「原発は、化石。いつまでやっているんだ」――上関原発スラップ訴訟、アーサー・ビナード氏らが「海が殺される前に」と建設反対、訴訟の不当性を訴え 2015.7.1

記事公開日:2015.7.16取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・花山)

※7月16日テキストを追加しました!

 「原発は、化石燃料より化石。中国電力は新しい自然エネルギーへと切り替えるべきだ」──。詩人のアーサー・ビナード氏は、上関原発スラップ訴訟の抗議集会の中で、電力会社は、いつまで古い原発の技術にしがみついているのかと批判し、「上関原発の建設反対運動を、海が殺される前に成功させたい」と訴えた。

 2015年7月1日、山口市の山口地方裁判所で、上関原発計画における損害賠償請求訴訟の公判が行われた。この裁判は「上関原発スラップ訴訟」と呼ばれている。2009年11月、上関原発の建設のため、中国電力による護岸工事などが強行された際、海上で抗議を行った市民4人が工事妨害をしたとして、中国電力から4800万円の損害賠償を求める訴訟を起こされたものだ。

 これは、大企業などが個人に対して高額な賠償金を請求し、裁判に引き込むことで時間や労力、精神面への打撃を与える、いやがらせが目的のスラップ(SLAPP)訴訟だとして、市民側は徹底抗戦の構えを続けている。この日は、被告の岡田和樹氏と橋本久雄氏への尋問が行われた。また、これに合わせて、山口県庁および山口地裁前では支援者による抗議行動が行われ、公判終了後には裁判傍聴者や弁護団による報告集会が開かれた。

 裁判報告で島田広弁護士は、「本人尋問の内容が良かったことから、裁判所の考え方が変わってきている。まだまだ裁判は続く。これからのがんばりが重要」と語った。また、浅野史生弁護士は、「岡田さんの尋問で、危険な作業を行っていたのはこちらではなく、中電であることを裁判官に理解してもらえた」と述べ、裁判に手応えを感じていることを報告した。

  • 抗議行動
    • 日時 2015年7月1日(水) 11:30~
    • 場所 山口県庁前(山口市)
  • 報告集会
    • 日時 2015年7月1日(水) 16:30~
    • 場所 山口地方裁判所前(山口市)

「上関スラップ訴訟」は不当である

 裁判前の抗議行動の場で、被告の岡田氏は、「今日は、山口地裁で中国電力によるスラップ訴訟の裁判があり、私も本人尋問を受けることになっている。この裁判は、中国電力とその筆頭株主である山口県から起こされて、おかしな状況が続いており、不当な裁判であることを伝えたい」と語った。

 山口県庁前で抗議ができるのは、祝島の人たちが30年近く前からこの場所で反対の声を上げてきたおかげだとした岡田氏は、「それで、僕たち若い世代も声を上げることができている。祝島の人たちをはじめ、これまで上関原発に反対してきた方たちへ感謝するとともに、発言を続けてきてくれた祝島の人たちの行動に、大きな正当性を感じている」と話した。

僕たちが戦えるのは、祝島の人々の30年の戦いがあるから

 次に、この裁判の応援団長を自認するアーサー・ビナード氏が、「上関は海が息づいていて、生物の多様性に富み、世界を見渡してもどこにもない素晴らしい海だ。その海を生かして、引き継いで、次の世代に手渡そうとするこの運動はとても恵まれている」と話し、次のように続けた。

 「福島の浜通りでは厳しい状況の中で、ある意味、絶望を抱えながら戦わなければいけない。福島と上関では同じような勢力によって、海が殺されようとしているが、僕たちは山口にいて、山口の豊かさを実感しながら戦える。このことは本当に恵まれている。恵まれた戦いができるのは、祝島の人々が30年も命がけで戦ってきたからだ」

 そして、前日にコメンテーターとして出演したRCC中国放送の番組「イマなまっ!」で、家庭の消費電力調査に関して、「年寄りは昔の家電製品を使うから電気代が高くなる。消費電力の少ない新製品に買い換えよう」というトピックがあったことを紹介して、こう語った。

 「僕はそれを聞いて、『消費者に節電を勧めるのではなく、むしろ発電している側が古い技術にしがみつかず、環境負担の少ない、新しい自然エネルギーに早く切り替えろ。原発をいつまでやっているんだ』と言った。原発は、化石燃料よりも化石。それが明確になっているわけだから、僕らの戦いは必ず成功する。でも、海が殺される前に成功させたい」

多くの人が支援し、裁判に押しかけることが大事

 公判終了後、傍聴した人たちから公判の様子が報告された。

(…会員ページにつづく)

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