2017年2月3日、東京都中央区で、「海外派遣自衛官と家族の健康を考える会」の設立記者会見が行われた。同会の共同代表を務めるイラクエイドワーカーの高遠菜穂子氏、精神科医の蟻塚亮二氏、整形外科医の大竹進氏(スカイプで参加)の3名が会見にのぞんだ。
同会は今後、海外派遣自衛官と家族の健康相談、コンバット・ストレスに関する勉強会や相談会を全国で開催し、海外派遣自衛官や家族をサポートしていく方針だ。
(取材・文:阿部洋地)
※2月8日テキストを追加しました!
2017年2月3日、東京都中央区で、「海外派遣自衛官と家族の健康を考える会」の設立記者会見が行われた。同会の共同代表を務めるイラクエイドワーカーの高遠菜穂子氏、精神科医の蟻塚亮二氏、整形外科医の大竹進氏(スカイプで参加)の3名が会見にのぞんだ。
同会は今後、海外派遣自衛官と家族の健康相談、コンバット・ストレスに関する勉強会や相談会を全国で開催し、海外派遣自衛官や家族をサポートしていく方針だ。
■ハイライト
高遠氏は同会を設立したきっかけを次のように語った。
「(自衛隊が)米軍のように軍事作戦に従事しているわけではなくても、今回、(新任務である)『駆けつけ警護』が加わったことで、散発的にでも銃撃戦など厳しい状況におかれることが一気に増えた」
その上で高遠氏は、「今、日本の中で起きている議論は、(自衛隊を)撤退させるべきだという議論と、国際貢献で行かせるべきだという議論と、二つの論が空中を飛び交っていて、噛み合わない状態での議論が続いている」との見解を述べた。
高遠氏は「撤退すべきだという議論と、国際貢献で行かせるべきだという議論の間に、私たちは何も準備ができていないんじゃないか。(自衛隊を)撤退させるべきと、行かせるべき、という議論の間を埋めたい」と、同会設立を呼びかけたきっかけを語った。
自衛隊の新任務「駆けつけ警護」については、岩上安身が伊勢崎賢治氏に単独インタビューしている。会員登録のうえ、ぜひご覧いただきたい。
また、駆けつけ警護の新任務を付与された「青森陸上自衛隊第9師団普通科第5連隊」の先発隊の空港見送りの模様をIWJは現地より中継、取材している。下記の記事もあわせてご覧いただきたい。
精神科医の蟻塚氏は、沖縄戦体験者の診察経験を振り返った。
「戦争体験者が、フラッシュバックしてくる、昔の記憶が甦ってくる、ということで非常に悩んでいたけど、(そのような症状は)自分だけだと思っていた。グループミーティングをやってみると、『私だけではないのか、あなたもか、あなたもか』となって、自分だけではないということがわかった」
蟻塚氏によると、最近の沖縄ではPTSD(※)という言葉は県民の言葉にまでなっており、戦争体験者の中にはPTSDがあるのだということは、沖縄県民の中で「常識」になっているという。
※PTSD(Post Traumatic Stress Disorder :心的外傷後ストレス障害)は、強烈なショック体験、強い精神的ストレスが、時間がたってからも、その経験に対して強い恐怖を感じ、怖い体験を思い出す、不安や緊張が続く、めまいや頭痛がある、眠れないなどといった症状がでる病気のこと(厚生労働省のホームページより参照)
蟻塚氏は、語気を強めて続ける。
「(沖縄では戦争体験者にPTSDがあることは常識になったが)本土ではそうではない、全然常識ではない。日本軍の兵士で海外に行って、帰ってきてPTSDになった人は何人いたことか。私の父親も寝る時に、『わー』と叫んで、そういう方はいっぱいおられたけど、誰も戦争(が原因)だと思っていない」
そのうえで蟻塚氏は「自分たちの周囲でPTSDとか、トラウマ反応とか、不眠とかがほとんど隠されてきたのが日本なのです。その為にも青森とか、札幌、帯広を中心にして勉強会をやっていきたい」と訴えた。
蟻塚氏の著書『沖縄戦と心の傷――トラウマ診療の現場から』は、過酷な沖縄戦経験者が抱えるPTSDの実態を詳しく紹介し、沖縄戦の凄まじさ、痛ましさも生々しく描いている。IWJは沖縄ヘイトデマを垂れ流した「ニュース女子」への対抗言論の一環として、同書を紹介する記事をアップしている。合わせてご覧いただきたい。
なお蟻塚氏は現在、仙台に居を移し、福島県相馬市の「メンタルクリニックなごみ」の院長として、福島での震災・原発事故のトラウマを負った患者に向き合う日々を過ごされている
蟻塚氏が今後、戦場から戻ってきた自衛官やその御家族のトラウマに向き合い、治療を要するような日が来てしまうことを、IWJは強く懸念する。