日中戦争中の1937年に起きた南京大虐殺を否定する書籍を客室内に置いていたことから、中国を中心に「炎上」状態となっているAPAホテル。

　「南京大虐殺はありえないことだ」などと記したアパグループ代表・元谷外志雄（もとや としお）氏の書籍『本当の日本の歴史 理論近現代史学Ⅱ』の内容を批判する動画が投稿された中国版ツイッター「微博（ウェイボー）」では、APAホテルに対する中国人の批判的書き込みが相次いでいる。

▲六本木駅前のAPAホテル

　しかし、アパグループによる右派的な言動は、今に始まったことではない。

　元谷氏が代表を務める「公益財団法人アパ日本再興財団」が主催する「真の近現代史観 懸賞論文」第1回最優秀賞を受賞したのは、あの田母神俊雄氏の「日本は侵略国家であったのか」という「論文」。田母神氏はこの「論文」で「張作霖爆殺事件はコミンテルンの陰謀だ」などという妄想を展開し、2008年10月に自衛隊航空幕僚長を免職となった。

　なお、同論文は右派の言論人からも多くの批判が寄せられ、『慰安婦と戦場の性』などの著作がある秦郁彦氏は「論文というより感想文に近いが全体として稚拙と評せざるをえない。結論はさておき、根拠となる事実関係が誤認だらけで論理性もない」と酷評した。

　田母神氏はこの「妄想」論文で賞金300万円を得たが、2014年の東京都知事選の際、立候補した田母神氏を応援演説したのが作家の百田尚樹氏である。百田氏もまた、特攻隊を美化した『永遠の０』という「ファンタジー」で大儲けをした。

▲2014年、田母神氏は東京都知事選に立候補し、都内各地で街頭演説を行った。隣は応援演説に駆け付けた作家の百田尚樹氏。百田氏は他の候補者を「人間のクズ」と罵倒した

• 田母神俊雄「日本は侵略国家であったのか」（真の近現代史観 懸賞論文HP）

　他にもアパグループは、日本最大の右派組織「日本会議」とも深いつながりがある。2015年11月10日に日本会議が主導する「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が日本武道館で開催した「今こそ憲法改正を！武道館一万人大会」では、日本会議事務総長の椛島有三氏らと並び、元谷氏と夫人の芙美子氏の姿が壇上にあった。

▲「今こそ憲法改正を！武道館一万人大会」では、安倍総理からのビデオメッセージが流された

• 今こそ憲法改正を！武道館一万人大会 2015.11.10

　さらにアパグループは、安倍総理の資金源となっているとも言われる。元谷夫妻は安倍氏の後援会「安晋会（あんしんかい）」の会員で、月に1回、元谷氏の自邸で開催される「日本を語るワインの会」（2005年10月12日）に安倍総理が他の「安晋会」メンバーらとともに出席したこともあった。

▲元谷氏が主催する「日本を語るワインの会」に出席した安倍総理

　安倍総理、日本会議、そしてアパグループ――。かつての大日本帝国による過ちをなかったことにしようとする歴史修正主義者たちは、いずれも密接なつながりを持っていると考えられる。IWJでは現在、こうした歴史修正主義者たちの策動について、海外メディアの反応なども踏まえつつ、取材を進めている。近日中に「IWJ検証レポート」として記事をアップする予定なので、ご注目いただきたい。

　また本日1月21日より、「シリーズ特集・アパホテル事件～全世界から指弾される歴史修正主義の罪と1937南京事件の真実」と銘打ち、南京大虐殺を扱った岩上安身による過去のインタビューを再配信するので、こちらもぜひ、あわせてご視聴いただきたい。

　なお、過去にAPAホテルに宿泊したことのある岩上安身は、一消費者としての立場から、その泊まり心地について連投ツイートを行った。こちらも「岩上安身のツイ録」としてアップしたので、あわせてご一読いただきたい。

• 【岩上安身のツイ録】狭い部屋、異様に低い天井、ゴテゴテと多い配布物・・・南京大虐殺否定で「炎上」中のAPAホテル、実際に宿泊した一消費者としての感想 2017.1.20