「ひそかにIS(自称『イスラム国』)に対する金融および兵たん支援を行うカタールやサウジ政府に対し、我々は外交手段や昔ながらの諜報機関を使った手法で圧力をかけなくてはならない」
- Congrats!(ウィキリークスが公開した2014年9月27日付のジョン・ポデスタ氏からヒラリー・クリントン氏へのメール文面、下記に8月17日付のヒラリー氏のメールがスレッドとしてつながっている)
ウィキリークスが暴露した、現在米大統領候補ヒラリー・クリントン氏から選挙対策本部長を務めるジョン・ポデスタ氏へのメールの一説である。日付は2014年8月17日。国務長官を退任した6ヶ月後で、大統領選への出馬を表明する8ヶ月前のやりとりである。
ウィキリークスがヒラリー陣営のメール5万通を暴露
2016年10月8日から暴露サイト・ウィキリークスは、クリントン大統領候補陣営で選挙対策本部長を務めるジョン・ポデスタ氏の何千通もの電子メールを随時公表し、陣営スタッフ同士の交信内容を暴露している。そのメールの総数は全体で5万通にもおよぶそうだ。
ヒラリー氏は米国の傀儡国家によるIS支援をどれだけ容認しているのか?
カタールとサウジアラビアはシリアの「内戦」(事実上、米露の代理戦争といったほうが実情に即しているとも言われている)の同盟国だ。その同盟国がIS(自称『イスラム国』)を支援していることをヒラリー氏が認識していたことを前述のメール文面は明らかに示している。
サウジとカタールによるISへの支援は、これまでにも様々な傍証があげられ、臆測が語られてきたが、ここまで明瞭な証拠は初めてではないだろうか。これは、米国が傀儡国家を通じてISに対して間接的な支援をしているに等しいともいえるのではないか。しかも、それをヒラリー氏までが知っていたという事実。ヒラリー氏は、こうした米国の、ISへの間接支援戦略をある程度是認していた可能性はないだろうか。
そして今後の大統領選の展開にこの問題はどのような影響を与えるのか?
▲「ロシアはISに対してまったく関心を払わない」とディベートで述べるヒラリー・クリントン候補(ウィキメディア・コモンズより転載)
2016年10月9日に行われたトランプ氏との第2回目のディベートで、ヒラリー氏は「ロシアはISに対してまったく関心を払わず、アサド政権維持のみに意欲を燃やしている」と述べ、一方のトランプ候補は、「決してアサド氏が好きなわけではないが、アサド政権や、ロシア、イランはISと戦っていて、彼らは我々の弱気な外交姿勢のために協力体制を取っている」とシリアにおける米国の戦略姿勢を批判した。
トランプ氏の対IS戦略への批判にAPが迷走 「アサド大統領がISと戦っていないとするトランプ氏の主張は部分的に正しい」とトランプ氏の発言をねじ曲げる
かねてからこうしたトランプ氏の主張を裏付ける報道を行っていたAP通信は、なぜかトランプ氏のこの主張は間違っているという記事を出し、その後、「アサド大統領がISと戦っていないとするトランプ氏の主張は部分的に正しい」と、トランプ氏の主張を逆にねじ曲げたタイトルをつけて、同記事を「訂正」した。
- After Palmyra, Syrian troops take another IS-controlled town(アサド政権がISと戦っているというトランプ氏の主張を裏付けるAP通信の記事、「パルミラ奪還後、シリア政府軍がさらなるIS支配下の街も手中に」、2016年4月3日)
こうしたトランプ氏の対IS戦略への批判やこれに関するメディアの迷走は、同氏の女性に対するあまりにも非常識で侮蔑的な発言がふたたび報じられたために埋もれることとなったが、今後注目を集めれば大統領選に影響する可能性もあるのではないか。
▲ヒラリー氏とのディベートの場で不適切な発言を謝罪するトランプ氏(ウィキメディア・コモンズより転載)
一方トランプ候補は、一連のウィキリークスによるヒラリー陣営のメール暴露について、「誠実さを欠いたメディアはウィキリークスがもたらしている情報をほとんど取り扱わない。とんでもないごまかし!不正な制度だ!」とツイートしている。