つに、核兵器に転用できるプルトニウム製造能力を保持したいから、という軍事的な理由がある。トランプ政権が軍事上の理由から、国内の鉄鋼・アルミ産業保護の目的で、鉄鋼とアルミに輸入関税をかける事情とそれは似ている。

 他方、原発を社会体制の側面から観ると、それは、国家利権村の打ち出の小槌そのものである。たとえば、柏崎刈羽原発が稼働するだけで、年間、1,000億円程度の収益が見込める。国家利権村にとって、廃炉費用のためにも、自らの利権を維持するためにも、原発再稼働は至上命題なのであり、呆れることに、新規増設さえ口にし始めている。

核兵器の脅威を創り出しこれを支える国際国家利権村!

 原発と同じように、核兵器も、それを存在させ続ける社会体制が確立している。昨年のノーベル平和賞受賞団体である核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)とオランダの平和団体PAXが3月7日に発表したレポート2018年版『核兵器にお金を貸すな』によると、世界の20の企業が核の脅威の高まりによって、利益を得ていることが明らかになった。

 ICANによると、2014年1月から2017年10月までに、核兵器製造企業に329社が投資し、その総額は5,250億ドル(約56兆543億円)にものぼる。329社は、株式発行と社債の起債に協力したり、株式と社債を保有したり、貸付残高を管理したり、融資枠を設けたりした。投資会社の数は減っているが、投資額の総額で見ると、810億ドル(約8兆6,484億円)も増えている。

 大半の投資会社は米国に本拠を持ち、米国の投資会社3社だけで1,100億ドル(約11兆7,447億円)を融資している。この3社とは、ブラックロック社、バンガード社、キャピタル・グループである。

 ICANのベアトリス・フィン事務局長は、次のように述べている。

 「ドナルド・トランプの核戦争の脅威から誰が利益を得ているのだろうと思っていたとしたら、このレポートにその答えがあります。ここにある企業こそ、市民の無差別大量殺戮から利益を得ることになる企業なのです。こうした企業がハルマゲドンに融資して、カオスから利益を得るほど、私たちの安全は脅かされるのです」

 では日本企業はどうだろうか。

 このレポートに報告されている企業は、千葉銀行、三菱UFJフィナンシャル、みずほフィナンシャル、野村、オリックス・コーポレーション、三井住友フィナンシャル、三井住友トラストの7社である。核兵器製造企業の株式または債権の保有額は、三菱UFJフィナンシャルの84億7,000万ドル(約9,043億4,200万円)、みずほフィナンシャルの51億7,200万ドル(約5,522億1,400万円)、三井住友フィナンシャルの42億4,600万ドル(約4,533億4,500万円)が、突出している。続いてオリックス・コーポレーションの6億1,000万ドル(約651億2,970万円)、三井住友トラストの3,500万ドル(約37億3,695万円)、千葉銀行の2,000万ドル(約21億3,540万円)、野村の300万ドル(約3億2,031万円)となっている。

 

▲日本企業がもっとも投資している米国の企業体Aecomのホームページ。この企業体は核兵器研究所や核実験施設を共同運営している。日本企業4社の合計投資額は、27億100万ドル(約2,883億8,600万円)である。(Aecomのホームページから)

 日本企業7社も、これだけの資金提供を行い、核兵器の脅威を創り出し、それを維持することで利益を得ているわけである。日本企業の中で最大の投資額を誇る三菱UFJフィナンシャルに至っては、柏崎刈羽原発が一年間に生み出す収益の9倍もの資金を投入している。世界の核戦争の危機は、こうした企業に利益をもたらしている。死の商人を支える「死の投資家」と言っていいだろう。「死の投資家」の姿は、普段は見えない。本当の悪は見えない。「構造的な悪」は不可視であるからこそ、永らえるのである。

「フクシマ」の意義

 「フクシマ」に、仮に意義があるとすれば、誰も認めていないのにいつのまにか出来上がってしまった、54基もの原発が組み込まれた社会体制の「構造的な悪」を可視化させ、国会前、官邸前をはじめとして、全国に、国家利権村の操作から解き放たれた人々を生み出したことにある。それは、原発と核とのつながりをも可視化させただけでなく、国家利権村という利権集団が、国家を騙り国家を乗っ取っている現実を白日の下にさらけ出したのである。3.11は、回想し追悼する過去であるだけでなく、はっきりと、我々の進むべき道を照らしだす未来でもあるのである。

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“3.11はすべての始まりであり、すべての課題が集約した「構造的な悪」である!戦争と原発のつながりに目をこらし、国家利権村の「操作」からの脱却を!” への 1 件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    3.11はすべての始まりであり、すべての課題が集約した「構造的な悪」である!戦争と原発のつながりに目をこらし、国家利権村の「操作」からの脱却を! https://iwj.co.jp/wj/open/archives/414562 … @iwakamiyasumi
    いま僕らは新たな時代の始まりに立ちかけてる。あなたの勇気で日本は変えれる、夜明け前が一番暗いのだ。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/972787823538405376

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