「豊洲の新市場を開場しないから、どんどんお金が消えてゆく」という、一部マスコミの論調が、いかに間違ったものであるかが、明らかになった。
豊洲市場の経済性などを検証する東京都の市場問題プロジェクトチームの5回目の会議が2017年1月25日に東京都新宿区にある東京都庁で開かれ、豊洲市場が開場した場合の収支試算結果を都が報告した。
(取材・文:青木浩文)
特集 築地市場移転問題
「豊洲の新市場を開場しないから、どんどんお金が消えてゆく」という、一部マスコミの論調が、いかに間違ったものであるかが、明らかになった。
豊洲市場の経済性などを検証する東京都の市場問題プロジェクトチームの5回目の会議が2017年1月25日に東京都新宿区にある東京都庁で開かれ、豊洲市場が開場した場合の収支試算結果を都が報告した。
■ハイライト
同プロジェクトチームの菊森淳文氏の説明によれば、東京都の卸売市場について、これまで数値による経営計画は存在しなかったとのこと。
この報告の中で、東京都中央卸売市場管理部の財政調整担当課長は、豊洲市場の収支について、市場業者が都に支払う使用料などの収益が年間で68億円と見込まれるのに対し、市場の施設の減価償却費を含めると支出は166億円となり、年間でおよそ100億円の赤字になるという、衝撃の試算結果を明らかにした。
財政調整担当課長はその一方で、減価償却費を除いた場合の収支はほぼ均衡しているため、10年以上市場を運営できるだけの資金があると解説した。
これに対して同プロジェクトチームの座長である小島敏郎氏は、「『原価償却を考えなくても経営は大丈夫だ』という議論になると、例えば60年経って耐用年数が来た時に、税金でつくるのか? 企業会計は税金を投入しないで経営を回していくのが原則。(原価償却を考えなくてもよいのだとなると)税金投入を前提としていないだろうか」との疑問を呈した。
また、小島氏は「メディアの皆さんから、『豊洲を開場しないから一日500万円かかって、もったいないじゃないか』と言われ続けてきた。しかし、開場したほうがもっと大変になる。今回はそれを数字にしただけだ」との見方を示した。
その上で小島氏は、築地、食肉、大田など都内11の市場(豊洲市場を除く)の収支を合算して経営を管理する「中央卸売市場会計」の仕組みについて触れ、「11市場が使うお金が、豊洲の赤字でどんどん消えていくという構造なのではないか」と指摘した。
財政調整担当課長は、「生鮮食料品を都民に安定的に提供するとういう使命のなかで、豊洲市場は必要だったのだろう」などと説明するにとどまった。
IWJは豊洲市場移転に関わる問題について、2010年から継続的に取材活動を行っている。以下の特集もぜひ、ご確認いただきたい。
なお、2月10日には、岩上安身が『築地移転の闇をひらく』(大月書店)の共著者である、宇都宮健児弁護士、東京中央市場労働組合執行委員長の中澤誠氏、一級建築士の水谷和子氏にインタビューをする。ぜひ、ご視聴いただきたい。
水谷氏は、2016年11月10日(木)に日本消費者連盟(以下、日消連)と食の安全・監視委員会が主催した「やっぱり築地市場がいい!! 豊洲移転を中止させよう! 緊急集会」に登壇した際、この2月に開催される都議会で仲卸業者への補償などが話し合われることを指摘し、注目をうながした。2月の都議会にもぜひ、ご注目いただきたい。