「日本が核燃料サイクルをやるかやらないかは日本の主権の問題である! アメリカがとやかく言うことではない!」逢坂誠二議員~日米原子力協定とプルトニウム問題に関する訪米団 院内報告会 2017.12.5 2017.12.5

記事公開日:2017.12.5取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(取材:谷口直哉、文:栗原廉)

※2018年3月3日、テキストを追加しました。

 「米国の専門家たちから異口同音に、日本の使用済み核燃料の取り扱いはアメリカがとやかく言うことではない、との声が上がった。確かにアメリカの同意は必要ない」

 立憲民主党の逢坂誠二衆議院議員は、日米原子力協定とプルトニウム問題に関する訪米団の報告会の中で、こう語った。この報告会は2017年12月5日、新外交イニシアティブ(ND)と原子力資料情報室(CNIC)によって、東京都千代田区の衆議院第二議員会館で共同開催されたものだ。

 日米原子力協定は、原子力技術が核兵器に転用されるのを防ぐ目的で、1988年に締結された。協定の期限は30年後の2018年7月。後、半年後に迫っているが、日米どちらからも申し出がなければ、自動延長される取り決めとなっている。

 これまで日本では、原発の稼働を続けてきたことでプルトニウムの保有量が増加し続けてきた。プルトニウムの保有は、核兵器への転用につながる可能性があり、日本の動向は国際的な注目を集めてきた。

 原発再稼働や六ヶ所村での再処理によって、今後もプロトニウムは増えることが見込まれている。その取り扱いについての意見交換と米国での現状調査を目的として、今回の訪米団が組まれた。今年7月に満了を迎える日米原子力協定の自動延長についても、米政府に政策変更を促すのが狙いだった。米国でもこの問題についての関心は非常に高く、面会の約束の多さに訪米団のスケジュールも多忙を極めたという。訪米団メンバーには党派を超えて、立憲民主党、自民党、社民党から国会議員も参加した。

 脱原発と日米同盟という日本にとって大きな2つのテーマを結びつける日米原子力協定。その詳細を知るための報告会の模様を、IWJでは動画とテキストと共にお届けする。

■ハイライト

核兵器開発を防ぐ目的で結ばれた日米原子力協定。「30年満期」の2018年を前に、増え続ける日本のプルトニウムと高まる米国側の関心

 日本が脱原発を進めることと、今回問題となっている日米原子力協定との間にはどんな関係があるのか――?

 報告会の冒頭、原子力資料情報室の松久保肇氏が、その結びつきについて解説した。まず、日米原子力協定は1988年、日米両国の間で原子力技術の情報交換を行うのにあたって、軍事転用、つまり原発を作るノウハウが核兵器開発に応用されるのを防ぐことを主な目的として制定された。

▲原子力資料情報室・松久保肇氏

 この協定の期限は30年間だが、前述したように、日米どちらからも申し出がなければ、自動延長される取り決めとなっている。これに関して、松久保氏が訪米時に関係者から聞いたところでは、米国は、これまでに民生再処理技術を日本、EURATOM(欧州原子力共同体)、インドにしか許しておらず、これを「米国からのプレゼント」と形容していたという。

 日本が保有するプルトニウムの量は、直近では1キロ減少している。プルトニウムとウランを混ぜたMOX燃料を使うプルサーマル計画は、大飯原発、玄海原発、高浜原発でそれぞれ進む予定ではあるが、現状では玄海原発の3号機のみとなっている。

 それでもプルトニウム保有量は、今後増加することが予想されている。

 まず、青森県六ヶ所村で年間8トンのプルトニウムが生産される見込みだ。加えて、原発は建造後40年で廃炉となる予定だが、その前提に立てば、合計で130トンのプルトニウムを将来的に保有する見込みとなる。松久保氏は、「約8キロのプルトニウムで原子力爆弾1発が製造可能。それを踏まえれば、日本のプルトニウム保有量がいかに大規模なものか」と強調した。日本は1万6千発以上の核燃料の製造保有が可能ということになる。

 日本では福島第一原発事故の後も、電力会社は原発再稼働と新設に積極的である。だが、米国では多くの専門家が、原発について悲観的な将来像を語っている。その最大の理由は、シェールガスや自然エネルギーの普及がすでに進んでおり、原子力はエネルギー源としては採算の取れない事業になりつつあるからだ。加えて、直近の米国での世論調査では原発反対の傾向が強まっている。そのため、米国でも進む予定だったプルサーマル計画は、昨年11月中旬に破棄されている。

 今回の訪米団は、滞在中に28の事務所訪問と2件のパブリック・シンポジウムでの報告をこなし、多忙を極めたという。これまでに貯まったプルトニウムを日本がどう減らしていくのか、米国側でも高い関心が集まっているためだ。

 一方で、日米原子力協定の内容変更や破棄などの可能性については、米国では多くの関係者が否定的な見通しを語っている。訪米団の帰国後には、こうした見方を裏付けるように、国務省やエネルギー省の高官による「協定の破棄や再交渉の可能性はない」とのコメントが相次いで報道された。

 報告の最後に松久保氏は、日本のプルトニウム保有が、現在の国際情勢に照らして、どのように問題になるのかを、次のように解説した。

 「日本は、現在は核兵器を保有していないが、原発や再処理工場から抽出される大量のプルトニウムが、将来的に核兵器に転用されるのではないかと懸念されている。特に韓国では『日本が核兵器を保有したら、韓国でも保有するべき』という世論があり、日本が核拡散の口火を切ってしまう可能性がある。六ヶ所村の再処理工場はこれまでほとんど稼働しておらず、また、プルトニウム保有が核廃絶の阻害要因となっていることから、再処理工程の見直しが必要ではないか」

米国の専門家も驚く下北半島の現実 ~「六ヶ所再処理工場など原子力関連施設が集中、近くには米軍基地」

▲三上元・静岡県湖西市の前市長

 静岡県湖西市の前市長、三上元(みかみ はじめ)氏は、脱原発をめざす首長会議の世話人を務めたことがきっかけとなり、今回の訪米団に参加した。多くの関係者との意見交換を元に、三上氏は2つの感想を簡潔に述べた。

 「六ヶ所村の再処理工場(※)稼働については、ほぼすべての米国側の関係者が『日本の主権に関わるので、米国側がとやかく言う筋合いはない』と断りつつも、否定的なコメントを残した。プルトニウムの保有量が増えることは、結果的に中国の警戒心をかきたてることにもなる。なお、米国では再処理工程の停止は、オバマ政権とトランプ政権の両方で一致する数少ない決定のひとつだった」

 加えて、原発は採算に乗らないことを三上氏は強調した。2001年の米国同時多発テロ事件の時から、原発がテロに遭うリスクを踏まえて反対を唱えてきた三上氏は、「海外の原発保有国では、軍隊が原発周辺の警備を行う。それに比べて、日本の原発の警備体制には緊張感がない」と喝破した。

(※)六ヶ所再処理工場:
 六ヶ所再処理工場は、原発で発電を終えた使用済み核燃料をブツ切りにし、大量の化学薬品を使ってプルトニウムと燃え残りのウラン、そして核分裂生成物(ストロンチウム90やセシウム137のような半減期の長い核種を含み、永く残留して生物に放射線障害を引き起こすため「死の灰」とも呼ばれる)に分離する巨大な化学工場である。

 放射能を原料とした巨大な化学プラントであるため、火災・爆発事故などに加えて、臨界事故、放射能漏れ、被ばく事故などの危険性を合わせ持つことになる。

 プルトニウムとウランを取り出す工程全体でたとえ事故が起きなくても、「原発1年分の放射能を1日で出す」といわれるほど、大量の放射能が環境中へ放出される。ひとたび大事故が起これば、放射能の被害は日本全体におよぶ可能性があると、原子力資料情報室は訴えている。

 また、六ヶ所再処理工場で設備の設計ミスが隠ぺいされていたことが2007年4月18日に発覚。使用済み燃料貯蔵プールに設置されている第1チャンネルボックス切断装置、燃料取扱装置が安全審査で想定された強い地震によって破壊される可能性があるという。このため、これらの設備の耐震補強工事が実施されることになった。

▲立憲民主党・逢坂誠二衆院議員

 福島第一原発事故が起きた時、民主党の菅直人内閣で総務大臣政務官を務めていた逢坂誠二議員は、当時のエネルギー政策について、「2012年9月、与党だった民主党は『2030年までに原発ゼロ』を進める方針であった。原発ゼロの決定は日米原子力協定に関わるため、閣僚が訪米したが、核燃料サイクルの継続にも影響することなので米側との合意が持てないという理由で、原発ゼロの方針を最後まで固められなかった」と振り返った

 逢坂議員は、その後も「核燃料サイクルを続けてよいのか」「日米原子力協定を結ぶアメリカにとっても、これはプラスなのか」と問い続けていたという。そして、今回の訪米で印象的だったことを、以下のように紹介した。

 「アメリカの多くの専門家から、(日本の使用済み核燃料の取り扱いについて)アメリカがとやかく言うことではない、というコメントが異口同音に上がった。水面下では何か(別の思惑が)あるかもしれないが、道理から言ってもアメリカの同意は必要ない」

 今後、原発の再稼働と廃炉までの継続使用によって、日本では100トンもの余剰プルトニウムを保有することになる。一方で、再処理やプルサーマル計画はこれまでにも技術的な困難に見舞われてきた。逢坂議員は、「世論の大多数が今でも反原発である中で、そのような大量のプルトニウム保有は妥当ではない」と強調した。

 なお、六ヶ所村の再処理工場をはじめ、原子力関連施設が集中する下北半島のすぐ南には米軍の三沢基地がある。そうした位置関係についての指摘は、米国側の専門家から驚きをもって受け止められたと、逢坂議員は伝えた。三上氏が指摘するように、原発へのテロに対する懸念があるためだ。

 このシンポジウムが開催されから2ヶ月半がたった2018年2月20日、米軍三沢空軍基地を離陸したF-16戦闘機が離陸直後、エンジンから出火。安全確保のため、事故機は両サイドの燃料タンク2基を青森県東北町の小川原湖に投棄するという事故が発生した。

 しかし、米軍機による小川原湖への燃料タンク投棄は、これが初めてではない。26年前の1992年4月にも、今回と同じように小川原湖にF-16戦闘機の燃料タンク2基を投棄している。

 事故を繰り返す米軍機の基地からわずか30キロメートル北に六ヶ所再処理施設があることの危険性が、あらためて注視されている。IWJの青森中継市民・しーずー氏が詳細な現地レポートを行っている。こちらもぜひあわせてお読みいただきたい。

採算の悪さから一段と進む米国の脱原発。「原発の電気は安価だ」と唱え続ける日本政府の方針は、米国の原発推進派でも理解不能!

 アメリカで、「日米原子力協定の見直しは現実的でない」というコメントも多く受けたという逢坂議員は、「日本が協定の見直しを行うと、同様に米国と二国間で原子力協定を結ぶ韓国など、他国の動向に影響を与える懸念があるからではないか」と推測する。しかし、日本国内においては、この30年に一度という機会に突っ込んだ議論をする必要があるとして、以下のように述べた。

 「核燃料サイクルを止めたとして、国内に10トン、国内外合計で47トン残るプルトニウムの取り扱いをどうするのか。アメリカでもプルサーマル計画が頓挫した今、日本でも同じ問題に立ち向かうことになるはずだ。だからこそ、日米が政府間でこの問題を考えるべきではないだろうか」

 報告の締めくくりに逢坂議員は、訪米中に著名なシンクタンクのひとつであるヘリテージ財団からの依頼で、急遽ディスカッションを行った時の様子を語った。

(…会員ページにつづく)

アーカイブの全編は、下記会員ページまたは単品購入より御覧になれます。

一般・サポート 新規会員登録単品購入 330円 (会員以外)

関連記事

「「日本が核燃料サイクルをやるかやらないかは日本の主権の問題である! アメリカがとやかく言うことではない!」逢坂誠二議員~日米原子力協定とプルトニウム問題に関する訪米団 院内報告会 2017.12.5」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「日本が核燃料サイクルをやるかやらないかは日本の主権の問題である! アメリカがとやかく言うことではない!」逢坂誠二議員~日米原子力協定とプルトニウム問題に関する訪米団 院内報告会 https://iwj.co.jp/wj/open/archives/406801 … @iwakamiyasumi
    「ワシントン発」、米国の声を利用する日本政府の姿が明らかに。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/938135157361356800

@55kurosukeさん(ツイッターのご意見) にコメントする コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です