「今回の参議院選挙は、アベノミクスや消費税の是非を問うものでも、ましてや、候補者の人気投票でもない。争点は、戦争法廃止と、緊急事態条項による改憲をストップすること。これしかない。(視聴者の方々は)ご自身の選挙区の候補者を、よく考えてほしい」──。ゲストに招いた元日経新聞政治部記者の宮崎信行(みやざき のぶゆき)氏は、こう繰り返した。
「9年前の郵政解散総選挙、私の予想は的中した」と語る、自称・選挙オタクの宮崎氏は、2016年6月6日、IWJの「2016年参議院選挙特番」に出演し、この夏の参院選について、「選挙後の参議院の改憲勢力は156議席。自民党48議席、公明党15、民進党35、共産党8、生活1、社民0~2、おおさか維新3、日本を元気にする会0、新党改革0、日本のこころを大切にする党0、野党共闘での無所属を含む、その他4」との予想を披露。改憲発議に必要な3分の2議席に至らずとも、予断は許されないと懸念した。
選挙特番の第1弾は、IWJ代表の岩上安身の司会で、IWJ記者(原佑介、城石エマ、平山茂樹)がプレゼンターとなり、北海道、東北5県、関東6県の各選挙区の予定候補者について解説。それに対して、宮崎信行氏と岩上安身がコメントする形で進行した。
まず、岩上安身は、「今回の改選で、自民、公明、おおさか維新の会、日本のこころを大切する党などの、改憲勢力78人が当選すれば、参議院全体で3分の2(162議席)を獲得してしまう。改憲発議が可能になる。逆に言うと、野党共闘で非改選議席を含めて85議席以上を取れれば、改憲発議を阻止できるのだ」と述べた。宮崎氏も強く同意し、再三にわたって戦争法と緊急事態条項の危険を訴え、改憲派の議席確保に警鐘を鳴らした。そして、客観的な視点で選挙情勢を解説していった。
まず、北海道選挙区について、「組織票が結果を大きく左右するが、新党大地の票の行方が不透明だ」とし、民進党の2人目の立候補予定者、鉢呂吉雄氏は微妙であり、やや自民党有利と分析した。東北は、「青森、山形は激戦。岩手、福島、宮城は野党有利」と述べ、「福島選挙区では、現職の岩城法務大臣は危ない」と指摘した。
また、千葉選挙区では猪口邦子氏の落選を示唆。東京選挙区では議席が1つ増えて6議席となるが、「最後の1人は、知名度だけで当選できるだろう」と見立てた。定数4の神奈川選挙区も、最後の1議席を自民と民進とで競う、と予想した。
※この企画は、6月6日時点までの予定候補者をもとに分析。その後の変化で、情報などに齟齬が生じている場合があることは予めご了承ください。
- 日時 2016年6月6日(月) 14:30~
- 場所 IWJ事務所(東京都港区)
改憲勢力78人当選で改憲発議のできる162議席に! 争点は緊急事態条項での改憲! アベノミクスや増税延期は目くらまし!
岩上安身(以下、岩上)「『運命の分かれ道・2016年夏の参院選を徹底予想分析スペシャル!』。ゲストは国会ウォッチャーの宮崎信行氏。プレゼンターはIWJ記者3名でお送りします。 与党は参院選挙の争点を、アベノミクスや増税延期の真意を問うなどと言うが、これは目くらましです。本丸は、憲法改正。緊急事態条項です! 改憲勢力による3分の2議席獲得の野望を、阻止できるでしょうか。 衆議院でも、参議院でも、3分の2議席があれば憲法改正の発議ができます。そして、改憲は1条項ずつしかできません。憲法全文の総取っ替えはできない。発議の次に国民投票をして、過半数の賛成で憲法改正となります。その過半数とは、全有権者数の半分ではなく、投票者数の過半数なのです。 マスメディアは参院選関連の報道をわざと減らし、改憲が争点だということを隠しています。IWJは徹底的に、緊急事態条項での改憲の阻止にこだわります」宮崎信行氏(以下、宮崎・敬称略)「IWJは初めてです。よろしくお願いします。私は、もう30年くらい選挙オタクなのです。9年前(衆議院の郵政解散総選挙)は完全に予想を当てました。ただ、今回は注目選挙区を問われても、『全選挙区』としか答えられません」岩上「今回、改選議席数は121議席(参議院定数242議席)。3分の2は162議席です。視聴者の皆さんは、参議院の改憲勢力を頭に入れておいてください。現有議席のうち、改選議席では計84が改憲勢力。自民・公明76、おおさか維新5、日本のこころ3議席です。 今回の選挙で、自民、公明、おおさか維新、日本のこころを大切する党などの改憲勢力が78人当選すれば、改憲発議のできる162議席を獲得します。逆に言うと、野党共闘によって、非改選議席を含めて85議席以上あれば、改憲発議を阻止できる。ずばり、宮崎さんの予想をお聞きます」宮崎「1ヵ月以上前の予想ですが、改憲勢力は156議席を獲得する、と見ました。3分の2には6議席足りないが、状況はあっという間に変わります。9年前の参院選では、4つの1人区選挙区で自民党優勢だったのが、投票1週間前に民主党と無所属に替わってしまいました。参議院選挙は人気投票の側面があるので、遊びの票があるんです。 安保法制を成立させた安倍総理、それに加担したおおさか維新、元気などの議員たちは非改選で残ります。その人たちが改憲発議をするのは恐ろしい。彼らは『議論をする』と言うが、通常国会中、衆議院の憲法審査会は一度も開かれていません」岩上「先に3分の2議席のハンコ(承認)をもらってから、緊急事態条項での改憲発議を後出しにする。白紙委任と同じです。そして、憲法はいったん変わると不可逆で、後戻りができません」宮崎「自民党改憲草案の13条には、公の秩序のためなら、何でも権利や自由を制限できるとあり、怖い。なぜなら、13条は包括的幸福追求権なので、これを制限すると他の憲法の条項全部を制限できるのです」
注
憲法13条:すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。自民党改憲草案13条:(人としての尊重等)全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。
岩上「公の秩序を決めるのは、行政権力です。緊急事態条項では、行政権、立法権、司法権、予算措置の権限を首相に集中させ、財産没収、収用もできる。強制的に服従を余儀なくされる。これは日本が近代立憲民主主義国家の隊列から、自ら落伍することです。もはや、先進国扱いをされなくなります。 自民党改憲草案は、各条文の1項では良いことが書いてあっても、2項以降で、『すべて、お上の言うことには従え』という仏壇返しの仕組みになっている。しかし、国会では、それに至る議論もさせません」
宮崎氏の予想は改憲勢力156議席!? 自公63、民進35、共産8、社民0の可能性も!
宮崎「私の予想は、自民党の単独過半数はないが、自公では過半数は確実、というもの。今まで、自民党が参議院で過半数を取ったことはありません。公明党の天下は、まだ2~3年は続きますね。今回は、衆参のねじれも作れません。なぜかというと、民進党の非改選が17しかないから。安倍総理が6月1日の記者会見で、『改選議席の過半数が目標だ』と言いました。しかし、安倍さんの目標は(自公改選59議席で61議席確保)2議席を足せばいいだけなのです」岩上「安倍総理は、わざと3分の2議席が目立たないように、控えめに言っているのではないでしょうか。改憲発議が騒がれないよう、浮動票を眠らせておきたい。表立って『162議席』とは騒がれたくない。SEALDsの奥田愛基氏が、6.5全国総がかり大行動でいいことを言いました。 『3年前の参議院選挙の時、(自民党は)アベノミクス3本の矢を掲げた。しかし、選挙が終わった途端に、国会で、特定秘密保護法を一気にやった。1年半前の総選挙では、消費増税の先送りについて信を問う、とした。ところが、選挙が終わったら、安保法制をやった』と。今回、再びアベノミクスだと言い、取り返しのつかない憲法改正をやるつもり。奥田氏は、『なぜ、マスコミは書かないのか!』と訴えていました」
岩上「今回の選挙の争点は、緊急事態条項です。それを、自民党もマスコミも隠しています。視聴者の皆様も、その点に気づいてほしいと願います。これで、第一弾を終わります。今日はどうもありがとうございました」