世界の「緊急事態条項」を検証!自民党改憲草案の「異常性」に迫る~岩上安身によるインタビュー 第612回 ゲスト 早稲田大学法学学術院教授 水島朝穂氏 2016.2.13

記事公開日:2016.2.13取材地: テキスト動画独自
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(文・花山格章)

◆ヤバすぎる緊急事態条項特集はこちら!
※2019年5月20日、テキストを追加しました。

「安倍総理に、改憲を語る資格はない!」

 緊急事態条項を創設する憲法改正について、安倍晋三総理の周辺から「お試し改憲」という言葉が出ていることについて、早稲田大学法学学術院の水島朝穂教授は、「改憲とは、非常に重い『憲法という縛り』を解くもの。『お試し』という言葉など、そもそも成り立たない」と厳しく批判した。

▲水島朝穂氏(2016年2月13日、IWJ撮影)

 2016年2月13日(土)、東京都港区のIWJ事務所で、岩上安身のインタビューに応じた水島教授は、安倍政権の改憲の狙いが緊急事態条項にあることを見すえて、「立憲主義の根底を覆す仕組みが緊急事態条項。『お試し』という言い方をすること自体、すでに憲法をなめているし、蔑視している」と憤りを示し、このように続けた。

 「もっともふざけているのは、緊急事態が限定されていないこと。『内乱等』と書いてあるが、『など』を入れれば何でも入るし、判断する人間が決められる。何かをやりたい側が、『今、非常事態だ』と自分で判断して、自分で実施できることになる」

 憲法は権力を縛るものなので、国民にとっては「原則自由で、例外不自由」、国家権力にとっては「原則不自由で、例外が自由」なのだ、と水島教授。その視点で見ると、緊急事態条項とは権力者が国民に向かって「私に自由をください」と言うことであり、それゆえに危険なのだという。

 「緊急事態条項ができたら独裁者が生まれる、なんて単純なことではない。そういうものの仕組みができた時、私たちの身体が蝕まれていくのだ。民主主義国家が、知らないうちに静かに死んでいく。この国は今、そのプロセスに確実に入っている」

 水島教授は、緊急事態についての議論は必要だが、立憲主義という国の仕組みの根底に関わる議論は、冷静な時にしっかりとやらなければいけないと主張する。

 「今の安倍さんたちのような荒っぽい議論には乗らないこと。国民として、この議論はすべきではない。緊急事態法を『お試しだ』と言う改憲議論には、国民の側から『ナンセンスだ』と言って、議論させない姿勢が大事だ」と指摘し、最後にこう締めくくった。

 「緊急事態条項は災害とセットにした瞬間、安保法案と違って、みんな無関心になる。この両方を、政府は非常にうまく突いてきている。歴史、現状、他国との比較。この3つを頭に入れながら見ることです」

記事目次

■ハイライト

  • 日時 2016年2月13日(土)13:30〜
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

あれはNHK島田解説委員の罠だった!? 「維新の党の(安保法)修正案に触れないで」と謎の誘導をされた『日曜討論』!

 この日のインタビューのテーマは、自民党が憲法改正で創設を目指している緊急事態条項の危険性について。岩上安身は、「緊急事態条項は、昨年成立した安保法制と密接に関係している」と前置きし、2015年7月12日にIWJで行った水島教授のインタビューに話を向けた。当時、国会は安全保障関連法案の審議が白熱しており、政府与党は会期を延長したものの、法案へのさまざまな懸念を払拭できていなかった。

 水島教授は、「7月12日、私は(IWJのインタビュー前に)NHK『日曜討論』に出演した。打合せの時、司会をするNHK解説委員(島田敏男氏)から『維新の党の(安保法)修正案については、触れないでくれ』と言われた。発言内容に介入されてムッとしたが、結局、維新には触れずに終わった。帰り際、送迎の車に乗った時に、彼(島田氏)が顔をのぞかせて、『維新の党の修正案は、審議促進上、とても良いものですよ』と言った。その意味がわからないまま、私はIWJに来たのです」と振り返る。

 維新の党は同年7月8日、平和安全整備法案・国際平和協力支援法案の2法案を国会に提出し、さらに、政府案から抜け落ちている尖閣諸島など離島防衛のための領域警備法案を、維新・民主共同で提出していた。7月12日のインタビューで水島教授は、「安倍総理は戦後最長の会期延長を打ち出した。その段階での維新の対案提出は、それまでの『廃案にすべき』という流れを審議継続に向かわせた。安倍政権にとってできすぎのタイミングだ」と語っている。

 「その後、衆議院で強行採決が行われ、安倍総理は『維新の党の修正案が出ているから、単独採決ではない』という形をとった。これが、そのこと(維新の修正案に言及するな、という件)だったと気づいたんです。さらに、安倍総理と会食するマスコミ関係者の中に島田氏がいることを知って、『審議促進上、良い』という発言の意味がわかって、怒りが沸いてきた」

 岩上安身が、「島田さんは強行採決することまでわかっていて(水島教授への誘導を)やったのか?」と尋ねると、水島教授は、「わかりませんが、あそこで私が維新の党を批判したら、違憲か合憲かという議論がNHKの『日曜討論』で出るじゃないですか。そうすると、4日後の強行採決(7月15日・衆院特別委員会、7月16日・衆院本会議)は雰囲気が悪い。だから、向こうの罠に嵌ったのかもしれない」と表情を曇らせた。

■ハイライト2

緊急事態条項を「お試し」でやろうという考えは憲法をなめている。安倍さんに改憲をやる資格はない!

 水島教授は、「安倍さんには憲法改正をやる資格はない」と断言し、その理由を3つ挙げた。

 「1つ目は、集団的自衛権の行使について、憲法違反だと猛烈に反対される中で、閣議決定によって政府の解釈を変えてしまったこと。あれは憲法を壊した。私たちは破壊の壊の『壊憲』だと言ってきた。憲法を壊した人間に、改正をする資格があるでしょうか?

 2つ目は、緊急事態条項を『お試しでやろう』という姿勢。そもそも、『お試し改憲』という言葉は成り立たない。改憲とは、ものすごく重い『憲法という縛り』を解くもの。『お試し』するような代物ではない。立憲主義の根底を覆す仕組みが緊急事態条項なので、『お試し』ではなく(改憲の)本体になる。それを『お試し』という言い方をすること自体、すでに憲法をなめているし、蔑視している証拠だ。こういう人に(改憲を)語る資格はない」

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