「政府は一握りの億万長者のものではない」―。
ウォール街を痛烈に批判し、「社会主義者」を自認するバーニー・サンダース氏が、民主党の候補者指名レースで本命とされてきたヒラリー・クリントン氏を猛追している。
(文 安道幹)
「政府は一握りの億万長者のものではない」―。
ウォール街を痛烈に批判し、「社会主義者」を自認するバーニー・サンダース氏が、民主党の候補者指名レースで本命とされてきたヒラリー・クリントン氏を猛追している。
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2016年2月1日に実施されたアイオワ州党員集会では、共和党はテッド・クルーズ上院議員が勝利した。様々な暴言で物議を醸しているドナルド・トランプ氏は、2位にとどまった。2月2、3日両日に行われた世論調査では昨年12月中旬の支持率と比較し、トランプ氏は25%、クルーズ氏、ルビオ氏が共に21%でトランプ氏に迫り、「三つどもえ」の構図が鮮明になってきたようだ。トランプ氏は9ポイントの大幅減となり、いよいよその人気に陰りが出てきたとの見方もある。
一方民主党は、当初の予想を裏切る大接戦となり、クリントン氏49.9%、サンダース氏が49.6%の得票数を得て、史上最も僅差となる0.3ポイント差で、かろうじてクリントン氏が勝利した。サンダース氏が「これは互角の戦いだ」とコメントしているように、アイオワは事実上「引き分け」だとする見方が多いようだ。
クルーズ氏は、テキサス州選出の上院議員だ。テキサス州といえば、あのブッシュ・ジュニアのお膝元である。2000年の大統領選ではブッシュの国内政策担当アドバイザーを務め、2001年にはブッシュ大統領の任命によって司法省の副次官に就任している。2013年9月には医療保険制度改革(オバマケア)に反対して21時間以上のフィリバスター(議事妨害)演説を行い、一躍有名となった。
「銃規制反対」「人工妊娠、中絶反対」「同性婚反対」「不法滞在の移民に市民権を与えることに反対」「メキシコとの国境を守る警備隊を3倍に増強することを提唱」など、いかにも共和党らしい政策を掲げ、「信仰面」を前面に打ち出すことで、共和党支持者からの支持を伸ばしているとされる。
サンダース氏は「社会主義者」を自認し、政治家として一貫して弱者の擁護を訴え、格差に憤慨し、TPPについては「大企業とウォール街の勝利だ!」と批判してきた。2010年12月13日には、ブッシュ政権から続いていた大企業の減税措置の延長をめぐって、こちらも8時間半に及ぶフィリバスターを実施し、行き過ぎた新自由主義を批判した。
サンダース氏は今回の大統領予備選で「最低賃金の15ドルへの引き上げ」「公立大学の授業料無料化」「医療の国民皆保険の徹底」「富者へ課税強化、企業優遇廃止」「TPP廃止」「女性賃金を男性と同一化」などを公約として掲げ、若い世代から絶大なる支持を得ている。29歳以下の民主党党員のうち、クリントン氏支持が14%に対し、サンダース氏は84%というデータもある。
2月9日(火)には、ニューハンプシャー州で予備選が控えているが、同州は保守色が強いといわれるアイオワ州に対して、リベラル派の支持者が圧倒的に多いとされている。CNNテレビなどが同州で2月4日までに行った世論調査では、民主党は、なんとサンダース氏支持が61%でクリントン氏30%にダブルスコアでリードしているという。
サンダース氏は、クリントン氏がウォール街の富裕層から選挙資金や高い講演料を受け取っていることを、討論会などでの攻撃の材料としている。例えば、ゴールドマンサックス社が3回の講演料として、クリントン氏に67万5000ドルを支払ったとされているが、その原稿の内容についてクリントン氏は公開を拒否しているようだ。
ニューハンプシャー州の予備選は、この後に続く大統領予備選に大きな影響力をもつと言われているため、ここでサンダース氏が勝利すれば、今後、民主党の大統領指名候補でヒラリー氏を抜いて、本命となる可能性は大である。
昨年9月にイギリスの労働党党首に選ばれたジェレミー・コービン氏といい、サンダース氏といい、ヨーロッパやアメリカでは経済のグローバル化がもたらす格差社会に対し、明瞭に対抗的な政治家が登場している。サンダース氏は、米国の景気後退の責任は、貪欲で非合法な行動があったウォール街にあると述べ、金融改革を強くアピールしている。
2015年1月22日の「ダボス会議」(世界経済フォーラム)でも、「前例のないほど格差が拡大し、2014年時点で、世界人口の1%の最富裕層が世界の富の半分を独占しており、最富裕層85人(2010年時点では388人)の資産総額が、世界人口の所得下位半分(約36億人)の総資産額に匹敵する」として、格差是正を強く勧告している。
またアメリカについては「同国の国民総所得に対して、高額所得者上位1%の人々の所得が占める割合は、1930年代の大恐慌以来増え続け、現在は過去最高となっている」として、その原因を「長期にわたる金融規制緩和」だとしている。
世界中でこれほどまでに格差が広がっているのはなぜなのか? それに対する有効な処方箋はあるのか? IWJでは、グローバル経済の実態を「金融権力」や「国際金融複合体」といった新たな概念で分析する経済学者、本山美彦氏へ、本日2月9日14時からIWJ CH1で岩上安身がインタビューを行う。
またインタビューの録画は後ほどアーカイブで全編公開する。リアルタイムで見逃した方は会員登録いただき、じっくりとご覧いただきたい。
(…会員ページにつづく)
アイオワも勝利していれば相当のインパクトだったんですがねぇ、、。トスが全部ヒラリー勝利ってのも何だか胡散臭い、、。
まぁ、でもサンダース氏に勝って欲しいなァ!
安倍達にも相当の打撃になるぞ!!