【3・11から6年 忘れない・忘れさせないシリーズ特集】
2011年3月11日の東北太平洋沖地震による福島第一原子力発電所事故は、国際原子力事象評価尺度で最悪のレベル7(深刻な事故)となった。
▲30キロ沖から撮影した東京電力 福島第一原子力発電所(ウィキメディア・コモンズより)
1、2、3号機は核燃料が原子炉圧力容器の底に溶け落ちる炉心溶融(メルトダウン)をおこし、さらにその高熱で圧力容器の底に穴が空き、溶融燃料が格納容器に漏れ出すメルトスルーに至ったと考えられている。
▲福島第一原子力発電所1~5号機(Mark-1型)断面概要図(日本科学未来館HPより)
あの衝撃的で忌まわしい事故から6年がたった。
しかし現在でもまだ、溶け落ちた核燃料が存在する格納容器内は人が近づけば即死するレベルの高放射線量であり、国も東京電力も「燃料デブリ(溶融燃料と炉心構造材が混ざりあった溶融物)」が、どこにどういう状態で存在するのかさえ確認できていない。これでは廃炉がいつになるかすら、全く見通しがつかない。
東京電力はこれまでに1号機2号機合わせて3度、ロボットによる格納容器内部調査を試みているが、いずれも期待された「デブリの発見」には至っていない。
2017年1月、東京電力は4回目となるロボットを使った原子炉格納容器内部調査を2号機で行なうことを発表した。
この記事は、1月から2月にかけて行なわれたこの調査に伴って開かれた臨時会見と、毎週2回東京電力本店で行われている定例会見での取材内容をまとめたものである。
なお、IWJでは事故以来、東京電力定例会見を欠かさず取材・中継し続けている。
ロボット開発の主力は経営危機に直面するあの「東芝」って、大丈夫!?
2017年2月16日、東京電力は福島第一原子力発電所2号機における原子炉格納容器(PCV)内部調査の最終段階として、技術研究組合国際廃炉研究開発機構(IRID)のメンバーである東芝が開発した、PCV内部調査装置(通称サソリ型ロボット)を投入した。
▲東芝製サソリ型ロボット(東京電力ホームページより)
ついに破綻が表面化した東芝だが、実は2011年の3・11から実質的に破綻していた!?~東芝には廃炉完遂まで「倒れること」は許されない!
東芝が原子力関連企業であるウェスチングハウス・エレクトリックを購入し、米国子会社化したのは2006年のこと。そのウェスチングハウス・エレクトリックが2015年末に買収した原発建設会社CB&Iストーン・アンド・ウェブスターの資産が大幅に目減りし、それを理由として、東芝は原子力事業で7125億円の特別損失を計上し、深刻な経営危機に陥った。2月14日の発表によると2016年4~12月期が4999億円の連結最終赤字(米国会計基準)、自己資本が1912億円マイナスの債務超過となる。
▲記者会見を行う東芝の綱川智社長――2月14日、東芝本社ビル
このため、東芝は3月14日、巨額損失の原因となったウェスチングハウスの株式過半数の売却を決め、海外の原発事業から撤退する方針を決めた。
しかし、この特別損失は本来、2011年の福島第一原発事故の影響で大幅に下がったウェスチングハウスの企業価値を反映したものであり、「東芝は2011年から破綻していた」という指摘もある。問題は、なぜ6年もかけてこの「企業価値の暴落」という事実を隠し続けてきたのか。その結果最悪の事態を招くことを想定できなかったのか、という謎である。
3月25日現在、東芝は、3月期中に損失額を確定させるため、ウェスチングハウスを破綻処理して、米原発事業の損失が拡大するリスクを早期に遮断しようと、ウェスチングハウスに米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を月内に申請させることで最終調整に入ったと報じられている。
IWJは2月16日に行なわれた東京電力定例会見で、東芝が開発した、原子炉の探索を行うロボットについて、東芝が倒産した場合、今後のプロジェクトに対し、どんな影響が出るのか、また東芝以外にロボット開発を担える企業があるのかと質問した。しかし、その答えはいずれも「差し控えさせて頂きたい」というものだった。