【特番・第4弾】運命の分かれ道・2016年夏の参院選を徹底予想分析スペシャル!~改憲勢力の3分の2議席獲得の野望を阻止できるか!?危うしニッポン! ゲスト:元日経新聞政治部記者・宮崎信行氏、司会:岩上安身、プレゼンター:IWJ記者 2016.6.21

記事公開日:2016.6.22取材地: テキスト動画独自
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(テキスト・スタッフ 関根かんじ)

特集 2016年 参議院議員選挙 特集ページ | IWJ選挙報道プロジェクト

※7月7日テキストを追加しました!

 「改憲勢力を、絶対に勝たせないこと。もし、彼らが3分の2議席を取ったら、その後の日本では『アリバイ選挙』はあるだろうが、本当の選挙はなくなる。取り返しがつかないことになる」──。

 「ヘビー級国会ウォッチャー」の宮崎信行氏(元日経新聞政治部記者)は、今回の参院選を分析する中で、改憲発議が可能になる3分の2議席の重要性を説き、安倍政権が狙う改憲、特に、緊急事態条項の恐ろしさを訴えた。

 2016年6月21日、夏の参院選を徹底分析する特別番組の第4弾、「運命の分かれ道・2016年夏の参院選を徹底予想分析スペシャル!~改憲勢力の3分の2議席獲得の野望を阻止できるか!?危うしニッポン!」を配信した。ゲストに宮崎氏を迎え、司会は岩上安身、プレゼンターはIWJ記者(原佑介、城石エマ、平山茂樹)が務めた。最終回となるこの日は、各選挙区の当落予想と全国比例区の分析を行った。

 宮崎氏の予想では、選挙区の改選73議席(1人区32議席。複数区41議席)中、自民34、公明6、民進16、共産1、おおさか維新1、無所属(野党共闘)4で、改憲勢力41対21プラス・マイナス1だという。「いい闘いになる。選挙区がダメでも比例区があるので、あきらめずに改憲阻止の票を積み上げましょう」と呼びかけた。

 参議院242議席のうち96議席が比例代表で、今回は改選48議席を争う。有権者は、党名もしくは比例区の候補者名を記入して投票、政党名と個人名の得票数によって、多い順に政党ごとに議席が配分されるドント方式である。

 この全国比例区で注目されるのが、社民党党首・吉田忠智氏と副党首・福島みずほ氏の当落だ。「福島さんが当選するには、200万票以上が必要」という宮崎氏に、岩上安身は、「TPPや安全保障に関する国会質疑などで、幅広く活躍してきた福島さんは、とても重要な存在だ。落選は考えられない」と応じた。

 全国から票を集める比例では、自民党は知名度の高い候補者を揃える傾向がある。生活の党の谷亮子議員には、「自民党から出馬」というスクープが流れていた(結果的に出馬せず。参院選後、離党することを表明)。また、自民党は元SPEEDの今井絵理子氏、独立総合研究所社長の青山繁晴氏、各業界団体の幹部クラスを担ぎ出している。宮崎氏は、自民党の選挙戦略の上手さに言及し、「特に、今回は厚労省予算が増えているためか、医療系団体関係者の出馬が多い」と指摘した。

 一方で民進党は、過去最高の12人(全部で22人)の労組、連合関係者を擁立。共産党は、野党統一候補のために選挙区で独自候補の擁立を取りやめた影響があり、出馬は43人。国民怒りの声は、10人が名を連ねた。

 宮崎氏は、「まだまだ、結果はわからない。あまりむずかしく考えず、とにかく、改憲勢力を絶対に勝たせないことだ」と力を込めた。

記事目次

■イントロ

  • 日時 2016年6月21日(火) 18:00~
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

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「公示日の時点で、結果は半分は決まっている」という選挙の鉄則。公示1日前の見立ては五分五分。予断は許されない!

岩上安身(以下、岩上)「今回は比例区の分析と、公示日直前の情勢も踏まえて、各選挙区の当落予想をします」

宮崎信行氏(以下、宮崎・敬称略)「公示日の時点で結果は半分決まっている、という選挙の鉄則があります。逆に言えば、半分はわからないということ。加えて近年はネットメディアが影響を及ぼすようになってきました。

 たとえば、3年前、大阪選挙区では公示日の段階で、『民主党の梅村聡氏と、共産党の辰巳孝太郎氏が最下位を争っている』との分析がありました。その後、梅村氏は沈んだままで落選してしまった。以前は、当落スレスレの候補者に対して少し厳しい見方が流れると、その陣営は気を引き締めてがんばるので上がってこられたんです」

岩上「人間の心理としては、自分の1票を死に票にしたくないので、他の候補者に変えてしまうことはありえますからね。かといって、われわれが(票の読みを)改憲勢力に厳しく、改憲阻止勢力に甘くしてもいけない。そこは事実として伝えるのがジャーナリズムです。

 ただし、この参院選で自公、おおさか維新、日本のこころを大切にする党、新党改革などの改憲勢力が3分の2(162議席)を取ったら、衆参両院で改憲発議ができる。そして、緊急事態条項ならば一発で憲法を麻痺させられるので、とても危険なことになる。それだけは、重ねて警告します」

宮崎「しかし、ほとんどの人たちは『3分の2議席』の意味もわかっていないでしょう。公示1日前の時点で、私の見立ては五分五分です。そして、改憲勢力の中心は、やはり自民党なのです」

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IWJ原佑介記者(以下、原)「全国比例区ですが、2004年、2007年、2010年と民主党がトップでしたが、2013年の参議院選挙で一気に減りました。今回は、民進党に党名が変わっている。有権者が比例区用紙に『民主党』と書いてしまうことが懸念されます。大手メディアの世論調査では、バラツキがありますが、民進党は少し伸ばしています。共産党は、公明党と同じくらい。おおさか維新も低くはありません。

 前回の参院選全国比例区で、17万票を集めたものの惜敗したミュージシャンの三宅洋平氏が、6月14日、参院選東京選挙区への立候補を表明しました。『今回、改憲勢力が78議席以上取ったら、改憲ですから。(改選数)121のうちの74議席を取られたら、ジ・エンド』と改憲への懸念を語り、無党派層や若者層の掘り起こしを狙います。三宅氏を応援する山本太郎参議院議員は、『やっぱり、彼しかいない』と全面的にバックアップする体制です」

注:IWJでは、自民、公明、おおさか維新の会、日本のこころを大切にする党など、改憲勢力の78人当選で、改憲発議のできる全体の3分の2(162議席)になると見ていた。しかし7月5日の産経新聞の報道によれば、「今回は改選されない無所属・諸派の議員10人のうち、少なくとも4人が改憲に前向きな考えを示していることが分かった」としている。

この報道が事実であれば、改憲勢力が3分の2の議席を得るために必要な議席は、78議席から74議席に減った。「74議席を取られたら」とした三宅氏は、自民党の補完勢力の動きを含めて予測していると思われる。

宮崎「私は、この番組の第1弾で、『東京選挙区の6人目は、山本太郎的な存在になる』と言いましたが、そうなるかもしれません。山本太郎議員の周辺では、かなり前から著名な芸能人の名前も挙がっていましたが、最終的に三宅さんに白羽の矢が立ったのでしょう」

岩上「生活の党では、山本太郎議員が三宅氏を支援することはOKだそうです。票の食い合いにならないか気になりますが、山本議員は、これまで選挙に行かなかった層を動かす、と言っています」

北海道、東北、関東選挙区の各候補者、ズバリ当落予想! 公明党が危ない!? 東京選挙区の行方はどうなる?

 ここから、宮崎氏とともに各候補者の当落予想を行います。以下、◎=安全圏、○=有利、△=やや有利、▲=劣勢、X=落選。なお、立候補者すべてを評価していません。あらかじめご了承ください。文中、( )でIWJ記者のコメントを挿入。また、IWJが調べた予想と宮崎氏の意見が違うところは、宮崎氏の予想を記してあります。32の1人区の野党は、すべて野党統一候補。

宮崎「【北海道選挙区(3人区)】○自民党現職・長谷川岳氏、△自民党新人・柿木克弘氏、△民進党現職・徳永エリ氏、△民進党元経産相・鉢呂吉雄氏、△共産党新人・森英士氏(新党大地が柿木氏支援を表明した/平山記者)。【青森選挙区(1人区)】△自民党現職・山崎力氏、△民進党・田名部匡代氏。田名部候補が、やや優勢です。

 【岩手選挙区(1人区)】△自民党新人・田中真一氏、○無所属新人・木戸口英司氏。【宮城選挙区(1人区)】○自民党現職・熊谷大氏、△民進党現職・櫻井充氏。【秋田選挙区(定数1)】○自民党現職・石井浩郎氏、△民進党・松浦大悟氏。【山形選挙区(定数1)】△自民党新人・月野薫氏、○無所属・舟山康江氏。舟山候補が優勢です。

 【福島選挙区(定数1)】△自民党法務大臣・岩城光英氏、○民進党・増子輝彦氏(JAが支援を表明、その票の行方が気になる/原記者)。前回、森まさこ議員がダブルスコアで勝っているので、自民党の岩城氏が勝つ可能性もある。

 【茨城選挙区(定数2)】◎自民党現職・岡田広氏、○民進党現職の元農水相・郡司彰氏、▲共産党新人・小林恭子氏、▲おおさか維新の会新人・ 武藤優子氏。【栃木選挙区(定数1)】◎自民党現職・上野通子氏、▲無所属・田野辺隆男氏。【群馬選挙区(定数1)】◎自民党現職・中曽根弘文氏、▲民進党・堀越啓仁氏。

 【埼玉選挙区(定数3)】◎自民党現職・関口昌一氏、○民進党現職・大野元裕氏、△公明党現職・西田実仁氏、△共産党新人・伊藤岳氏、?おおさか維新の会新人・沢田良氏。【千葉選挙区(定数3)】△自民党現職・猪口邦子氏、◎自民党新人・元榮太一郎氏、○民進党現職・水野賢一氏、○民進党現職・小西洋之氏、△共産党新人・浅野史子氏(民進党は共倒れの可能性もあり、小西氏は焦っている/原記者)。本気で言いますが、小西議員の当落は、100年後、歴史学者に検証されると思います。

 【東京選挙区(定数6)】◎自民党現職・中川雅治氏、◎民進党現職・蓮舫氏、◎公明党現職・竹谷とし子氏、◎共産党新人・山添拓氏。残り2議席を争うのが、?自民党新人・朝日健太郎氏、△民進党現職・小川敏夫氏、△おおさか維新の会・田中康夫氏、?無所属・三宅洋平氏、?国民怒りの声・小林興起氏、X社民党新人・増山麗奈氏、X新党改革新人・高樹沙耶氏の7名(朝日健太郎氏は元ビーチバレー選手。IWJ記者に自民党から立候補した理由を問われて、『アベノミクスに賛同した。これから効果が出る』と答えた/平山記者)。

 舛添東京都知事の辞任の影響は相当ありますね。しかし、公明党が議席を落とすことにはならないでしょう。

 【神奈川選挙区(定数4)】○自民党現職・三原じゅん子氏、○民進党現職・金子洋一氏、△民進党現職・真山勇一氏、○公明党新人で元防衛大学准教授・三浦信祐氏、△共産党新人・浅賀由香氏、△おおさか維新の会新人・丹羽大氏、X社民党新人・森英夫氏、○無所属(自民党推薦)・中西健治氏。

 神奈川県は4議席中2人か、もしかすると3人は改憲派になります」

東海・中部・近畿地方選挙区の各候補者、ズバリ当落予想! 長野選挙区の民進党新人・杉尾氏が失速気味!? 京都選挙区では自民党・二之湯氏が劣勢とも!

宮崎「【新潟選挙区(定数1)】○自民党現職・中原八一氏、△無所属(生活の党)・森裕子氏。森氏が追い上げ中です。【富山選挙区(定数1)】◎自民党現職・野上浩太郎氏、△無所属新人・道用悦子氏。【石川選挙区(定数1)】◎自民党現職・岡田直樹氏、△無所属新人・柴田未来氏。【福井選挙区(定数1)】◎自民党現職・山崎正昭氏、△無所属新人・横山龍寛氏」

岩上「私は、連合福井事務局長の横山龍寛氏にインタビューしました。『いい候補者がいなくて、連合から出すしかない』と自ら立候補した理由を明かしました。福井は稲田朋美自民党政調会長の地元ですが、稲田さんは『国民の生活が第一という政治は間違っている。国体のためだ』と主張しています」

宮崎「【山梨選挙区(定数1)】△自民党新人・高野剛氏、○民進党新人・宮沢由佳氏(元参議院議員の米長晴信氏も出馬するので、野党票が割れるとの声もある/平山記者)。【長野選挙区(定数1)】△自民党現職・若林健太氏、○民進党新人・杉尾秀哉氏。しかし、杉尾氏は伸び悩んでおり、公示日初日には岡田代表も急遽、応援に駆け付ける。

 【岐阜選挙区(定数1)】◎自民党現職・渡辺猛之氏、▲民進党現職・小宮山幸治氏。共産党が小宮山氏支援を表明。【静岡選挙区(定数2)】◎自民党現職・岩井茂樹氏、◎民進党新人・平山佐知子氏、△共産党新人・鈴木千佳氏。静岡は順当でしょう。【愛知選挙区(定数4)】○自民党現職 ・藤川政人氏、△公明党新人・里見隆治氏、△民進党現職・斎藤嘉隆氏、△民進党新人・伊藤孝恵氏、△共産党新人・須山初美氏、△おおさか維新新人・奥田香代氏、△社民党新人・平山良平氏、△こころ新人・井桁亮氏。ここは、まだわかりません。

 【三重選挙区(定数1)】△自民党新人・山本佐知子氏、○民進党現職・芝博一氏。【滋賀選挙区(定数1)】△自民党新人・小鑓隆史氏、○民進党現職・林久美子氏。【京都選挙区(定数2)】◎自民党現職・二之湯智氏、○民進党現職・福山哲郎氏、△共産党新人・大河原寿貴氏。しかし、最近は自民党の二之湯氏が劣勢と伝え聞きます。

 【大阪選挙区(定数4)】○自民党新人・松川るい氏、◎公明党現職・石川博崇氏、△民進党現職・尾立源幸氏、◎おおさか維新新人・浅田均氏、△おおさか維新新人・高木佳保里氏、△共産党新人・渡部結氏。【兵庫選挙区(定数3)】△自民党現職・末松信介氏、△公明党新人・伊藤孝江氏、△民進党現職・水岡俊一氏、△おおさか維新新人・片山大介氏、▲共産党新人・金田峰生氏。【奈良選挙区(定数1)】○自民党新人・佐藤啓氏、△民進党現職・前川清成氏、△おおさか維新新人・吉野忠男氏。【和歌山選挙区(定数1)】◎自民党現職・鶴保庸介氏、▲無所属新人(共・社民・生活推薦)・由良登信氏」

中国・四国・九州地方選挙区の各候補者、ズバリ当落予想! 愛媛の野党統一候補・永江氏、沖縄の伊波氏は優勢!? 初の市民連合統一候補、熊本の阿部氏にも注目

宮崎「【岡山選挙区(定数1)】△自民党新人・小野田紀美氏、△民進党新人・黒石健太郎氏。現状では、やや自民党優勢です。【広島選挙区(定数2)】◎自民党現職・宮沢洋一氏、○民進党現職・柳田稔氏、▲共産党新人・高見篤己氏、△おおさか維新新人・灰岡香奈氏、▲こころ新人・中丸啓氏。【鳥取・島根選挙区(定数1)】○自民党現職・青木一彦氏、△無所属新人・福島浩彦氏。【山口選挙区(定数1)】○自民党現職・江島潔氏、△無所属新人・纐纈厚氏。

 【徳島・高知選挙区(定数1)】○自民党現職・中西祐介氏、△無所属新人・大西聡氏。高知の票次第で、まだわかりません。【愛媛選挙区(定数1)】△自民党現職・山本順三氏、○無所属新人・永江孝子氏。平和安保法制特別委員だった自民党の山本氏は論功行賞で国交副大臣に。しかし、永江候補が優勢です。【香川選挙区(定数1)】◎自民党現職・磯崎仁彦氏、△共産党新人・田辺健一氏。

 【福岡選挙区(定数3)】○自民党現職・大家敏志氏、○公明党新人・高瀬弘美氏、○民進党新人・古賀之士氏、△共産党新人・柴田雅子氏、△おおさか維新新人・森上晋平氏、△社民新人・竹内信昭氏、△こころ新人・石井英俊氏。共産党の柴田さんが伸びてきています。【大分選挙区(定数1)】△自民党新人・古庄玄知氏、○民進党現職・足立信也氏。ここは、五分五分でしょう。【熊本選挙区(定数1)】○自民党現職・松村祥史氏、△無所属新人・ 阿部広美氏。市民連合で野党統一候補を一番早く立てた注目の選挙区です。【宮崎選挙区(定数1)】◎自民党現職・松下新平氏、△無所属新人・読谷山洋司氏。

 【佐賀選挙区(定数1)】○自民党現職・福岡資麿氏、△民進新人・中村哲治氏。中村さんは奈良から国替えの元衆議院議員です。【長崎選挙区(定数1)】○自民党現職・金子原二郎氏、△民進新人・西岡秀子氏。【鹿児島選挙区(定数1)】◎自民党現職・野村哲郎氏、△無所属新人・下町和三氏。【沖縄選挙区(定数1)】△自民党現職・島尻安伊子氏、○無所属新人・伊波洋一氏。伊波さんがかなり優勢です。

 現状、自民34、公明6、民進16、共産1、おおさか維新1、無所属(野党共闘)4。選挙区に関しては、改憲勢力41対改憲阻止勢力21(+1?)。このほかに比例もありますから、いい闘いです」

全国比例区。自民党は「舛添、沖縄(県議会)、甘利」の三重苦!? しかし、自民党から元SPEEDの今井絵理子氏、独立総合研究所の青山繁晴氏まで出馬表明!

岩上「全国比例代表に移ります。改憲勢力と非改憲勢力に分けて説明します。プレゼンターは城石エマ記者です」

IWJ城石エマ記者(以下、城石)「改憲勢力の中心である自民党ですが、『舛添、沖縄(県議会)、甘利』の三重苦で、比例票が減ることを懸念していると言われています」

宮崎「比例代表では、個人名もしくは政党名を記入して投票します。政党名で数10万票得れば、候補者は当選の可能性がある。市町村単位で投票数が明らかになるので、組織の支援者は追求されてしまうので大変です。そして、今回は舛添東京都知事の問題が、思ったより大きく響いています。沖縄女性殺人事件の背景にある、日米地位協定の問題もそうです。こういう社会に広がるモヤッとした空気を、どう切り取って拡散していくかですね。

 今回、自民党から日本診療放射線技師会全国理事の畦元将吾(あぜもと しょうご)氏が、比例区に立候補します。放射線技師の代表を参議院に送りこむため、技師会も応援している。もし、岩上さんが放射線技師で、改憲阻止派だったら、投票はどうしますか?」

岩上「まったく知識がなかったら、この人に投票するかもしれません。でも、惑わされてはいけません。この選挙は、自分が属する業界団体の利益のような小さな話じゃない。改憲されて戦争に突入したら、医師も看護士も放射線技師も従軍させられるかもしれないんです」

城石「では、注目の自民党比例区候補者について。元SPEEDメンバーで歌手の今井絵理子氏が、自民党公認候補として出馬表明をしました。私は、今井氏の事務所開きを取材しましたが、ファンが大勢来ていて、『政治はわからないが、長年、今井さんのファンなので応援する』と言っていました。また、インターネットの人気投票で比例代表候補を選ぶ企画があり、そこでトップだった作家の伊藤洋介氏を、自民党は公認しています。

 独立総合研究所社長でジャーナリストの青山繁晴氏も、自民党から出馬表明。安倍総理から『参院選に出てもらいたい』と電話があったと明かしました。週刊文春は『生活の党副代表の谷亮子参院議員が、自民党の比例区から出馬する』と報じました(※)。これには、生活の党の玉城デニー議員も驚いたと言っていました」

(※)その後、谷亮子氏は参院選の出馬を見送った。任期満了の7月25日を待って離党。事実上の政界引退となった。

全国比例区・改憲勢力の顔ぶれ──自民党、公明党、おおさか維新の会。各業界団体幹部を引っ張り出す、選挙戦略に長けた自民党。平和を願う創価学会とは、別ものになった公明党

※参議院全国比例区は、非拘束名簿です。紹介する候補者名の順は、当選優位の順ではありません。

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城石「まず、改憲勢力。自民党現職は、阿達雅志氏、宇都隆史氏、片山さつき氏、高階恵美子氏、藤井基之氏、堀内恒夫氏、水落敏栄氏、山谷えり子氏。元職では、大江康弘氏、山田宏氏、園田修光氏。新人では、今井絵理子氏、伊藤洋介氏、足立敏之氏、進藤金日子氏、竹内功氏、徳茂雅之氏、増山壽一氏、畦元将吾氏、小川克巳氏、自見はなこ氏、宮島喜文氏、藤木眞也氏、中西哲氏、青山繁晴氏の計25名です」

宮崎「自民党は、医療、製薬関係など各業界団体の幹部を持ってきて、選挙戦略がうまい。今回、厚生省系が7人と過去最多。いかに、厚労省予算が増えているかの証しですね。他の利権団体では、全国郵便局長会相談役の徳茂雅之氏がいます」

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城石「公明党現職から、横山信一氏、長沢広明氏、浜田昌良氏、谷合正明氏、秋野公造氏。新人では熊野正士氏など。(公示日17名)。政務官がたくさんいますが、どういう人たちなんですか?」

宮崎「大臣、副大臣は70名いて、皇居での認証式がある。政務官に認証式はないが、副大臣とはっきり分けられません。各委員会で答えるのが政務官の仕事。また、政務官は必ずどこかの委員にならないといけなくて、採決に参加するのも仕事です。横山氏は農業利権の話しかしません。長沢さんも労働者派遣法を推進しています。ちなみに公明党は、あとで投票動向がわかるように、個人名の投票を指示します」

岩上「公明党は、もう、『平和の創価学会』とは関係なくなりましたね。利権と、政務官から副大臣や大臣の座を狙っているだけ。自民党っぽいです」

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城石「おおさか維新の会は、現職の片山虎之助氏、元職の梅村聡氏、樋口俊一氏、新人の新渡英夫氏、石井章氏、石井苗子氏、宇佐美孝二氏、儀武剛氏、串田誠一氏、坂井良和氏、嶋聡氏、鈴木宏治氏、鈴木望氏、高橋英明氏、中谷裕之氏、三宅博氏、矢野義昭氏、渡辺喜美氏(公示日で18名)です」

岩上「おおさか維新の会には、元職が多い。地域政党のはずが、沖縄、福井、静岡、埼玉などバラバラです。元みんなの党代表の渡辺喜美さんまでいて、議員の再生工場のように、あらゆる人たちが集まっている印象だ。立候補者がたくさんいることに意味があるのですか」

宮崎「おおさか維新の会が、全国比例でどれだけ議席を獲得するかは不確定要素です。ただ、全国から票を集めたい意図はわかります」

全国比例区・改憲勢力の顔ぶれ──日本のこころ、新党改革。完全に自民党の補完勢力。超右寄りの中山恭子・成彰夫妻。舛添知事がいた新党改革

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城石「日本のこころを大切にする党。新人の中山成彬氏、西村眞悟氏、ボギーてどこん氏、保江邦夫氏、矢作直樹氏の5名です」

岩上「中山成彬さんは、日本のこころを大切にする党の中山恭子代表の夫。極端な右翼の人たちの集団です。中山恭子代表は、拉致被害者家族会の元事務局長の蓮池透氏に対する国会での誹謗発言で有名になりました。また、堂々と、『緊急事態条項(新設)を』と言っている人です」

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城石「新党改革です。ここには舛添都知事もいました。現職の荒井広幸氏、現職の山田太郎氏、元職の平山誠氏、新人の朝倉秀雄氏、伊藤淳子氏、大坂佳巨氏、田中大介氏、福田晃三氏、藤岡佳代子氏の9名です」

宮崎「改憲の補完勢力ですね。平山氏は民主党にもいて、かつて鳩山由紀夫さんと居酒屋を共同経営していたこともある。山田氏は、安保法制附帯決議を朗読したと主張していますが、議事録には『聴取不能』で載っていません。そして、『安保法の附帯決議を出した』ことを、『安保法制の修正』とは言いません。連立与党の党首が『修正』という嘘を言ってはいけませんよ。民主主義を破壊する行為です」

岩上「こうして見ると、改憲勢力には特徴がありますね。比例代表で1議席を取るには120万票がいる、など言われていますが?」

宮崎「政党として1議席を取るためには、120万票から200万票が必要です。政党ですでに1議席あれば、(2議席目は)80万票でしょう」

全国比例区・非改憲勢力の顔ぶれ──過去最高の労組、連合系12人が立候補する民進党。ヘイトスピーチ対策法を成立させた有田芳生氏の2期目がかかる

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IWJ平山茂樹記者(以下、平山)「民進党候補者の現職では、有田芳生氏、石橋通宏氏、江崎孝氏、小野次郎氏、小林正夫氏、柴田巧氏、田城郁氏、田中直紀氏、那谷屋正義氏、難波奨二氏、西村正美氏、白眞勲氏、藤末健三氏、前田 武志氏。元職は、大河原雅子氏、川合孝典氏、轟木利治氏。新人は、鎌谷一也氏、濱口誠氏、藤川慎一氏、森屋隆氏、矢田わか子氏です。

宮崎「有田さんは、任期の最後に議員立法でヘイトスピーチ対策法を成立させた。その功績はすごい。参議院の少数野党が法案を成立させた老練な手腕に驚きました。

 民進党連合系は、過去最多の12人が出馬します。石橋さんは情報労連、小林さんは関東電力関連産業労連、田城さんはJR総連、難波さんは日本郵政グループ労組。スーパーに働く人たちも加盟し、日本で一番組合員の多いUAゼンセン出身の川合さん。轟木さんは基幹労連(鉄鋼・重工業系)出身。連合の神津里季生会長の出身母体で、彼は落選させられない。

 濱口さんは全トヨタ労連。自動車労連が負けたことはありません。直嶋正行議員の代替わりです。藤川さんはJAM副会長。町工場の労働組合です。森屋さんは私鉄総連出身者。矢田さんはパナソニックグループ労連で、電機連合初の女性候補。白さん、藤末さん、前田さんは、創価学会に批判的な宗教団体の支援を受けています」

岩上「安倍政権は防衛産業を押しています。宮崎さんは、基幹産業より電機労連の方が利害がある、とおっしゃいましたが、どういう意味でしょうか」

宮崎「三菱電機が電機連合で防衛産業に関わり、NECは無線産業です。三菱重工は組合員は少ない。川崎重工、小松、IHIなど、連合では聞きません。日立では、衆議院議員に1人いる。長妻昭議員はNEC労組の支援を受けていて、『NECが、軍需産業で日本第4位とは知らなかった』と発言しました。政治献金は受けていない、とも。情報労連はNTT以外の富士通などは目立ちません」 

全国比例区・非改憲勢力の顔ぶれ──改憲反対の共産党、社民党、生活の党、国民怒りの党。選挙巧者の生活の党・青木愛氏は1議席死守!? 福島みずほ氏300万票で、吉田党首も当確か! 国民怒りの声はどうなる?

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平山「共産党は1人区から比例に回るケースが多いので、42人が立候補しています。党本部でも、全国規模で活動している9人に絞っている。現職の市田忠義氏、田村智子氏、大門実紀史氏。新人の岩渕友氏、奥田智子氏、椎葉寿幸氏、武田良介氏、春名眞章氏、伊勢田亮子氏です」

宮崎「共産党は、政党名での投票を促しています。大事なのは、共産党で何議席取れるか。過去の例では、個人で5万票が入れば1議席取れる計算です。市田さん、大門さんも金融通で、アベノミクス批判を繰り広げている。田村さんは女性の党副委員長で、この3名は固いのではないか。共産党は、(野党共闘で)選挙区の候補者を取り下げたので、比例でどれだけ伸ばせるかにかかっています」

岩上「共産党の皆さまには、全員を紹介できず申し訳ありません。今回、野党共闘ができたのは、共産党の大きな決断によるものでした。しかし、党利党益から見た時に何議席を取れるのか、注目されます」

平山「社民党は、党首で現職の吉田忠智氏、副党首の福島瑞穂氏です(公示日7名)」

宮崎「社民党は党首と副党首の改選で、存亡を懸けた闘いになります。社民党全体で、何議席取れるか。福島さんが議席を得るためには200万票以上が必要です。300万票獲得だと、吉田さんも入るでしょう。しかし、最悪の場合は2人落選です。福島さんは、とてもクレバー。短いフレーズの使い方が本当にうまい。

 吉田さんも票を固めているはずです。まだ、2人当選はありえる。過去、舛添票で3議員をサルベージで掬い上げたこともある。舛添さんの政治資金法違反は、3年前からわかっていたことです。自民・公明は、それを突然、都議会で持ち出して辞任に追い込んだ。なぜ、舛添さん(辞任)と甘利さん(不起訴)のダブルスタンダードが通用するのでしょうか」

岩上「今、議員会館で開かれているさまざまな市民団体の集会。その3分の1で窓口役になっているのが、福島瑞穂議員です。そういう意味でも、とても重要な人。TPPや安全保障についての国会質疑など、幅広く活躍している。落選は考えられません」

平山「生活の党と山本太郎となかまたちは、元職の青木愛氏、姫井由美子氏、新人の北出みか氏、末次精一氏、日吉雄太氏の5名です」

宮崎「青木さんは、2014年の衆議院選挙東京12区で、3位で落選しました。1位が公明党の太田昭宏さん、2位が共産党の池内さおりさんでした。今回の参院選で青木さんが当選すれば、衆議院の東京12区で、共産党での野党統一候補が進展するきっかけになります。また、参議院比例区は、現職が衆議院に出馬した際、繰り上げ当選がある。しかし、1議席がなければ、それもかなわない。ですから、1議席の当選は重要です。

 正直、生活の党の予想獲得議席は0から1です。青木さんは衆議院3期、参議院1期を務め、2007年に30万票を取っています。しかも、青木さんは選挙活動に慣れていて、とてもこなれています。北出さんは北海道出身で、オーラがありますね」

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平山「国民怒りの党では、宝田明さんが立候補を辞退しました。元職の円より子氏と、新人の小林節氏、杉本志乃氏、荒木大樹氏、大西さちえ氏、立川光昭氏、平野道子氏、渡邉良弘氏、吉田晶子氏、橋本勉氏の10名です」

岩上「大西さちえさんは、注目です。徳島選挙区の野党統一候補である大西聡氏の夫人で、ママの会@徳島の方です。でも、両者は(選挙戦では)無関係を強調しています。渡邉良弘さんは、孫崎享さんが委員長だった去年の『国際大使館フレンドリーラン』でIWJチームの一員になり、われわれと一緒に走った方です。我々にとっても『まさか』の出馬です」

宮崎「荒木さんは、栃木選挙区でみんなの党から2回、立候補しています。大西さちえさんの選挙戦術は、あまりよくないですね。小林節先生も、東京選挙区から出ないので、選挙運動が比例代表を巡って拡散しないか、懸念しています。しかし、投票率が上がって1議席でも取れれば、ミニ政党の成功です。2007年、故黒川紀章氏が共生新党で参議院選挙に挑み、50万票集めたのですが当選できませんでした。違う政党だったら、個人名で50万票取れば参議院議員になれます。

 しかし、あまりむずかしく考えず、とにかく改憲勢力を絶対に勝たせないことです。もし、彼らが3分の2議席を取ったら、取り返しがつかないことになる。その後も『アリバイ選挙』はあるでしょうが、本来の意味での選挙は、次からなくなります」

岩上「自分の票が、死に票になることを恐れる有権者は多い。しかし、この参院選の結果次第では、非常に恐ろしい状況になることを理解してほしいと思います。長時間、どうもありがとうございました」

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