「大丈夫だろうとは思っていたけれども、やはり判決を聞いてほっとしました」――。化粧品や健康食品の製造販売大手、株式会社DHC(本社・東京都港区)と吉田嘉明・同社代表取締役会長が澤藤統一郎弁護士を名誉毀損で訴えた訴訟の控訴審判決が2016年1月28日、東京高等裁判所(柴田寛之裁判長)で行われ、昨年9月の一審に続き、二審でもDHC側の請求は棄却された。
判決後、集まった支援者らを前に、澤藤弁護士は安堵の表情を浮かべた。
裁判は、吉田会長がみんなの党の渡辺喜美代表(当時)に選挙資金8億円を用立てていたことを週刊新潮(2014年4月3日発売号)の手記で明らかにしたため、澤藤弁護士が「政治とカネ」の問題としてブログで批判したところ、DHCと吉田会長が名誉毀損で訴えた。
請求額は2000万円と高額だったことから、澤藤弁護士はブログで「DHCスラップ訴訟」「口封じのための濫訴」などの批判を展開した。これに対して、DHC側からの請求額は6000万円に吊り上げられた。
昨年9月2日、一審判決でDHC側は敗訴したが、同15日に控訴していた。
- 日時 2016年1月28日(木) 17:00~
- 場所 司法記者クラブ(東京都千代田区)
「訴えられた時は震えるほどの怒りを感じた」「彼らにとって印紙代はなんでもない」
澤藤弁護士のもとには、135人の弁護士が名前を連ねる大弁護団が結成された。この日の法廷でも、澤藤弁護士の背後に15人の弁護士がずらりと並び、判決言い渡しを見守った。傍聴席には支援者らも詰めかけていた。
「本件控訴をいずれも棄却する。控訴費用は控訴人らの負担とする」
柴田裁判長が判決を言い渡すと、支援者らが安堵の息を漏らすのが聞こえた。一方、原告席には誰もいなかった。
法廷後、弁護団ら支援者に囲まれた澤藤弁護士は、「訴えられた時は震えるほどの怒りを感じました。今日は大丈夫だろうと思っていたけれども、やはりとても嬉しい。皆さんにはお世話になりました。ありがとうございました」とお礼の言葉を述べた。
妻、政子さんも「たくさんの仲間の皆さん、応援してくださる皆さんに支えられてやってくることができました」と喜びと感謝を語った。
「本当によかった」「おめでとうございます」と弁護団や支援者らも喜びに包まれたが、「14日間の控訴申し立て期間が終わるまでは、まだ終わっていない」と指摘する声が上がった。澤藤弁護士も「(DHC側は)規定方針として上告するだろう。彼らにとって印紙代は何でもない」と、厳しい表情を見せた。
「仮に私が負けていれば、スラップが横行し、言論の自由と民主主義が危機にさらされていた」
二審判決後、澤藤弁護士らは司法記者クラブ(東京・霞が関)で記者会見を行った。
澤藤弁護士は、「私の批判は典型的な政治的言論」として、「仮に私が負けていれば、スラップというものが世の中に横行する。もしそうなったら、本当に言論の自由というものは危殆(きたい)に瀕する、民主主義が危うい事態になる。そういう意味でも、今日の判決はとても意義のあるもの」と、判決を振り返った。
また、ブログでの批判に対して2000万円を請求され、6000万円に引き上げられた経験は、「言論をする者として、萎縮せざるを得ないということを実感」したと話し、「今日の判決で、個人的にも、憲法21条を大切だと思う立場からも、ほっとしています」と心情を語った。
吉田会長から8億円を借りた渡辺喜美・元みんなの党代表を政治資金規正法違反の容疑で刑事告発した「政治資金オンブズマン」共同代表の阪口徳雄弁護士は、「政治とカネの問題で、もらう側の政治家はマスコミからも広く批判されるが、配る側はあまり批判されない。私人であっても、配った以上は公の場に出たわけだから、政治資金の透明性、配る目的、動機、その結果について、広く国民に批判されなければならない」と指摘した。
日弁連も言論の自主規制か!? 日弁連会長選の候補者が政治家に献金している事実を書いたら、選挙管理委員会からブログ記事の削除要請!?
人気ブロガーで、今回の訴訟について自身のブログでも応援している徳岡宏一朗弁護士は、「今日、澤藤先生が2度続けて完全勝訴され、ブロガーとして本当に胸をなでおろした」と話した。
この問題について、たまたま記事にしなかったという徳岡弁護士は、「もし書いていたら、私も被告にされ、数千万円から億単位の請求を受けたかもしれない。書かなくてよかったと、正直、胸をなでおろした。澤藤先生の裁判をブログで応援するにも、書いた途端に裁判を起こされるのではないかと、頭をよぎった」
「情報の受け手だった一般市民が、フェイスブックやSNSやブログによって、情報や意見を表明できるようになった。それが今回のようなスラップ訴訟が起こされると、憲法学で言う『表現の自由の萎縮的効果』、つまり必要以上に、規制される以上に萎縮してしまうという効果が生じる」と話した。
また、「今、日弁連の会長選挙が行われているが、候補者の1人が自民党政調会長の稲田朋美議員に献金していたことを(ブログに)書いたら、日弁連の選挙管理委員会からその記事は削除せよというお達しがきた。今、本当にブログを通じて一国民が表現していくということがすごく危機にさらされていると感じる」と、言論監視の風潮の強まりに危機感を示した。
「規制緩和でないがしろにされる消費者を守るための、言論の自由が必要」
元祖スラップ訴訟と云えば宗教団体の創価学会で、創価学会が所有する政党が公明党だ。所有と云う表現は信者なら難なく理解できるだろう。一方、政治家では安倍晋三や森善朗が有名だ。今回は、政治的な影響力を失ったみんなの党の渡辺喜美に対する献金だからと云うわけではない公正な判断だと期待したい。政治家の安倍晋三や森善朗が起こした裁判でも同じように司法判断をするべきだ。
安倍内閣になってから人事権の行使で露骨に行政に介入した事件がある。行政だけではなく放送や報道には既に介入しているが、内閣は消費者庁の人事に介入しおかしな時期に幹部職員の更迭を行った。更迭した理由はマスコミである読売新聞が菅官房長官に依頼したからだ。以来したと云うのを読売新聞の社長自身が実質的に公表しており、両者はイカレたズブズブの関係にある。名実共に政府広報新聞だと堂々と世間に知らしめたのだ。
事の発端は訪問販売を規制する法律を制定するために行った公開ヒアリングの場で、読売新聞の社長が違法な営業をしていることを自らバラしてしまい失笑をかったからだ。自らの過ちで失笑を買ったことを逆恨みして消費者庁に内容証明の抗議書を送付、その事実を菅官房長官に手紙で伝えたと云うのが更迭にいたる経緯だ。手紙になんと書いてあるかは不明だが、読売新聞の社長と首相との会食で依頼した結果が消費者庁の更迭人事だろう。物的な証拠はなくても、“周辺事態”が物語っているのである。
消費者庁の更迭人事と徳島移転で、こんごとも新聞を始めとした悪徳商法が跋扈することとなった。甘利がヤクザの口利きをした事件といい、安倍内閣は一部の利益で国民の利益を損ねる最低の内閣だ。