厚労省は、公的年金資金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による株式への直接投資の解禁について、検討を始めた。これを受けて、民主党の山井和則・衆議院議員は2015年12月10日、民主党による厚生労働省に対するヒアリングの場で懸念を示した。
「どこの株を買うか、極端な話、安倍総理の意向で決めることができる、ということか」。
山井議員がこう指摘するのは、同11月27日に官邸で開かれた経済財政諮問会議(議長・安倍総理)で、新浪剛史・サントリーホールディング株式会社社長が国の意向を企業に反映させる手段として、「GPIFを活用する」ことを提案していたからだ。
厚労省が全額出資するGPIFは、135兆円もの巨額の年金資金を抱える。現在は、信託銀行や投資顧問会社に運用を委託しているが、委託手数料の削減などのメリットがあるという理由で、厚労省は同12月8日に開かれた社会保障審議会年金部会において、直接運用の検討を開始した。
- 化血研(化学及血清療法研究所)の不正製造問題について、厚生労働省よりヒアリング
- 「一億総活躍」の緊急対策(厚生労働分野)について、内閣官房、厚生労働省よりヒアリング
- 日時 2015年12月10日(木) 10:00頃~
- 場所 参議院議員会館(東京都千代田区)
- 主催 民主党
巨額の年金資金を抱えるGPIFによる直接運用は、「公的資金による企業支配」になりかねない
経済財政諮問会議における新浪社長の発言は以下の通り(議事要旨より抜粋)。
「例えばGPIFが機関投資家に運用委託をしているので、機関投資家に対して働きかけ、投資先が必要以上にキャッシュを持っているのであれば、例えば3年以内に設備投資するのか賃上げするのか、どうするか決めさせる。決めないのであれば、配当で戻させ、別に成長するところにお金を回す。そうした具合にGPIFを活用するということも、大いに効果があるのではないか」。
一見、企業に多額の内部留保を吐き出させるための良案にも思える。しかし、この発言は「公的資金による企業支配」を意図したものではないか。
山井議員は新浪社長の発言について、「安倍総理の肝いりで経済財政諮問会議に入っているので、安倍総理の思いを語ったのではないか。まさにこの発言を受けて、おとといの年金部会で(直接運用を)可能にしようという議論に、シナリオ通りになった」と指摘した。
すでに大幅に株式投資比率を上げ、アベノミクスの「成果」を演出してきたGPIF
しかも、すでにGPIFは安倍政権の内閣支持率を下支えするために利用されている。GPIFの運用資産の構成割合は、これまで国債などの債券中心だったが、株式投資への移行が急速に進み、株価を押し上げているのだ。